りつこの読書と落語メモ

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わたしのなかのあなた

わたしのなかのあなた (Hayakawa Novels)

わたしのなかのあなた (Hayakawa Novels)

★★★★★

アナ・フィッツジェラルドは13歳。白血病を患う姉ケイトのドナーとなるべく、遺伝子操作によってデザイナー・ベイビーとして生まれてきた。それ以来彼女は、臍帯血の提供にはじまって、輸血や骨髄移植など姉の治療のためにさまざまな犠牲を強いられてきた。ケイトの病状は一進一退を繰り返し、両親はついに残された最後の手段である腎臓移植を決意する。だが、アナはこれを拒み、弁護士を雇い両親を相手取って訴訟を起こす。「もうこれ以上、姉の犠牲にはなりたくない。自分の体に対する権利は自分で守りたいの」と。突然の娘の反乱に戸惑う両親。しかし、アナの決意は変わらない。はたして前代未聞の裁判の行方は?そしてケイトとアナの姉妹の運命は…!?全米の紅涙を絞った感動と衝撃のベストセラー、ついに日本上陸。

夢中になって寝食忘れて読みふけり、読みながら心をゆさぶられまくってぼろぼろ涙が出て、読み終わって抜け殻のようになった。

好きか嫌いかといえば、好きな小説ではない。白血病、ドナー、デザイナー・ベイビー、そして親子で裁判という衝撃的な内容。これがノンフィクションなのであれば真摯に受け止められるのだが、これがフィクションとなると「なんだかなぁ…」という気持ちになってしまうのだ。
白血病のような病気について、当事者じゃない人間が書くのはどうなんだろうと思ってしまう。
そんなことを言ったら、小説とはなんなんだ?作家は自分が体験したことしか書いてはいけないのか?ということになってしまうけれど…。病気とかドナーとか出産とか不妊とか…そういう問題は想像(創造)で書いてはいけないんじゃないかと、自分のなかで思ってしまっているところがあって、そういう意味で、これを読んで「感動した」って簡単に言いたくないという気持ちになっている。

いやそもそも「感動した」ってなんなんだ。感動している場合じゃないだろう?!という気持ちになる。こういう小説を読むと。
それでもやっぱり読んで良かったとも思っている。なんか矛盾するけど。
本当に体験した人でないと理解することができない苦しみがあるのだと思うけれど、それでもこうやって小説で読んで、少しでも自分にこういうことが起きたら…と考えたり、胸が詰まって泣いたり、「感動」したりすることは、何も知らないよりはまだましなのだ、とも思うのだ。

以下、ネタバレなので、これから読もうと思っている人は読まないほうがよいです。














最初はアナの視線で読んでいたので、母サラが憎かった。姉のドナーにするために次の子を妊娠するなんて…やっぱりしてはいけないことだと思った。そんなふうにして生んではいけないと思った。アナが、自分はもし姉ケイトが白血病になっていなければ生まれていない人間だったのだと思っているのが、かわいそうでかわいそうでならなかった。自然に反することをするのは良くないのだ、と思った。
しかしサラの章を読むと、サラは母親としてとにかく自分が今できる限りのことをしようと思っただけなのだ、と思った。彼女はとても勇敢だったのだ、と。自分が同じ立場に立ったとき、同じことをしただろうか?と考えると、やらなかったのではないかと思ったけれど、それはもしかすると自分に勇気が足りないからなのかもしれない、という気もしたのだ。

自分の気持ちに一番近かったのは、夫ブライアンかもしれない。ブライアンはいつも妻の行動をあたたかく見守り妻の味方であり続けていたけれど、アナが裁判を起こすとアナの味方になり、母サラとアナの防波堤になろうとする。そして自分は裁判の時はアナを擁護する弁論をすると、宣言する。しかし本当に裁判になったとき、彼は最終的には妻の味方になるのだ。彼の心の葛藤と、最終的に彼が出した結論…それは本当によくわかるし、彼がそうしてくれてよかった…と思う。夫婦はそうあるべきだと思う。

ああ…ここまで書いて、やはり私はきっとサラになるのかもしれない、と思う。なんでだろう。母親というのは、子については本能的に自分がどんな手段を使ってでも守るのだ!という、動物的な攻撃性を発揮するものなのだ、と思う。

母と父がそんな風にして立っている時、当事者である白血病の姉ケイトはいったいどんな気持ちなんだろう…。そしてドナーとして生まれたアナと、ドナーになれなかった兄ジェシーの気持ちは…。それを思うと本当にたまらない…。

裁判の場面でアナが証言するシーンは本当に涙が出た。
ああ、そうだったのか…。そうだったのか、と。

でもこのラストは納得がいかないなぁ…。なにもこういうラストにする必要はなかったんじゃないのかなぁ。このままの形で終わっても良かったんじゃないの?それまでに積み上げてきた何もかもを逆転させるようなこのラストにはちょっと私は違和感を感じてしまった。

それでもこの小説を読んでいろんなことを知ったし、いろんなことを考えた。この小説を読んでよかったと思っている。