りつこの読書と落語メモ

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黒後家蜘蛛の会1

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

★★★★★

このタイトルにこの地味な表紙(↑ここに出てるのは私が読んだのとは違う表紙。これはこれでどうかと…。)に、いかにも科学者のような作者の風貌(しかもキダタローにちょっと似て蝶←とてつもなく失礼)、知らなかったらまずは手に取らないだろう。
というより、私は学生の頃お金がなかったから古本屋でひたすら文庫本を買って読んでいた時期があって、その頃確かにこの本を見かけたこともあった気がするのだ。でも全く食指が動かなかったのだ。

なんで読んでみようかと思ったかといえば、この人のことを偏愛していると公言されている人のサイトを見たからなのだ。
ほーほー。そんなに熱く語るほど面白いんだ。魅力があるんだ。へー。これはぜひ読んでみなければ。

で、早速図書館で蔵書を検索してみれば、あるわあるわ…「アシモフ選集 数学編1 数の世界」「アイザック・アシモフの科学と発見の年表」「アシモフ博士の宇宙探検シリーズ」…科学者のようなあの風貌もまんざらでもなかったのだな。ものすごい多才な人なのだな。科学、数学のほかSFありミステリーあり。
これはきっと相当難解なのでは。私には理解できないのでは。心して読まなければ。と読んでみたら。

いやはやこれが面白い。読みやすい。この面白さはジーヴスに匹敵する。いや私はジーヴスよりこちらのほうがもっと好きだ。

黒後家蜘蛛の会〉の会員――化学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号専門家の六人、それに給仕一名は、毎月一回晩餐会を開いて四方山話に花を咲かせていた。が、いったん話がミステリじみてくると会はにわかに活況を呈し、会員各自が素人探偵ぶりを発揮する! 安楽椅子探偵の歴史に新しい一ページを書き加える連作推理譚。

ジーヴスと同じようにこの作品にはものすごく有能な執事、じゃなくてこちらは給仕が出てくる。その名もヘンリー。
執事や給仕の独特の慇懃無礼さというのは、こういうふうに面白がりだすとものすごく面白がれるのかもしれない。日本でいったらどういう職業があるだろう。普通に考えたら絶対「笑えない」存在だけど、見ようによったらものすごく面白く作れる…。神主さん…とか?うーん、ちょっと違うか。

ヘンリーの推理もおもしろいのだが、なによりおもしろいのはこの会のメンバーの会話なのだ。ボケと突っ込みが絶妙で、げらげら笑える面白さ。しかし決してやりすぎでなく、でも会話から浮かんでくる情景とかその人となりとかが実に魅力的で、もっとこのメンバーの会話を聞いていたい!もっともっと!という気持ちにさせてくれる。

かーっ。こんな面白い作品を今まで知らなかったとは!悔しい気持ちと、でもまだ私にはアシモクの未読作品が山積みなのだーというヨロコビと。
いやぁ見かけで判断しちゃいけません。というか、本を読んでからもう一度作者の写真を見直せば、ものすごーーくステキな人じゃないか。なにより目が優しいし、口元に浮かんだ笑顔が実にいい…。自身が付けた解説もものすごく味があってユーモアに満ちていてステキで、すっかり好きになってしまった。