りつこの読書と落語メモ

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夜中に犬に起こった奇妙な事件

夜中に犬に起こった奇妙な事件

夜中に犬に起こった奇妙な事件

★★★★★

数学や物理では天才なのに、他人とうまくつきあえない自閉症の少年クリストファー。ある夜、近所の飼い犬が殺された。彼は探偵となって犯人を捜しながら、事細かに記録を取る。やがて驚くべき事実が明らかになり…事件を通して成長していく少年の心を描いた、『アルジャーノンに花束を』をしのぐ感動作。

うううー。すごくすごーく良かったーー。自閉症の少年の物語ということで、「アルジャーノンに花束を」と比べられることが多いのだろうと思うけれど、私はこっちのほうが100倍好きだ。

これはクリストファーが書いた小説(という設定)だから最初から最後までクリストファーの視線から描かれている。ああ。この子から見たら世界はなんと生きづらいのだろう。
彼には比喩は通じない。彼には人の表情やニュアンスを読み取ることができない。知らない場所に行けばそこにある標識から看板から何から何までが「見えて」しまう。ラッキーな色。不吉な色。大きな音。予期せぬ出来事。世の中は危険に満ちている。うなり声をあげていないとそこに留まっていることができない。
そのかわり数学や物理は理解できる。数字のことを考えると落ち着く。秩序のあること、きちんとしていること、ルールのあることは好きだ。いやなことを言われたりされたりして相手を殴りたくなったら、数字を思い浮かべる。すると落ち着いてくる。

私はクリストファーとは全く逆のタイプだけれど(数字や論理ではなく、ニュアンス、感覚で物事を理解する)、これを読んでいるとまるで自分がクリストファーになったような感覚に陥り、彼の気持ちがとてもよくわかるのだ。

そしてこの本は挿絵がとてもすばらしい。楽しい。クリストファーが説明してくれた「可能性の図」は、「ああ、そうか。そういうことなのか!」ととてもわかりやすく思わずにこにこしてしまった。それ以外にも数式や地図や表やパズルや模様がたくさんある。クリストファーのノートを直接のぞかせてもらっているようで、うれしくなってくる。

人の気持ちがわからない。パニックになるとうなったり暴れたりおしっこをもらしたり…。この子を育てるのはほんとにどんなに大変なことなんだろうというのが、彼自身の語りからもよくわかる。そしてお父さん、お母さんも決して超人ではないのだ。弱いのだ。とっても。だけど、やっぱり愛しているのだ、クリストファーを。精一杯。

お父さんとクリストファーが動物園に行くシーンではこらえきれずに涙がぼろぼろ出てしまった。(外で読んでいたのでとても困った)

そして私はこんな風に心をゆさぶられたいから、本を読むのだなぁとしみじみ思った。いい本だった。ほんとに。