りつこの読書と落語メモ

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テロル

テロル (ハヤカワepiブック・プラネット)

テロル (ハヤカワepiブック・プラネット)

★★★★

イスラエルの都市テルアビブに瀟洒な家をかまえるアラブ系の医師アミーンは、最愛の妻シヘムとともに幸福な生活をおくっていた。だが、あの自爆テロがすべてを変えた。19名の犠牲者。その中にシヘムがいたのだ。呆然とするアミーンに刑事は衝撃的な言葉を吐く。「テロの首謀者はあなたの妻だ」妻は妊婦をよそおって爆弾を腹に抱え、自爆したという。なぜ彼女がそんなことを…。アミーンは真相を探るため、妻のルーツを探り、やがて想像を絶する真実に辿りつく。イスラムの夫婦の見えざる亀裂を描き出す、哀しみに満ちた愛の世界。テロが横行する極限下、イスラム社会の至高の愛と究極の絶望を描いた傑作。

最愛の妻がある日テロに巻き込まれて死ぬ。しかも妻は、子どもたちが集まって誕生パーティを開いていたハンバーガーショップで、爆弾をお腹に隠して自爆テロをはかったのだ。
妻と自分の間に隠し事はないと思っていたのに。妻も自分と同じように今の生活に幸せを感じていると思っていたのに。なぜ?いつから?自分は妻のサインを見逃していたのか?怒りと悲しみで自分を見失いそうになりながら、アミーンは心配してくれる友人の制止をふりきって、妻がどういう行動をとったのか一人で探り始める。ベツレヘムパレスチナ自治区で自分が捨ててきた親族に会い、危険な人物にも接触を試みる…。

物語はアミーンの一人称で語られるので、どうしてもアミーン側に立って読んでしまう。なぜ?なぜ?と。
テロの指導者が語った言葉。「夢を拒絶されると、死が最後の救いとなる。」
仲間が語った言葉。「これは自由のために支払われなくてはいけない代価なんだ」

どんな美しい言葉で語られても私にはやはり理解できない。「言わんとしていることはよくわかるのだが、私には受け入れがたい」というアミーンの気持ちと全く同じだ。理解できないというだけではなく、理解したくないのかもしれない。目をそむけていたいのかもしれない。いやでもそうなんだろうか…。それはもはや絶望ではなく狂気なのではないのだろうか。

夫婦の物語として見てもこれはつらい小説だなぁ…。自分がなりふりかまわず前だけ向いて頑張って築いてきたその全てを「「焦土の中でバーベキューをしている」と思われてしまうなんて…。シヘムの絶望がそれほど深かった?それより私は「思いがけない災難のように降りかかってきたり、寄生虫か何かのように心のなかにとりつく」というナビードの言葉のほうが納得できた。

これは消化するのに時間が必要な本だなぁ。
それに妻の気持ちを理解するには、もっともっとイスラムのことを知らないと無理なんだろうなぁとも…。できれば妻側の視点から描いた章もあればよかったのにと思うけれど、それはいろいろモンダイがあるんだろうなぁ。自分でもこう書きながらも、本当にその章が読みたいのか?と思う気持ちもあるし…。

ただこういう小説を読めてよかったと思うし、まずは興味を持つこと、知ることが一歩なのだと思う。この本、図書館で借りたんだけどもう今も予約が入っている。次にこの本を読んだ人がどんな感想を持ったのか知りたいな。人の感想を読んで、自分でもまた考えることができると思うから。