りつこの読書と落語メモ

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夜愁

夜愁〈上〉 (創元推理文庫)

夜愁〈上〉 (創元推理文庫)

夜愁〈下〉 (創元推理文庫)

夜愁〈下〉 (創元推理文庫)

★★★★

1944年、ロンドン。夜ごと空襲の恐怖にさらされながら、日々の暮らしに必死でしがみつく女たちと男たち。都会の廃墟で、深夜の路上で、そして刑務所の中で、彼らの運命はすれ違い、交錯する。第二次世界大戦を背景に、赤裸々に活写されるのは人間の生と業、そして時間の流れと過ぎゆく夜。大胆な手法を駆使して、人間という存在の謎に迫る、ウォーターズ渾身の傑作。解説=若島正

サラ・ウォーターズは出たら必ず読もうと思っている作家の一人だ。「半身」も「荊の城」も大好きな作品。特に「荊の城」を読んだ時の、「うわーーこれはまたものすごい作家が現れたぞーー!」という感動は今でも忘れられない。

期待の3作目だったんだけど、私は少し物足りなさを感じた。前作2作がものすごくすんばらしいエンターテイメント小説だったので、どうしても期待が大きくなってしまって、期待のわりに…ということになんだけど。
でももし読もうかどうしようか悩んでいる人がいたら、「読んでみなはれ」と薦めるけど。
でももし初めてサラウォーターズを読むのだったら、これじゃなくて前作2作を薦めるけど。

以下はネタバレになるので、読んでない人は見ない方がよいです。















前作2作も登場人物がレズビアンで、2作目でちょっと「あ、またか」という感じはあったんだけど、でも確かにその方がよりどろどろした感じがして面白いかなと思っていた。
でもこの作品はそれがメインのテーマになっていて、私にしたらその部分はちょこっとエッセンスを与えるぐらいにしてほしかったかなぁというのが正直な感想。

前作2作は、はらはらどきどき、次はいったいどうなるのか、うわーやられたー、そうきたか、どっかーん!わっはっは。(やられたうれしさに大笑い)そして、そんなめくるめくストーリーなんだけど、決して下品でなく上っ面じゃなくきちんと文学的である、そこがたまらなく好きだった。
この作品にはそういったどっかーん!はない。そのかわり時々目に焼きつくような強烈な「絵」を見せてくる。それは、真っ赤に燃える炎だったり、真っ赤に流れる血だったり、泥を払って出てくる美しい素肌だったり。特に後半は、「ああ、だからそうだったのか…」「そんな風にして始まったのか」と、結果がわかっているだけに余計に痛いし強烈な印象を受ける。ああ、こういうところはうまいなぁ…。おそらくストーリーを忘れても、見せられた「絵」は忘れない。記憶の希薄な私でも…。

そういう意味ではやっぱりすごい作品なのかもしれないなぁ、これも。