りつこの読書と落語メモ

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物しか書けなかった物書き

物しか書けなかった物書き(KAWADE MYSTERY)

物しか書けなかった物書き(KAWADE MYSTERY)

★★★★

「あなたに不利な証拠として」が読んでいて苦しい作品だったので、次はおバカな小説が読みたくなってこれ。

タイプしたものが物質化する怪現象に遭遇した三文作家の悲喜劇、帰宅途中でゾンビにヒッチハイクされた男の奇妙な運命。オフビート・ミステリの異色作家、本邦初の傑作集。

本を読む時タイミングってとても重要だ。ものすごく濃ゆい物語を求めている時にこれを読んだらおそらく物足りなく感じたかもしれない。まさにこういう小説を求めていた今だから、本当にどの短編もとても楽しめた。ナンセンスの嵐に癒された。物語自体は「癒し」というよりは、ブラックなものが多いんだけどね。

4人の妻が全員階段から落ちて変死を遂げ、お金持ちになって優雅に暮らす男。彼の5回目の結婚の結末は…。(「階段はこわい」)
自分の書いたものが物質化するという技を見に付けてしまった作家。最初に現れたのは「馬」。それから金になりそうなものを書いては物質化して売っているうちにお金持ちになってきて、妻がだんだん人が変わったようになり…。(「物しか書けなかった物書き」)
トゥーイ唯一のシリーズキャラクター(らしい)である「恐怖のジョーク男」モアマンがエキセントリックな行動で周りの人たち(主に警察)をコケにする連作。(「支払い期日が過ぎて」「家の中の馬」)いやこいつイライラさせるヤツだわー。身近にいたら絶対避けるなー。本で読んでいても、自分の精神状態によっては、いらっときて飛ばしてしまうかもしれない。


で、私が気に入ったのが「墓場から出て」と「予定変更」。特に「予定変更」が好き。こういう話、大好き。それもものすごく短い中にぎゅぎゅっと物語が凝縮されていて無駄がなくて緊張感があって。いい!

どれもナンセンスで不条理なショートストーリー。最近読書から遠ざかっているというような人がとっかかりに読むのにちょうどいいのでは。なんて言ったら作者に失礼か。