りつこの読書と落語メモ

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カレンの眠る日

カレンの眠る日 (新潮文庫)

カレンの眠る日 (新潮文庫)

★★★

死刑囚監房で執行の日を待つカレン。娼婦だった彼女は、暴力的な客から身を守るため次々と殺人を犯した。エイズに感染しているカレンを、若き女医フラニーが新しく担当することに。彼女はカレンの生い立ちを知り、死刑を回避すべく行動に出た。一方、カレンに最愛の夫を射殺されたシーリアは、複雑な心境に苦しんでいた。“その日”が近づくにつれ三人の運命は確実に絡み合い始めた。
(「BOOK」データベースより引用)

「当たり」が続いたので、ちょっと軽めのものをと思って…。って死刑囚、娼婦、エイズ、被害者…全然軽めじゃないか。文庫本だから重量だけは軽かったけど。

殺人を犯したカレン、カレンを担当する女医フラニー、カレンに夫を射殺された妻シーリア、3人の視点から描かれている。

不幸な星の下に生まれ虐げられ続けてきたカレンは、ただ一人彼女が愛した人間であるエレンに裏切られ、死刑囚となっている。ハイウェイで売春を繰り返し、暴力を振るわれると暴力で抵抗してきたカレンは、もう感情の全てが死んでしまっているような状態。身体はエイズに蝕まれ死につつあるが、死刑執行の日も近づいてきている。

女医フラニーは、患者の死に傷つき婚約者との関係もぎくしゃくして、自分の育ての親である叔父ジャックをも失う。ジャックに対する罪悪感から、彼の仕事を引き継いで刑務所の担当医師となる。フラニーはカレンと対照的に傷つきやすく全身が神経のようなピリピリした女性。

そして被害者の妻であるシーリアは美人で軽くて不幸とは縁がなさそうな女性なのだが、ある日突然夫を失ってしまう。カレンが殺してきた男たちと違ってシーリアの夫であるヘンリーは彼女の客だったわけではなく、たまたまその場に居合わせてしまっただけに過ぎない。それだけに、彼らの無念さ、哀れさが浮き立ってくる。

重いテーマであるにも関わらず、不思議と読後感が爽やかだ。最初は好きになれそうにないなぁと思っていたフラニーだが、読み進めるうちにその傷つきやすさや無防備さが愛おしくなってくる。カレンに共感することはできないけれど、それでも確かに一種の気高さすら感じることができる。そして最もかわいそうな立場にあるシーリアなのだが、どこかちょっとユーモラスだ。しかしちょっとした一文に彼女の深い喪失感や孤独を垣間見て、涙が出てくる…。

このラストに救いを感じることができるのかどうかというのは人によってそれぞれだと思うけれど、私は確かに救いがあったと感じた。