元気なぼくらの元気なおもちゃ
- 作者: ウィル・セルフ,安原和見
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/05/20
- メディア: 単行本
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図書館で予約して1ヶ月ぐらいでようやく回ってきた奇想コレクション。これで出ている分は全部読んだことになるのかな?
一話目の「リッツ・ホテルよりでっかいクラック」 は、クラック売人の話。クラックとは、コカインよりもっと強烈な麻薬。ヤク中によるヤク中のためのヤク中小説みたいな話で、「え?なんでこれが奇想コレクションに?奇想コレクションってSF風味じゃなくてもいいんだ?!」とびっくり。
しかもなんか中途半端なところで話が終わってしまったような感じで呆気にとられる。うーん…?
次の「虫の園」で、「ああ、よかった。変な話で。やっぱり奇想コレクションだ」とほっとする。変な話でほっとするというのもおかしな話だが、やはりこの本を手にしたときに期待する世界というのがあるのだ。
私が一番面白かったのが「愛情と共感」。
これは、「エモート」と呼ばれる自分の中にいるこどもの部分が巨人化して、おとなの心の支えとして存在している時代のお話。
これはなんか不思議な設定なんだけど、すごくわかるなぁーあり得るよなぁーと思いながら読んだ。妙にリアルだよなぁ…。
ラストの後味の悪さがなかなかよいよい。
で、実は中途半端に終わっていた最初の話の続きが一番最後に入っていたり、短編といいながらも微妙につながっているようなところも心憎い。
ヤク中の描写がハンパないと思ったら、作者も相当なヤク中らしい…。うーん…。でも一時期はやったエリートヤク中小説とは違って、きれいでもかっこよくもなくて、とことんいくとこまでいっちゃってるところがいい。あとがきによると、これでもウィルセルフの中では最も読みやすい物語を厳選してあるらしいから、他の作品はもっと強烈なのかな。でもちょっとのぞいてみたい。そんな気持ちにさせる作家だ。