りつこの読書と落語メモ

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冬の犬

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

ぜったいハズれなしのマクラウド
これも「灰色の輝ける贈り物」と同じく、カナダ東端の厳寒の島ケープ・ブレトンに暮らす人々の人生を描いた短編集。

自分たちにとっては太陽のような兄が帰ってくるクリスマス。驚くほど年をとって衰えてしまった父と兄を見つめる「私」の視線が温かい「すべてのものに季節がある」。

「誰でもみんな去ってゆくものなんだ」「でも、嘆くことはない。よいことを残してゆくんだからな」
死を予感させる父の言葉が優しくて寂しくて胸にしみる。

役に立たないでぶ犬と少年の苦い秘密を描いた「冬の犬」。あの秘密を父に打ち明けていたならこんな結末にはならなかったのに。少年の苦い思いがリアルに伝わってくる。

島とともに衰えていく女の一生を描いた「島」。
突飛に思える彼女の行動にとても共感できて、悲劇的なラストになぜか希望を感じてしまう。

目を疑ってしまうような過激なできごとが抑制のきいた文章でさらっと書いてあって、「え?」「どういう意味?」と読み返したり、素晴らしい一文に胸をかき乱されたり。
読書の喜び、醍醐味が彼の作品にはある。