りつこの読書と落語メモ

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誠実な詐欺師

トーベ・ヤンソン・コレクション 2 誠実な詐欺師 (トーベ・ヤンソンコレクション)

トーベ・ヤンソン・コレクション 2 誠実な詐欺師 (トーベ・ヤンソンコレクション)

★★★★

フィンランドの雪に埋もれた海辺の村にそびえ立つ「兎屋敷」。そこには両親の遺産と本の印税で裕福に暮らす老女アンナが一人で住んでいる。
そこに、弟マッツにボートを買ってやるという目的のために住み込んで「誠実な詐欺師」としてお金を得ようとするカトリ。

誠実であるがために愛想がなく近所の子供たちに「魔女」と呼ばれるカトリと、お金と地位に恵まれているがゆえに「お人好し」でいられるアンナ。

最初はお人好しのアンナを計算し尽されたやり方でカトリが騙すという関係だったのが、しだいにアンナの無垢が失われるとともに立場が逆転してきて‥。

やー、なんか変わった小説だった。って変わった小説ばかり探して読んでる私が言うのもなんだけど。さすがめくるめくムーミンの世界を描きだした作家だよ‥。
無駄をいっさい省いたような研ぎ澄まされた文章で、共感することが難しい女性二人の静かなる闘いが淡々と描かれている。

お人好しだったアンナがだんだん変わっていくのが空恐ろしいのだが、実は傷つけられているのはカトリの方なのかもしれなくて、読んでいるうちにだんだんどちらを信じていいのかわからなくなってくるのだ。

そんな中でカトリのことをさりげなく庇うリリィエベリと、最後まで無垢な存在である弟のマッツが、殺伐となりそうなこの物語をすんでのところで温かいものにしている。そして犬がなぁ‥。野生にかえっていく犬の後姿が目に浮かぶようで、なんとも象徴的というか絵画的というか‥。

読み終わってしばらくあっけにとられてしまうような作品。