アメリカの鳥たち
- 作者: ローリームーア
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/05
- メディア: 単行本
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もうミニマリストと呼ぶことはないのだろうか。
女性の短編作家をそんなふうに呼んで、一くくりにしていた時代があったがローリームーアもミニマリストの筆頭に挙げられていた作家だ。
これも短編集。ありきたりの日常生活に潜む落とし穴、普通の人々の孤独などがテーマになっている。
彼女の短編集「セルフヘルプ」を読んだのは随分前のことなのでもうよく覚えていないが、軽い文体でちょっとちくっと胸が痛くなるような短編が集まっていたような記憶がある。
この中で一番印象に残った作品は、「ここにはああいう人しかいない」だ。
ある日自分の赤ちゃんのおむつに出血を見つけた母親が病院に行くと、赤ちゃんが小児がんであることを告げられるという物語だ。
彼女の心中がとてもリアルで、読んでいて自分もそんな落とし穴にはまってしまうことがあったらどうしようと、胸が苦しくなってきた。
彼女が、今まで自分が喫煙していることで癌になるのではないかと心配していたことを苦々しく思うところや、自分の赤ちゃんにたいして抱いたよこしまな考え、もう少し昼寝してくれればいいのに、面倒臭いなあ、それがこのようなひどい悲劇をもたらしたのか、と悔やむところなど、自分が彼女になったような錯覚を覚えた。
解説を読んだら、これはローリー・ムーアの体験に基づいているというようなことが書いてあった。