りつこの読書と落語メモ

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母の眠り

母の眠り

母の眠り

★★★★★

これはよかった。やっぱり私はこういう小説が好きだと思った。

主人公のエレン・グールデンはハーバード大学を出て、ニューヨークで雑誌記者として働く才媛。毒舌と人を踏みつけても出世しようという鼻持ちならない女性と、周囲には思われている。
彼女の家は、大学教授で「外の顔」を大事にする父親と、家事にすべてをそそぐ優しい母親、そして2人の弟という、いわゆる普通の家庭だ。
しかしある日母が癌に侵されてしまう。 母の看病をすることを父に半ば強制的に命じられたエレンは、渋々家に帰るが。

エレンは父にそっくりで、母親のことは「自分とは違う人種」として切り捨てて生きてきた。
しかし、病に侵された母と向かい合ううちに、自分の知らなかった母の一面を知ることになる。

壮絶な末期癌との闘いの描写は読んでいて本当に胸が痛くなってくる。
自分がエレンと同じ立場になったらどうするか。
尊厳死」というのがこの小説の主題ともなっているが、作者ははっきりした答えは出していない。

原題は「One True Thing」。
真実はどこにあるのか、本当に大切なことはなんなのか。
読んだ後に、たくさんの余韻が残る作品だった。