りつこの読書と落語メモ

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ビッグフィッシュ―父と息子のものがたり

ビッグフィッシュ―父と息子のものがたり

ビッグフィッシュ―父と息子のものがたり

★★★★★
死を目前にした父親と息子の物語。

仕事の鬼で家にいることはめったになかった父。魅力的で誰もが引きつけられ、しかしそれでいて、内面にまで近づくことのできなかった父。そんな父が死を目前にして家に帰ってきて、彼のことを理解しようと、息子が彼のエピソードを語るという物語。

というと非常に深刻な小説みたいだが、決してそんなことはないのだ。
この父親のエピソードというのが、ものすごいほら話というか、ユーモラスでおかしいの。

例えば‥父が少年だったころ、湖で巨大な魚を釣ろうとしてボートが転覆して湖の中に投げ出される。湖の下には、昔洪水で流されてしまった村がそのまま残っていて、なつかしいおばさんたちが手をふっていた、、とか。

息子が父の内面を知ろうと、今まで聞くことができなかったこと、たとえば「神を信じているか」ということをたずねると、父親は使い古された小噺でけむにまこうとする。この小噺がまたおかしい。

とにかくこの父親が非常に魅力的。飄々としていて、あらゆることをジョークにして笑い飛ばしてしまう。ひょうきんパワーが強くて、本当のところが計り知れない。死に瀕していても、馬鹿なことばかり話しているものだから、みなあきれるやら感心するやら。

父の死のシミュレーションが「テイク1」「テイク2」と物語の間に挟まれていて、悲しい中にも笑ってしまうところがたくさんある。

死をテーマにしていながら、決して感傷的にならず、こんなにもユーモアに満ちていて、すばらしい作品。