りつこの読書と落語メモ

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パッチワーク・プラネット

パッチワーク・プラネット (文春文庫)

パッチワーク・プラネット (文春文庫)

★★★★★

バーナビーは便利屋につとめる冴えない男。自分が学生時代にちょっとした「ワル」だったころ犯した過ちからいまだ立ち直れずにいる。周囲からも信用されていないと感じ、なによりも自分自身で自分を信用することができずにいるのだ。

妻には去られ、家族からは敗北者扱い。そんな彼がある出会いをきっかけに、自分の人生を取り戻しはじめるというような話。

特別な何かが起こるわけではない。自分の境遇が劇的に変わるわけでもない。でも、自分もまんざらでもないと思えること、自分の仕事も捨てたもんじゃないぞと思えること、それがすばらしいことなんだと、この本を読んでしみじみと感じたなぁ。

バーナビーが妻に去られた後で、茫然自失となって水道を出したり止めたりするシーン。蛇口をひねれば水が出て閉めれば止まるのを何度も繰り返して、「なんて礼儀正しいんだろう」と思った、とある。

読んでいて胸がいっぱいになってしまって、バーナビーが愛しくてたまらなくなってしまった。もう、こういうところがたまらないよなあ、アン・タイラー

ものすごい感動の結末があるわけでもないし、出てくるのは欠点だらけの情けない奴なんだけど、ちょっとしたエピソードでその人が自分でも気付いていない人のよさを浮かびあがらせてしまう。読み終わった後に、人間っていいなあと思えるので大好き。