りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場10月中席昼の部

10/19(水)、「池袋演芸場10月中席昼の部」に行ってきた。
この日は逗子で小三治師匠の落語会があったので有休をとっていた。昼間はどこに行こうかなぁとかわら版を隈なく見て、歌丸師匠トリのこの寄席に。

・金の助「道灌」
・鷹治「強情灸」
・まねき猫 動物ものまね
・可風「やかん」
・枝太郎「いもりの黒焼」
北見伸&スティファニー マジック
・米福「代書屋」
・歌春「鮑のし」
~仲入り~
・正二郎 太神楽
・幸丸「田中角栄伝」
・扇鶴 音曲
歌丸火焔太鼓
 
まねき猫先生 動物ものまね
前にも見たことがある「枕草子」をモチーフにした動物ものまね。
素晴らしかった。
特に秋の虫の声は…ずっと聞いていたかった。小学生のころを思い出してじーん…。
 
可風師匠「やかん」
わーい、可風師匠!お披露目で見て以来とても気になってる噺家さん。
トリが歌丸師匠だったこともあって客席はお年寄り多かったんだけど、そのお年寄りも大爆笑させる、自分の師匠の「おじいちゃん」ネタのまくら。愛がこもってるから全然嫌な感じがしなくて、楽しい。
そんなまくらから「やかん」。魚の部分もたっぷりで、やかんのばかばかしさも際立つ。
可風師匠、もっとたっぷり見てみたいなぁ。
 
ところでこの高座の最中に後ろの席で「うるさいんだよ!」と怒声が。
どうも二人組のおばあさんたちのおしゃべりが気に障ったらしく男の人がそのおばあさんたちを怒鳴りつけてるのだ。
おばあさんも負けずに言い返したりして、一種異様な雰囲気に。
気持ちはわからなくはないけど(何か気付いたことや気になることがあると黙ってられないおばあさんたちって結構いる)高座中に怒鳴るのはほんとにやめてほしい。
高座の可風師匠も心配そうだったし、その後も後ろが気になって仕方がなかった。こわいなぁ。
 
枝太郎師匠「いもりの黒焼」
無理。
 
米福師匠「代書屋」
たっぷりの「代書屋」。楽しかった。ふつうにやってふつうに楽しい人が好きだ、私は。
 
幸丸師匠「田中角栄伝」
政治ネタは苦手なのでしんどかった…。
 
扇鶴先生 音曲
見るたびにどんどん好きになる。あの間と笑顔がたまらない。大好き。
 
歌丸師匠「火焔太鼓
今36キロしかないという歌丸師匠。
昨年の7月も今年の7月も腸閉塞で入院した。入院してる間は一切口から食べ物はとれず、水と飴ぐらいしか口にできず、ますます痩せてしまった。
医者に「なんで腸閉塞になったんでしょう」と聞くと、「痩せすぎなのと、胃下垂によるもの」とのこと。「もっと太ってください」。
もっと太れと言われても生まれてこの方太ったことなんかない。だけどどうにか頑張って食べるようにしていたんだけど、今年の7月にまた腸閉塞を起こして飴と水だけ…また痩せちゃった。
この中にも経験されてる方はいると思いますけど、入院して回復してくると病院っていうのは本当に暇だねー。テレビつけても面白くないし、一日が長いのなんの。
 
でも私気付いたことがあります。病院では冗談は言っちゃいけないね。
看護師さんが「何か足りないものはありますか」って聞いてきたから「そうだね。お金が足りないね」と答えたら、まさかそんな返事が返ってくるとは思ってなかった看護師さん、ゲラゲラ笑いが止まらない。
笑いながら採血するものだから痛いのなんのって。
もう看護師さんに冗談は言うまいと決めました。
 
ほんとに以前よりももっと痩せて頬もくぼんでいるんだけど、話し始めると声に張りがあるしユーモアたっぷり。
すごいなぁ…。気力もすごいけど、落語に対する情熱がまるで衰えてないということが素晴らしすぎる
そしてそんなまくらから「火焔太鼓」。
 
人が良くて商売下手な甚兵衛さんと1言えば100返してくるおかみさんの会話が楽しい。
通りかかったお殿様が太鼓を見せに来るように言ってると聞いて舞い上がる甚兵衛さんにおかみさんが「あんな汚い太鼓を持っていったらお前さんは松の木に縛り付けられるよ」。
それを聞いた甚兵衛さんが「俺、行くのやめようかな…」と気弱にいうのがなんともいえずかわいくておかしい。
お屋敷についてからもびくびくしていて、ふと横を向いて「松の木がある…」と首をすくめるのがおかしいやら気の毒やら。
 
そして殿が太鼓をお買い上げになるぞと伝える三太夫が、甚兵衛さんに向かって「手一杯にもうせ」「私がこう申すのもなんだが、商売人は儲けるときに儲けておかないと」というのがすごく好き。この噺で一番好きなところかも。この台詞に歌丸師匠の優しさがにじみ出ていてとてもチャーミング。
 
すごく陽気で楽しい「火焔太鼓」だった。素晴らしかった~。満足。

 

 

 

 

 

第三十五回 鎌倉はなし会 柳家小三治独演会

10/19(水)、逗子逗子文化プラザホール なぎさホールで行われた「第三十五回 鎌倉はなし会 柳家小三治独演会 」に行ってきた。

 

・〆治「元犬」
小三治「宗論」
~仲入り~
小三治「転宅」
 
小三治師匠「宗論」
前に突然やって師匠が自分でも驚いていたけど、もう二度と聞けないだろうと思っていたらまた聞けるとは。
これっていつも信者の人が聞いたら怒り出さないかしらってちょっとドキドキしちゃうんだけど、こういうことをネタにするところが落語の好きなところ。
好きな噺というわけじゃないけど、人間国宝になった小三治師匠がこういう噺をケロっとやってしまうところが好きなんだなー。
キリスト教にかぶれた若旦那をそれほどバカっぽく描かないところも好き。
軽くて楽しかった。
 
小三治師匠「転宅」
この季節になると思い出すらしく、フランク永井さんの思い出と「公園の手品師」。
〆治師匠が入門したころに師匠は自分の家でカラオケ教室をやっていた。
教室っていっても先生を呼ぶわけじゃない。そしてカラオケと言っても当時はまだカラオケは出ていなくて、歌の入ってないLPを買ってきてそれをテープに入れてメンバーに配り、それぞれが練習してきて師匠の家で一人ずつ歌を披露する、というもの。
その当時メンバーは11名ぐらいいたので、ということは同じ歌を11回聞かされるわけで、そんなの面白いのかい?と聞かれるけど、これがとっても面白い。
なぜならお互いに点数を付けあってその時の一等賞を決めるのでみんな真剣に練習してくる。
で、あとから小三治師匠がミックスしてそれぞれに歌のテープを渡す。
これは結構手間暇がかかっていた。

フランク永井さんとはよくゴルフに行った。
それまで私はゴルフはやってなかった。あんなのは金持ちのやる鼻持ちならないスポーツだと思っていて、ボーリング専門だった。
ボーリングはかなり真剣にやっていてプロボーラーになろうかしらと思ったこともあった。
フランクさんにゴルフに誘われた同じぐらいの時期に志ん朝師匠からもゴルフに誘われた。
その前から誘われていて断っていたんだけど、「そろそろいいだろ。やろうよ」と言われたのでわざと「あんなのは貧乏人のやるスポーツだ」と言って断ろうとした。
「なんで貧乏人のスポーツなのさ?」と聞かれたので「あんなのは自分の家に庭のないヤツが人の庭を借りてちょこまかやってるんじゃないか」と言うと、志ん朝師匠は「だったらてめぇのやってるボーリングなんか、家に廊下のないヤツが人んちの廊下を借りてボールを転がしてるからもっと貧乏人向けだ」と答えた。
これにはマイッタ!。じゃやろうかなとやってみることに。

フランク永井さんとゴルフに行くときは彼がいつもジャガーで迎えに来てくれる。
志ん朝と行くようなゴルフ場じゃなく、金持ちしか来ないような高級なところ。なにせあちらはスターだから。
で、ゴルフっていうのはですね。たちえば誰かが失敗しても、こんなふうにね…見ないふりをするんですよ、お互いに。暗黙のルールでね。
でもあの人は違いましたね。
私が失敗するでしょ。そうするとこうやって…肩を震わせてゲラゲラ笑うんです。
下品ですよねぇー。

それからね。車で一度送ってくれた時に、先ほど申し上げたカラオケ教室の話をしてね。私の歌ってるテープがあります、聞いてみますか?といってかけたことがあるんですよ。
その時もね、私がゴルフで失敗したときみたいにね、ゲラゲラ笑って。「あなたよくこういうものを聞かせられますね」って。
下品ですよねぇ。
でもね、歌は素晴らしかった。本当に素晴らしかった。名曲はたくさんありますけど私が一番好きなのは「公園の手品師」です。
そういって口ずさみ始める師匠。
前にも一度聞いたことがあるけど、本当にいい声なんだなぁ。自慢でテープの歌声を聞かせたくなる気持ちもわかるなー。

そんなたっぷりのまくらから「転宅」。
これがもう前半の「宗論」とは打って変わってキレキレの高座。
お人よしの泥棒が、お菊さんの甘い言葉にコロっとまいってデレデレになって、翌朝ウキウキと家を訪ねてタバコ屋に真相を聞いて唖然とする。
ころころ変わる表情がなんともチャーミングで自然でおかしい。
このさりげない落語が本当に好き。
とても楽しい「転宅」だった。

でも逗子は遠いわー。さすがに。
昨年もそう思ったけど、有休とってわざわざ行くけど席もあんまりよくないし来年はもう行くのやめようかな…。
この日は行きも帰りも人身事故があって電車が遅延しまくりで、本当に疲れた。