りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治独演会 サンパール荒川

9/16(金)、サンパール荒川で行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。

・小はぜ「狸鯉」
小三治「出来心」
~仲入り~
小三治粗忽長屋


小はぜさん「狸鯉」 
わーい、小はぜさん。
二ツ目昇進が決まってから落語がどんどん面白くなってきてる小はぜさん。「狸鯉」 は最近よくかけられているけど、恩返しする狸はかわいいし、恩返しされる男がいい加減だけど優しくて見ていて楽しい。
おや?と思うようなクスグリも入って、二ツ目になってから小はぜさんがどんな落語をやるようになるのか、とっても楽しみ!


小三治師匠「出来心」
はす向かいの奥さんが訪ねてきた、というまくら。
回覧板かなにかかと思ったら「おめでとうございます」という。おめでとう言われても最近新しくかみさんをもらったわけでもないしなんだろう。
なんでも77歳になったもんだから新宿区からお祝いでお赤飯を持ってきたのだという。

お赤飯っていえば…私は昔から大好物。そういえば池袋演芸場で8月はトリをとるんだけど、その時にお席亭がいつもお赤飯のおにぎりを用意してくれる。それが文京区にある和菓子屋で…最近は世の中がいろいろ複雑になってきてるから…その店ももう表向きはたたんじゃってるんだけど、頼めば作ってくれるっていう…あるでしょ、そういうの、なんか複雑な事情が。で、そこで頼んで楽屋に用意してくれるんだけど、私にはお席亭が10個とか用意してくれるの。他の人には1つずつ。でも私には10個。これはね、正直嬉しいですよ。いやいくら好きでも10個もいっぺんには食べられませんよ。でも私が好きだからっていうんで用意してくれて私にだけ10個くれるっていうのはね。私を贔屓にしてくれてるってことだからね。

で、新宿区からもらったお赤飯ですけどね。これははっきりいって…あんまりうまくなかった。
文京区のそれはね。私は普通のご飯にしてもそうなんだけど柔らかめが好きなんです。で、文京区のは柔らかいの。でも新宿区のくれたやつは固かった。あずき…じゃなくてささげですね、あれも固くてね。

と、ここまで喋って「私は何を言いたかったんでしょう。あらかじめ言っておきます。今日の私はダメです」

ぶわははは。「今日の私はダメです」って、アサダ先生の「今日はちゃんとやりますよ」みたいで面白い。
「いや笑いごとじゃないですよ。ほんとにそうなんですから。これね。あがってみないとわからないんだよ、自分でもね。でもだめだ。今日は。」

そんなまくらから「出来心」。
小三治師匠の「出来心」は何回も聴いていて大好きなんだけど、確かに最初の言葉通り…ちょっともやもやっとして…最近の小三治師匠はそうなると一生懸命丁寧にやられるからくどくなってしまうこともあって…ムムムなのだが。

でもそれでもひょいっと面白いのだ。なんかこのひょいっというのが、ほんとに面白くやろうとしていて面白いんじゃなく、ひょいっと出てくる面白さっていうかな。
今の小三治師匠より危なげなく話せる噺家さんはたくさんいると思うけど、こんな風にひょいっと面白いのはなかなか見ることができないんだよなぁ。だからやめられないんだよなぁ。小三治師匠の落語って。


小三治師匠「粗忽長屋
そそっかしいのまくらから「粗忽長屋」。
いやぁこれがもう神がかったように面白かったのだ。一席目の「出来心」のもやもやが嘘のようにキレがあってスピーディでとぼけていてもう最高に面白い。
一席目がもやもやだったからこそ余計にこの行き倒れを見て「隣のくまのやろうだ」と思い込む男のおっちょこちょいがすごくリアル。「浅草」を「どさくさ」、「観音様」を「水天宮様」というのも、もしかして小三治師匠がほんとに言い間違ってるの?とこの噺を知らない人だったら思ってしまうんじゃないかというぐらい、落語の中の粗忽者と小三治師匠が一体化してる。

うひゃー。
前にも同じような展開を見たことがある。一席目がもやっとしてて二席目の「粗忽長屋」がキレッキレ。
やっぱり小三治師匠には落語の神様がついてるんだなぁ…。すごいや。