りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

上野広小路亭9月中席

9/15(木)、上野広小路亭9月中席に行ってきた。

 南なん師匠「笠碁」
出てくると「私で最後です。あと一席。一緒にがんばりましょ。私のあとはもう誰も出ません。あとは掃除だけです。一緒に掃除したいよーという方は言ってください。先着3名様に高級…ほうきをお貸しします」。

最近は旅の仕事といっても日帰りが多くなった、というまくら。
若い時分は、旅の仕事についていくと落語会は夕方でそのあと打ち上げ。昼間は何もない、っていうことがよくあった。
昼間やることがなくてぶらぶらしてると先輩が「おい、お前将棋できるか?」
「はい、できます」と言うと「じゃやろう」。
そんなに強くもないけど先輩に勝っちゃった。
「お前強いな。じゃ○○と○○はなしでやろう」
どんどんハンデをつけられて最後は「お前王様だけでやれ」。
王様だけで勝負になるわけなくて、あっちに動かしたりこっちに戻したり。でもそれにも勝っちゃった。
それ以来その先輩は口をきてくれなくなった。

そんなまくらから「笠碁」。
「待ったなしでやろう」と言い出した方が調子よく打ってる。
「待ったなしはいいねぇ」「こうトントントンってね」
どんどんうっていって突然「あっ!」。
「これはまずいよ。これは…」としばし黙った後に相手に向かって「ちょっとこの石を持ち上げて」
「え?なに?」
「この石をあげておくれ」
「あげてどうする?」
「待った」
「だめですよ」

最初は「友達じゃないか」とか「この一回きり」とか言って甘えていたのに、「じゃあ言わせてもらいますけど」とおととしの暮れの話を持ち出して大喧嘩。
もう表情を見ているだけでおかしい。たまんないなぁー。

仲たがいして碁を打たなくなって何日か目。
待ってあげなかったほうがお茶を飲みながら「あー退屈だ」「あーー嫌な雨だねぇ」とぶつぶつ言ってる。
「まとめてわーーーっと降っておしまいにならないかねぇ」に笑ってしまう。
笠をかぶってあいつの家の前を通ってみよう、と言いながら「でもあいつが店先に座ってなかったらどうしよう。そうだ。ちらちらっと見てみればいい」と言って、首をちらちらっとやるのがなんともいえずおかしい。

一方待ってほしかった方のおじいさんは店で家の者に小言を言ってる。
ぞうきんの筋が入ってる、火が多すぎる、ここで煮炊きをしようっていうんじゃない、子供をあっちにやれ、いやな嫁だよおっぱいが大きいと思ってえばっちゃって。
番頭に、なぜあの喧嘩の時に止めてくれなかったと文句を言っているときにポストの陰に立っている友達を見つけてからの喜んだり怒ったりまた喜んだりがもう見ているだけで幸せな気持ちになってくる。
「へぼ!」「ざる!」言い合いながら部屋に入ってきて碁石をがらがらやりながら「ああ、よかった!」と言うのがほんとにかわいいなぁ。

大好きな噺を大好きな師匠で聴ける幸せ。
結局この芝居、5日中4日来てしまった。
毎日いろんな噺をしてくれていろんな表情を見せてくれる南なん師匠。やっぱりトリだとやるネタがまた違うからいいなぁ。最高だったー。

鈴本演芸場9月中席夜の部

9/15(木)、鈴本演芸場9月中席夜の部に行ってきた。

・小駒「金明竹
・わん丈「強情灸」
・ストレート松浦 ジャグリング
・さん助「真田小僧
・馬石「王子の狐」
・正楽 紙切り
・燕路「だくだく」
・雲助「辰巳の辻占」
~仲入り~
・ニックス 漫才
・圓太郎「化け物使い」
・小菊 粋曲
・白酒「死神」


わん丈さん「強情灸」
円丈師匠譲りの「強情灸」。師匠より面白く感じるのはわん丈さんが明るくて堂々としてるからだろうな。
ってそれじゃまるで円丈師匠が堂々としてないみたいだけど…。でも暗いなぁと感じることがあるのは確か。
前座の頃からやってた得意な噺を堂々とやってのけた、って感じ。


ストレート松浦さん ジャグリング
(ストレート松浦先生と書くべき?)
「きょうはいろいろ雑談をしたい気分なんです」という松浦さん。
いつもの中国独楽をやりながらいつものフレーズじゃなく最近あったことをしゃべっているのがなんだかシュール。
いつもの「橋」をやりながらしゃべっていた松浦さんが「全然関係ない話をしながら同じ物(橋)をやって…伝わらないですよね」と笑うのがまたおかしかった。
この間見て「あの不思議な道具はなんだ」と思ったものは「ポイ」というらしい。
すごいことをしているのにさりげなさすぎてすごく見えないところがすごい(笑)。
玉の曲芸もいつの間にか種類が増えてて楽しい~!


さん助師匠「真田小僧
ああ、やっぱり今席は「真田小僧」をやり倒すつもりなのか…?
小三治師匠も納得するまで毎日同じ噺をかけたことがあると言っていたし、噺家さんの方にはいろんな考えがあるんだとは思うけど、白酒師匠のファンで毎日通ってる人もいるかもしれないし、まだ若手なんだから、噺を変えればいいのになぁ…。毎日同じ噺をされると「毎日通ってくるんじゃねぇ」と言われているような気がしちゃうんだよなぁ。
お前の気持ちなんかしらねぇよ!と怒られそうだけど…。しゅん。

さん助師匠の「真田小僧」嫌いじゃないけど、金坊がエキセントリックすぎる。
反応の薄い鈴本のお客さんを前にムキになる気持ちもわからないではないけど、青筋立てて叫ぶ必要はないのにと思う。
でも前回見た時より金坊が達者な講釈をきかせるところは生き生きしてたような気がする。
ってえらそうだな、おい。


馬石師匠「王子の狐」
だます方の男も何度も眉に唾してびくびくしているので、ひどい感じが全然しない。
そして狐のしなをつくって斜めから見上げる顔のかわいらしさよ。

燕路師匠「だくだく」
わーい、大好きな噺!
「だくだく」がかかるともうそれだけで幸せ度がアップする単純なあたし。
300万ほど入れておいてもらった金庫。
入ってきたどろぼうが「800万盗ったーつもり」と言うのを聞いて「余計にとってるじゃねぇか、冗談じゃねぇや」と思うばかばかしさよ。
楽しかった。でも私にはさん助師匠の「だくだく」の方が面白いんだなぁ。危なっかしいけど。ってこれじゃどちらにも失礼になっちゃうか。どきどき。


圓太郎師匠「化け物使い」
苦手な噺家さんだけど、この噺はほんとに合ってて最高に面白かった!
一つ目小僧が出てきたのにまるで動じずに用事を次々言いつける主
やりなれない一つ目小僧を大声で怒鳴りつけたのが師匠にぴったりすぎて大爆笑!
めちゃくちゃ面白かったー。


白酒師匠「死神」
下席から始まる文左衛門師匠の文蔵襲名披露興行について、「人間更生できるんだな」「でもまた多分やらかしますからそれを見に来てください」。
いろいろ毒を吐き散らかしながら「死神」。
白酒師匠の「死神」は前に見たことがあったんだけど、まるまる太っていてとってもポジティブ。
さすが自分をよくわかってらっしゃる…。
でも白酒師匠の落語って、突飛さを期待してしまうと「なんだここは普通なんだ」とちょっと肩透かしを食うんだな。
ちゃんとした古典のつもりで聞いていて「そこがそうなるか!」と驚く姿勢の方が楽しめる気がした。