りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家蝠丸独演会 『いつのまにやら』第二回

6/28(金)、道楽亭で行われた「柳家蝠丸独演会 『いつのまにやら』第二回」に行ってきた。


・ふくびき「初天神~凧あげまで」
・蝠丸「ふたなり
~仲入り~
・蝠丸「応挙の幽霊」

 

蝠丸師匠「ふたなり
私は落語がとっても大好きなんです、と蝠丸師匠。
落語家なんだから落語は好きで当たり前だろ!とおっしゃるかもしれませんが、これが意外にそうでもないんです。落語に興味のない落語家って案外多いんです。
その点私は大の落語好きで、小学生の頃から落語を聞いたり本を読むのが好きでした。
だから噺家になって何がつらいって客席から落語を聞けないこと。もうほんとに客席で聞きたい。みなさんが羨ましくってしょうがない。ですから私の夢はいつか噺家をやめて客席に回ってきくことです。いつになるかわからないですけど、そちらに行きますから。その時は…仲良くしてください。
中学の時、自習の時間に読んでいたのが柳家つばめの「お色気落語の研究」。タイトルからもわかるように色っぽい噺やえげつない小咄を集めたもので、読んでいて思わず吹き出したりして先生に見つかって本を取り上げられちゃいました。
その後先生が教壇で本を読み始めたんですけど、時々ふふっと笑ってるのが見えまして…放課後になって返してもらえたんですけど「もっとすごいやつを持ってこい」って言われましたね。

それから高校に入ってからは落語好きが高じて落語研究会を作りました。あの時代に宮城の高校で落語研究会ですよ。かなり先進的だったんじゃないでしょうか。
問題は私のあとに入ってくる部員がいなかったことでして。しかも私はほかにもいろんな部活を掛け持ちしてたんです。フォークソング、テニス、など…。

フォークソングと言えば…私が若いころに流行っていたのがいわゆる和製ロックってやつでして。外国の歌の歌詞を日本語にして歌うんですよ。字余りになっておかしいんですけど、これがなぜか大流行しまして。まぁいまも寄席で時々「ルイジアナママ」なんて歌ってる変な噺家もいますけどね。歌いだすと前座が飛び出して行って踊ったりね…妙にキラキラした衣装を着たやつが出てきたり…。
それから次に流行ったのがフォーク。フォークの祖と言えば岡本信康。この人の作る曲はとにかく暗かった。きたねぇかっこしてね、髪の毛伸ばして、くらーい顔して歌うんです。「今日の仕事はつらかったぁ~♪」。
これね、私も高座が全然うけなかった帰り道、思わず歌ってますね。「今日の高座はつらかったぁ~」。
それから吉田拓郎とかね。あれも最初は暗かった。変わったのは「結婚しようよ」を出したくらいからですかね。それからユーミンが出てきてね。これはもう全然汚くなくてきれいで明るくておしゃれで…。
ってあれ、なんの話でしたっけ。

…もうまくらが楽しくて楽しくてずっと聞いていたい!
そして「今日は何をやろうかなぁと決めないで来ていていまだに決まらないんですが…でもずっとこれ(まくら)やってるわけにもいかないからね。そろそろ決めないとね。なんとなく今日のお客様は…めったにやらないような珍しい噺がいいかな、と思うのでね」と言いながら「ふたなり」。
うおおお!私も前に末廣亭で一度聞いただけだ。

なんでも安請け合いしちゃうかめじいさん。
村の若者二人が5両の借金で村を出ると聞くと、「おれに任せておけ」と安請け合い。
不気味な森を通らないといけないから提灯を持っていくように言われても「たいしたことない」と断ってしまう。

でもいざ森まで来ると「わしは実は怖がりなんだ」とびくびく。
森の中で会った女が死ぬつもりだと聞いて一生懸命止めるが、自分が死んだあと実家に書置きを届けてくれたら5両を差し上げます、と言われると「そっか。じゃおめぇさん、死んだ方がいいな」。

ブラックな噺だけど、蝠丸師匠の淡々とした語りだと、昔話を聞いているようでひたすらにおかしい。
楽しかった~。


蝠丸師匠「応挙の幽霊」
なんでも鑑定団のまくらから「応挙の幽霊」。
大好きな噺を大好きな師匠で聞ける幸せ。
幽霊が色っぽくて品があるけど、すごい飲みたがりなのがおかしい。道具屋の主人も気が良くて軽くて湿っぽいところは一切ない。
「あなた結構いける口だね」
「ええ。幽霊仲間ともよく飲むんです。お菊さんやお露さんと時々は集まって」
「幽霊の女子会ですか」
なんていうばかばかしいくすぐりもたくさんあって笑った笑った。
楽しかった~。

とめどなく囁く

 

とめどなく囁く

とめどなく囁く

 

 ★★★★★

塩崎早樹は、相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の瀟洒な邸宅で、歳の離れた資産家の夫と暮らす。前妻を突然の病気で、前夫を海難事故で、互いに配偶者を亡くした者同士の再婚生活には、悔恨と愛情が入り混じる。そんなある日、早樹の携帯が鳴った。もう縁遠くなったはずの、前夫の母親からだった。 

面白かった!夢中になって読んで、後半は読み始めたら眠れなくなって結局1時半過ぎまでかかって読み終えた。

展開も読めなかったし、なによりも主人公・早樹の心の動きがリアルで彼女の息遣いに耳をすませるようにドキドキしながら読んだ。

自分自身のことだってよくわからないのだから友だちや家族、夫、またその家族のことがわからないのも無理はないのかもしれない。
心が通い合っていたと思っていても見えていないことってあるんだな。

それにしても信頼や愛情、安定した生活のうつろいやすさよ。

結局、起こした事件そのものよりも、人の心がミステリーなのだなぁ…。

海の乙女の惜しみなさ (エクス・リブリス)

 

海の乙女の惜しみなさ (エクス・リブリス)

海の乙女の惜しみなさ (エクス・リブリス)

 

 ★★★★★

広告代理店に長年勤務した初老の男ビル・ウィットマン。彼の人生の瞬間の数々を自虐的ユーモアを交えて語る断章形式の物語。(「海の乙女の惜しみなさ」)。もとはモーテルだったアルコール依存症治療センター“スターライト”。そこに入所中のマーク・キャサンドラが、ありとあらゆる知り合いに宛てて書いた(または脳内で書いた)一連の手紙という体裁の短篇。(「アイダホのスターライト」)。1967年、ささいな罪で刑務所に収監されることになった語り手。そこで無秩序の寸前で保たれる監房の秩序を目の当たりにし、それぞれの受刑者が語る虚構すれすれの体験談を聞く。(「首絞めボブ」)。かつてテキサス大学で創作を教えていた語り手は、あるとき学生たちを連れて老作家ダーシー・ミラーの牧場を訪ねる。その後、作家仲間から彼の安否を気遣う連絡を受け、ふたたび訪問すると、そこには、すでに死んだはずの兄夫婦と暮らしていると錯覚するミラーの姿があった。(「墓に対する勝利」)。詩人である大学教師ケヴィンが、才能豊かな教え子マークのエルヴィス・プレスリーに対する強迫観念を振り返る。マークは、エルヴィスの生涯に関する陰謀説を証明しようとしていた。(「ドッペルゲンガーポルターガイスト」)。

初めて読んだデニス・ジョンソン

アルコール依存治療センターや刑務所暮らしという特異な状況の中でも、広告代理店を勤めあげたとしても、大学教師だとしても、満たされない気持ちや身の置き場のなさは同じで、そして死は誰にも平等に訪れる。

乾いたユーモアはあるが描かれる死のイメージがあまりにリアルでぞくぞくっとするのだが、それは作者の夭折にも関係しているのではないか。奈落の底を覗き込みすぎたんじゃないか、そんな気がする。

雲助・白酒親子会

文京シビックホールで行われた「雲助・白酒親子会」に行ってきた。

・こはく「たらちね」
・白酒「お茶汲み」
・雲助「千両みかん」
~仲入り~
・雲助「夏泥」
・白酒「笠碁」

こはくさん「たらちね」
今楽屋ではどちらがトリをとるかの話し合い…押し付け合いが行われています、とこはくさん。
みなさん、プログラムを信用しちゃいけません。プログラムでは雲助師匠がトリになっていますが、トリであられが出てくる恐れもあります。

…ぶわははは!いつの間にこはくさんこんなにこなれたまくらをやるように?
白酒師匠のお弟子さんらしく毒気もあるのが面白い。
その後に「なにより不思議なのはご夫婦の縁」と全く関係のないまくらを振ったので会場が笑いに包まれたのだが、物ともせずそのまま推し進めたのもおかしかった。
堂々とした「たらちね」。
そういえば私はこはくさん…前座時代ははまぐりさんの初高座を見たことがあったので、あの時のさわやかハンサムが今ではこんなに堂々と…と感慨深かった。


白酒師匠「お茶汲み」
自分が噺家になって何が寂しいってもうお客には戻れないこと。
一度でいいからまた客席にまわって、アンケートにくそみそに書いてみたい。

そんなまくらから「お茶汲み」。
いやもう楽しい楽しい。吉原でもてたという話を聞かされて「なんだよのろけかよ!」と途中で何度も遮る男を「まぁまぁ最後まで聞いてくれよ」。
まくらが効いていて、だまされたふりをして楽しむ男と、それを聞いて自分もわくわくとだましに(だまされに?)行く男。
二度目に来た男の身の上話を聞いて「あー、はいはい」としらけた花魁の反応からサゲへの流れがすばらしい。楽しかった!


雲助師匠「千両みかん」
親子会というと本当の親子だと勘違いする方もいらっしゃいますが、そうじゃありません。師匠と弟子の会を親子会と言うわけで、この親子会というのは大変ありがたい。なぜなら「トリはお前がやれ」と言って逆らわれる心配がないですから。
そう言って「千両みかん」。
おおお。雲助師匠の「千両みかん」は初めて!ああ、でも…龍玉師匠の「千両みかん」はきっと雲助師匠から教わったんだろう。
みかん問屋が関西弁なのも、最初に「このみかんは差し上げます」と言うのも同じ。
龍玉師匠のを聞いた時に、あんまり聞かない形だな、と思ったのを覚えているので、なんか答え合わせができたようでうれしい。
番頭さんがおっちょこちょいなのが最初にも最後にも伝わってきてなんとも憎めない。
磔の様子を微に入り細に入り説明されて震えあがる番頭さんが気の毒だけどすごくおかしい。
落語らしいサゲで大好き。


雲助師匠「夏泥」
雲助師匠の夏泥は、泥棒からお金をもらった男が「すまねぇなぁ。ありがとよ~」という繰り返しが音感といいリズムといいたまらなくおかしい。
最初から最後まで一つの流れができていて、聞いていて一度も落語の世界が途切れることがない安心感。
楽しかった。


白酒師匠「笠碁」
白酒師匠の「笠碁」は二回目。
おじいさん同士がまだ少し若々しくて意地の張り合いにも元気がある(笑)。
笠をかぶってみると身体が収まりきれてないというのも白酒師匠独自でたまらなくおかしい。
「ざる!」「へぼ!」の言い合いも激しいのに、「だったらこれから勝負するか?」と言って入ってくるともう嬉しくて嬉しくて…その気持ちが溢れているのがいいなぁ。
すごく白酒師匠らしい「笠碁」。よかった~。

池袋演芸場6月中席夜の部 真打昇進襲名披露興行

6/20(木)、池袋演芸場6月中席夜の部 真打昇進襲名披露興行に行ってきた。

・鯉太「転失気」
・圓馬「ずっこけ」
北見伸&ステファニー マジック
・談幸「青菜」
小遊三「粗忽の使者」
~仲入り~
・真打昇進襲名披露口上(鯉太、圓馬、談幸、吉幸、藍馬、鯉斗、鯉昇、小遊三
・藍馬「猿後家」
・鯉斗「紙入れ」
・鯉昇「鰻屋
・ナイツ 漫才
・吉幸「子別れ(下)」

圓馬師匠「ずっこけ」
わーい、圓馬師匠!会いたかったようーー。(いつもそう言ってる気が…)
笑い上戸に泣き上戸。薬を飲むみたいにまずそうに酒を飲んでおきながらおかわりを要求する人。リアルで楽しいまくらから「ずっこけ」。
おしっこの時に号令をかけてくれと言う酔っ払いが最高。「もっとやさしく言ってくれよ。おふくろみたいに。いつくしむように」。
「へそからしょんべんがでてきちゃった。おらぁもうだめだ」にも笑った~。
わかっていても笑っちゃう。圓馬師匠のふわっとした落語、大好き。楽しかった。

北見伸先生&ステファニー マジック
同じ紐やカード、輪っかのマジックでも伸先生がやると本当に隙がなくてきれいでうっとり。
やっぱりマジックだけは上手じゃないと見ていて辛いからなー。
伸先生、寄席で一番好きなマジシャンだな。


談幸師匠「青菜」
ご機嫌で弾むような「青菜」。
リズムがよくて緩急を自由に操れる感じ。時間だって長くも短くもできる。渋くもできるし笑い成分多めにはっちゃけることもできる。
いいなぁ~!


小遊三師匠「粗忽の使者」
ひたすらにバカバカしくて楽しい。
小遊三師匠の身のこなしが好き。ひょいっと後ろに引くところ。
そして毎回いろんな噺を聞かせてくれるのが嬉しい。


真打昇進襲名披露口上(鯉太師匠:司会、圓馬師匠、談幸師匠、吉幸師匠、藍馬師匠、鯉斗師匠、鯉昇師匠、小遊三師匠)
芸協の口上はふざけが過ぎる時があって、新真打が気の毒になることがあるけど、若手真打が司会だとかなり緊張気味でふざけ成分がぐっと少なくなっていい感じ。
しかも今回は3人の師匠が全員で口上に並んでいるから無駄にウケようとする人がいなくてすごくよかった。
圓馬師匠。藍馬さんは米米CLUBが大好きで米米CLUBに憧れてこの世界に入って来た。寄席の看板の「米助」「米丸」を「米米」と読み違えたらしい。
藍馬という名前はこれから自分の色を付けていってほしいという思いを込めて付けた。とても難しい字で本人もまだ草冠しか書けないけど、これから徐々に字も書けるようになってほしい(笑)。
談幸師匠。自分は4年前に芸協に移籍…脱北してきた。藍馬さんも鯉斗さんも芸協で前座からみっちり修行してきたから何年目に真打になるというのが計算できるけれど、吉幸は違う。まるで読めなかった。それでも前座修行は一年、ニツ目を3年で真打になれたことは、亡くなられた歌丸師匠…そしてこれから亡くなる小遊三師匠のおかげ(笑)。まわり道は決して無駄にはならない。急がば回れ。果報は寝て待て…。あとはええとええっと(笑)。
鯉昇師匠。長いこと私が勤めてきた「イケメン落語家」の称号は鯉斗に譲ります(笑)。鯉斗は真っすぐな男。それが高座に出る。
それからなぜか小遊三師匠に舟木一夫のフリを(笑)。
小遊三師匠。この口上ではなぜか小遊三師匠が舟木一夫を歌うという流れになっているらしく「高校三年生」を熱唱。場がふざけすぎたときは真面目に、かたいときはふざける。絶妙のバランス感覚。

藍馬師匠「猿後家」
まくらもそうだけど噺に入ってからも間が微妙すぎる。ちゃちゃちゃっと早口で言ったかと思うと、変に間を開ける。だから落語のリズムに乗れないし、笑うタイミングを逸してしまう。
テンポやリズムが全てではないと思うけど、独自のギャグを入れるより、もう少し間を良くしたら落語らしくなる気がするなぁ…。


鯉斗師匠「紙入れ」
小噺は良かったんだけど、落語に入るとなんかこう独りよがりな感じになってしまって意味不明なところが目立つ。素人が落語の真似をしてるように見えちゃうのは上下とかリズムができてないからなんじゃないかなぁ。


鯉昇師匠「鰻屋
ちょっと変な空気になったのをぐっと引き寄せるのはさすが。
全く力が入ってないのに最初から最後まで面白い。ふわっとしているけど、やっぱりリズムがすごくいいんだな。そこにもってきて独自のギャグやふわっと引いたところがあるから、思わずぶわははは!と笑ってしまう。
鰻屋に友だちを連れて行く男は、またただ酒を飲もうというつもりはなく、今度は友だちを連れて行ってしっかり鰻を食ってきちんとお金を払ってやろうと思っているんだけど、行ってみるとまた鰻職人がいない。主人が「あなたはそういう方だ…。そういう星の下に生まれた」と絶望的に言い放つのもおかしいし、2匹だけ捕まえられる鰻がいるけどそこには赤十字のマークが入っているのもたまらない。楽しかった。

ナイツ 漫才
ナイツが出るとそれだけで嬉しいけど、この日の漫才がめちゃくちゃ面白かった。
微妙に聞き間違え&言い間違えをして、そこに絶妙のタイミングで入るツッコミがいちいち面白い。
学生時代人見知りだった話も全部薬物に繋げていく話も全部おかしかった。

吉幸師匠「子別れ(下)」
あまり好きなタイプの落語ではないけど、うまいなぁ。きれいだし噺に引き込まれる。
一瞬、談幸師匠っぽいところがあって、ドキっとした。全然違うタイプに見えるけど、やっぱり似たところって出るんだな。
金ちゃんが素直でかわいい。最初からずっとお父ちゃんと一緒に暮らしたいという気持ちが出ている。
おかあさんも亭主が酒をやめたと聞いたら「酒さえ飲まなければあの人はいい人なんだ」と全面受け入れ態勢。
亭主も「おめぇはともかく金坊のためにはよりを戻した方がいいと思う」と現実的。
ぐじぐじしていないところがいっそ清々しく、真っ当で気持ちのいい「子別れ」だった。

柳家小三治 独演会

6/18(火)、きゅりあん大ホールで行われた「柳家小三治 独演会」に行ってきた。

・三之助「道灌」
小三治ちはやふる
~仲入り~
小三治「転宅」


小三治師匠「ちはやふる
毎月17日は柳句会。昨日がそうでした、と小三治師匠。5+7+5=17で17日なんだとか。
一番うるさかったやつら(小沢昭一永六輔)が亡くなって、初期メンバーで残ってるのは評論家の矢野誠と私だけ。
これ、いつやめるんだろうね、とお互いに言いながらやってる。
それから先月は中学のクラス会がありました。高校も小学校もクラス会をやらなくなって、今では中学だけ。それももう3年の時のクラスメイトだけじゃなく、他のクラスのやつでも噂を聞きつけて来るようになった。中学では毎年クラス替えがありましたからだいたいの人はわかる。
毎年そんなこんなで20人ぐらい来てたけどそれが今年は少なかった。8名?来ない理由が亭主が病気、自分が病気、具合が悪い、そんなのばっか。そういう意味なら私だって具合悪いんですよ。

それから授業で俳句を教わったときの話。
国語の先生は特攻隊帰り。かなりの威圧感があった。その先生が「とにかくなんでもいいから自分で1つ俳句を作って持ってこい」と言った。
するとクラスメイトの〇〇っていうやつが出したのが「古池や蛙飛び込む水の音」。俳句なんて知らない我々中学生だって知ってますよ、これぐらいは。先生がこれを見て「おい、これは自分で作ったのか?」彼は平然と「はい、自分で作りました」。「誰かに手伝ってもらったり何かを見たりしなかったのか」「いいえ、しません。自分一人で作りました。」。
そう言われて特攻隊帰りの先生が「大変だ。うちのクラスに天才が生まれた!」。
私が作ったのが「寝ころべば猫が鳴くなり軒の下」。これは「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」を参考に作ったんですが、先生には「お前、これは盗作じゃねぇか」と言われました。
中にはきらりと光る俳句もありました。ある女の子が作った俳句がよかったので私がそういうと、彼女は「でもほんとはちょっと(親に)手伝ってもらったんだ」って言ってました。
ちょっと手伝うってなんなんでしょうね。俳句をちょっと手伝うって。最初の5文字だけ親が出してくれたとか?あるいは全体的にアドバイスしたんでしょうかね。

知ったかぶりのまくらから「ちはやふる」。
金さんが「先生に聞きてぇことがある」と訪ねてきてからの会話で、最初のうち先生は金さんの話をのらりくらりとかわそうとしているのが面白い。
百人一首の中にいい男っていうのがありましたよね」
「え?いい男?…まぁ百人もいるんだから一人ぐらいはいい男がいるかもしれないな」
「いやそういうんじゃなくて。いい男。いい男っていったらこいつ!っていう…」
「いい男といったらこいつ?…そんなのいたかな」
でも途中で金さんに「先生は普段からわしに分からないことはないって高慢な面をしてる」だの「近所の人も先生は物知りだって言ってる」とダメ押しされて、覚悟を決める(笑)。
この二人の会話の押したり引いたりがもう絶妙の間でたまらなくおかしい!
なんか今日の小三治師匠は…すごくいい!エモーショナルなのもジャズなのも好きだけど、とてもシンプルで何もたくまない…ザ落語!って感じ。
間がすごくよくてとぼけていて笑った笑った。楽しかった!


小三治師匠「転宅」
高座に上がったとき、座布団の上で身体がぐらり。
わわっ大丈夫か!と驚いたのだが、一番驚いたのは師匠だったかもしれない。
「こんなこと初めてです」とおっしゃっていたけど、どきっとした…。
ホール落語の時の座布団って結構高さあるからなぁ…。どきどき。

泥棒のまくらから「転宅」。
これがまた軽快でとても楽しい。
あんなじじいがあんないい女を…と本気でぷりぷりしている泥棒がおかしい。
小鉢のなんだかわからないぬちゃぬちゃしたものを食べて「うまいっ!!」その声が怒っているのもおかしい。
「伊達には刺さない段平物」とすごんだものの「だってお前さん、何もさしてないよ」と言われて「あ、今日は忘れた」。
「ばかだねぇ、そんな大きな声を出して」と言われれば「(静かにしろぃ)」。
「仲間の家に入っちまったよ」と言われれば「あ、なーんだ!」。
だまされやすい泥棒がかわいいなぁ。
固めの杯をかわして「お菊」「なんだいお前さん」と言われてやにさがるのもかわいい。

タバコ屋さんに「まぬけな泥棒」と言われ、引っ越ししたと聞かされて「ひでぇことしやがる」と涙ぐむ気の毒さ。
チャーミングな転宅、楽しかった!

 

火宅の人

 

火宅の人(上) (新潮文庫)

火宅の人(上) (新潮文庫)

 
火宅の人 (下) (新潮文庫)

火宅の人 (下) (新潮文庫)

 

 ★★★★★

「チチ帰った?」「うん帰ったよ」「もう、ドッコも行かん?」「うん、ドッコも行かん」「もう、ドッコも行く?」「うん、ドッコも行く」女たち、酒、とめどない放浪。崩壊寸前のわが家をよそに、小説家桂一雄のアテドない放埒は、一層激しさを加えた。けれども、次郎の死を迎えて、身辺にわかに寂寞が……。二十年を費し、死の床に完成した執念の遺作長編。〈読売文学賞・日本文学大賞受賞〉 

面白かった~。

主人公の桂一雄はまぁひどい男でこれがほぼ実話であるならば作者自身たいがいなクソ男だと思うけど、溢れんばかりの生命力と破滅的な生き方とそれらを俯瞰して見つめる冷徹さにクラクラする。

男の身勝手な論理を振りかざしもするけど、悲惨な末路も余すことなく描くところに、真っ直ぐさと優しさ、潔さを感じる。

露悪的なところもあるけど羞恥心もあって、深刻な中にユーモアがあるのが好きだ。

上巻の渡米した頃のところが読んでいて一番焦れたけれど(恵子とのことを清算しようと思って渡米したくせに嫉妬に狂って狂言自殺(の真似)?!また別の女?!牛乳と焼酎のチャンポン?!)、それが後半に効いていて、小説としての面白さを倍増させているのも凄い。

他の作品も読みたいし、壇一雄のことももっと知りたい。

さん助燕弥ふたり會

6/15(土)、お江戸日本橋亭で行われた「さん助燕弥ふたり會」に行ってきた。

・ぐんま「熊の皮」
・さん助「ちしゃ医者」
・燕弥「宿屋の富」
~仲入り~
・燕弥「羽織の遊び」
・さん助「不動坊」


ぐんまさん「熊の皮」
あら、珍しい。なんか嬉しい。ぐんまさん。
群馬の名物、「かかあ天下とからっ風」のまくらから「熊の皮」。
甚兵衛さんに用事を言いつけるおかみさんが妙に色っぽくけだるいのに笑う。
先生の所に向かいながら甚兵衛さんがおかみさんの尻に敷かれていることを嘆きながら「結婚するまで知らなかったもんなぁ。群馬出身だなんて」とぼやいたのもおかしかった。


さん助師匠「ちしゃ医者」
さん助師匠の「ちしゃ医者」は以前Una Gallaryさんで聞いたことがあったけど、夜中に訪ねて来た人に「その患者はどうしても助けないといけない患者か?そうでもないか?」と尋ねる助手がおかしい。
「うちの先生は義侠心はあるけど腕はない。患者さんの息の根を止める可能性がある」って。ぶわははは。
それから先生が駕籠で出かけようとするけど担ぎ手がいなくて訪ねて来た人と助手の二人で担いでいくと、途中でその肝心の患者が亡くなってしまったとわかり…。

なんとなく前に聞いた時よりわちゃわちゃしてわかりづらかったのは、まくらの反応がイマイチで動揺したのか??ちょっともったいなかったような。
それでも、お土産をもらえるかと思ったおばあさんが駕籠の中をまさぐる攻防の激しさはすごくばかばかしくておかしかった。


燕弥師匠「羽織の遊び」
この日は「宿屋の富」と「不動坊」がネタ出しされていて、燕弥師匠はもう一席は「引っ越しの夢」をやるつもりだったらしい。
でも考えてみたら「引っ越しの夢」と「不動坊」はなんか付いてる…。ので、違う噺をします、と「羽織の遊び」。

聞いていて、あれ、この噺なんだっけ?前に一度聞いたことがあったような…なになに?あとでこのブログを検索したら夢丸師匠で一度聞いたことがあった。「羽織の遊び」。

吉原に行きたいけど誰一人お金を持ってないことがわかりがっかりする江戸っ子たち。
どうにかして一文無しでも遊べないものかと相談していると、そこに通りかかったのが若旦那。
そうだ、あの人をおだてて連れて行ってもらおうと言うと、「あいつ嫌いだからいや」「へんな喋り方で気持ち悪い」という声があがる。
まぁまぁ俺に任せておけ、と若旦那に声をかけると…。

この若旦那が「セツは〇〇でげしょ」とか言うナヨナヨしためんどくさい人物なんだけど、これが燕弥師匠に合っていてすっごく面白い!
押したり引いたりの独特のリズムがおかしさを倍増させる感じ。
笑った笑った。楽しかった!


さん助師匠「不動坊」
めちゃくちゃ面白かった。
おたきさんとの結婚を持ちかけられて「もらいます」「おたきさんは私の女房なんです」ときっぱり言う吉さん。
顔や声に一目ぼれしたんじゃない、その立ってるはかなげな姿がいいんだ。指先まできれいだったんだ、と力説。
ありがてぇなぁと帰って来て湯屋に行って浮かれる様子がおかしい。ほんとにありがたそうで、おたきさんのこと、ほんとに好きだったんだね(笑)。
やきもちを焼く3人もおかしいんだけど、とにかく最高なのが幽霊役を頼まれる元前座のおじいさん。
よろよろとせき込みながら入ってきて、でも幽霊役を頼むと我が意を得たり!と大喜び。焼酎火や太鼓など嬉々としてアドバイス
セリフを教えてくださいと言って幽霊のしぐさをやるんだけど、これが結構な迫力。怖い。(でもおかしい!)
「こりゃすごいわ。さすが彦六の弟子だわ」と3人は大絶賛。

みんなで屋根の上に上がってから。松さんが買って来たのがアルコールじゃなくてあんこだと分かって怒られると「みんなにおいしいのを食べてもらおうと思って。十勝産だよ。十勝産!」。
…ぶわはははは。なにそれ。

そして本番になったとき。
松さんはちゃんとうすどろを叩くんだけど、その時の顔と音がちょっと迫力があって、でもばかばかしくて大笑い。
さらに幽霊役の元前座。家でやった時とは大違いの棒読み!
それを見て「ああ、誰かが言ってたわ。前座の頃から稽古ではうまいけど本番だとダメだって!」

いやもう笑った笑った。こんなに楽しい「不動坊」は初めて。
好きじゃない噺だけどほんとに楽しかった!

ピュリティ

 

ピュリティ

ピュリティ

 

 ★★★★★

ピップ・タイラーは23歳。高額の奨学金ローンを抱え、自宅はアナーキストたちとのシェアハウス。仕事は歩合制の電話営業。ただひとりの身内である母親は、どうも偽名を使っているらしく、さらに父親が誰なのか教えてくれない。父親についてわかるのではないか―そんな希望をもって、ピップは南米に本拠地を置く情報公開組織“サンライト・プロジェクト”に参加し、謎めいたリーダー、アンドレアス・ヴォルフを知る。ヴォルフは彼女にある秘密を打ち明けるのだが…秘密と嘘、理想主義、正義と不正、愛情、憎悪、そして殺人―壮大なスケールで織りなされる現代版『大いなる遺産』。 

相変わらずの分厚さ!凶器になるよ、これ。

ジャーリズム、インターネット、東と西、フェミニズム、と様々なことが語られるが、とどのつまりは家族、親子、ひとりひとりの人間の物語なのだった。

インターネット界のカリスマも母親との歪んだ関係に苦しむ男だし、トムの章では怪物にも見えたアナベルも純粋さを追求して身動きが取れなくなった女だし、人生を台無しにされたと感じるのは相手を愛していたからなのかもしれない。

一番の被害者に見えるピップが前に進む姿が清々しい。面白かった。

父と私の桜尾通り商店街

 

父と私の桜尾通り商店街

父と私の桜尾通り商店街

 

 ★★★★

桜尾通り商店街のはずれでパン屋を営む父と、娘の「私」。うまく立ち回ることができず、商店街の人々からつまはじきにされていた二人だが、「私」がコッペパンをサンドイッチにして並べはじめたことで予想外の評判を呼んでしまい…。平凡な日常は二転三転して驚きの結末へ―見慣れた風景が変容する、書き下ろしを含む全六編。 

どの物語にも他人とうまく関われない人たち。
生きるスピードが違っていたり、人との付き合い方の濃淡のバランスがおかしかったり、根本的に自信がなかったり。

ふんわりとしたタイトルが付いているがどの話もぞっとするような孤独と異世界に通じているのかもしれないと思わせるような闇が見えて、読んでいてぞくぞくする。
一方通行の想いは相手を引かせるけれど、程が良ければそれで済む話なんだろうか。

今まで読んだ今村さん作品の中ではざわざわ度は控え目だったけれど、読み終わったときに笑いたいような泣きたいような気持になるのは前作同様。面白かった。

小満ん夜会

6/11(火)、日本橋社会教育会館で行われた「小満ん夜会」に行ってきた。

・朝七「寄合酒」
小満ん「紙くず屋」
・正朝「へっつい幽霊」
~仲入り~
小満ん「永代橋

朝七さん「寄合酒」
わーい。おまいさんな前座さん。
初めて見た頃はナヨっとした印象があったけど、見るたびに骨太になっていくようで、おまいさん感が薄れてきている。
声や調子や間がなんともいえず心地よくて、時々ちらっと見せる毒が面白い。あーー私この人の落語好きだ。
早くニツ目にならないかな。

小満ん師匠「紙くず屋」
楽しい!
奉公に行きなさいよと親方に言われて、だったらお屋敷の庭師の奉公の話があると言って始まる妄想。
庭師なんて言っても仕事はしなくていいんだ。こうやって箒を持ってオツに立ってると…女が放っておかないよ。まずは女中連中が騒ぎだすね。
…と言って、女中が若旦那の取り合い。あたしがお金を出すから一緒に外国に行くんだとかなんとか。
騒ぎを聞きつけていよいよこの家のお嬢様が登場。ここでも芝居がかった…でも洒脱なやりとり。
妄想がどこまでもおめでたくておかしいし、厄介になってるこの家の庶民感に対する不平不満もしゃれっ気たっぷりで楽しい。
紙くず屋に行ってからも、手紙を読んだり新内を始めたり…。
若い噺家さんがやる時のドヤ感は皆無で軽くてシャレてて楽しい。
もうずっとやってて若旦那!って感じ。楽しかった。

小満ん師匠「永代橋
初めて聴く噺。
最初は江戸にかかった4つの橋のうんちくをたっぷり。永代橋が余材で作られてしょっちゅう修理が必要だったとか、幕府ではなく町内で橋の維持をしなければいけなくなり橋の通行料をとったりして費用を工面していた、というのは知らなかった。
久しぶりに行われた深川祭り。人々が押し寄せて橋を渡っていくのだが、姫様が川を渡ると言うので通行止めになり、早く祭りに行きたい人たちが足止めされる。
遅れてやってきた船がようやく通り過ぎ、通行止めが解かれると、祭りに行きたい人たちが押すな押すなの大騒ぎ。
ついに橋が落ち、押し寄せた人たちが川へ転落。何名もの死者が出る。
こういう大きな事故が起きると、長屋では大家が住民の安否を確認。独り者が亡くなると長屋で弔いを出さないといけないので大家はピリピリ。
どこの家も無事だなと喜んで家に戻ってくると、お役人から長屋の武兵衛が遺体で上がったから引き取りに来るようにと知らせが入る。
大家がぶつぶつ言いながら取りに行こうとすると、酔っ払った武兵衛とばったり。
「お前はなにをやってるんだ。今からお前の死骸を引き取りに行くぞ」と大家。

…「粗忽長屋」みたいな噺だ!
前半の蘊蓄と後半の展開のばかばかしさがたまらない。
えばっていてしっかりしているように見える大家が全くなんの疑いも持たずに当人と一緒に遺体を引き取ろうとするのがとっても楽しかった。

愛なき世界

 

愛なき世界 (単行本)

愛なき世界 (単行本)

 

 ★★★★

恋のライバルは草でした(マジ)。洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちに支えられ、地道な研究に情熱を燃やす日々…人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか!?道端の草も人間も、必死に生きている。世界の隅っこが輝きだす傑作長篇。 

植物学の研究をしている大学院生と大学の近くの洋食屋の見習い。植物の魅力にとりつかれ研究に没頭する本村に恋をした料理人見習いの藤丸。勇気を出して告白するも、自分は植物たちの愛なき世界に生きるため恋愛は捨てた、と見事にフラれる。

傷心ながらも彼らの研究に敬意を払い植物の生態に興味を持ち自分のできることで彼らを支えようとする藤丸がとても素敵だ。

そして生物学の研究という自分とは全く縁のない世界ではあったけれどとても興味深く面白かった。

しをんさんの取材力…すごいな。
植物には「愛」はわからない。でもその植物の魅力にとりつかれて謎を解明したいと他のことを犠牲にして研究に没頭する人たち。それを見守る周りの人たち。
「愛なき」と言いながら、愛にあふれた世界だった。よかった。

楽屋半帖 第2回

6/10(月)、駒込落語会で行われた「楽屋半帖 第2回」に行ってきた。

・さん助 ご挨拶&お題取り
・さん助「狸賽」
・さん助「まんじゅうこわい
~仲入り~
・さん助「徳ちゃん」「三題噺(パンダ、いちご大福、金魚)」

さん助師匠 ご挨拶&お題取り
前回は私、まくらなしで噺に入りましてその後みなさんを驚かせてやろうと思ってこの会では三題噺をやります!と発表したんですが、話してみたらお客様より自分が一番驚いちゃったという…。
もうほんとに「なんで三題噺をやるなんて言っちゃったんだろう」という後悔でいっぱいで、仲入りの時に逃げ出したい気持ちでした。

…ぶわははは。
いやほんとにびっくりしたよー。心配もしたし。

で、前回は仲入りの前にお題を決めて仲入りで噺を作りましたけど、今回は変えます。さすがに時間が足りないので…。
最初にお題を決めて、それから二席やって、仲入りをいただいて、それからやります。

…いやいやいや…。最初にお題決めてもその後高座があって、噺を考えるのは仲入りの時なんだから、今お題を決めても仲入り前に決めても同じですからー。
気付いてないさん助師匠って…むしろすごい(笑)。

さん助師匠「狸賽」
この間鈴本で聞いた時とは打って変わって、小噺をたっぷり丁寧に。
狐と狸が博打をやりたいなぁーと喋っていて、狐が出て来た人間に化けて入って行って成功。
それを見ていた狸が俺も早くやりたい!と待っていると、また出て来た人間が。喜び勇んで入って行くと「狸が入って来た」とぼこぼこに。
なんでだろうと考えたら、化けるのを忘れて入って行ってた。

…そうそう。これぐらいちゃんとやればこの間のお客さんもちゃんと噺に付いて行けたのよ。(←何様。)
そんなまくらから「狸賽」。
鈴本で聞いたのよりずっとずっと面白い。
狸がサイコロに化けた時、ものすごーく大きいのを、目の動きで。こういうの、とっても楽しい。
サイコロを振る時に「たーちゃん」と呼びかけるおかしさ。目の説明もゆっくりと丁寧。
楽しい~。すごく面白かった!

さん助師匠「まんじゅうこわい
自分の家に友だちを大勢呼んだ男。なぜか電気をつけず真っ暗な中にいる。
「何で電気をつけないんだ?」と聞くと、「電気なんかつけなくていいんだよ。つけなくてもそのうち近所の電気が漏れてくるからそれで明るくなるよ」。
「あとしばらく目をつぶってから開けてごらん。暗闇に慣れて見えてくるから」
「それじゃ術だよ」。
それから実は今日は俺の誕生日なんだから始まって、蛇が怖いと言う金ちゃんの話から、お互いに怖いものを言い合おう、という流れに。

…おおお。「まんじゅうこわい」だ!
部屋を真っ暗にしている、っていうのは初めて聞いたな。どこで仕込んできたんだろう。
わからないけど、こういうところがいかにもさん助師匠!って気がして好きだなぁ。
買って来たまんじゅうがいちいち有名どころのまんじゅうなのも楽しい。「これは御門屋の揚げまんじゅうじゃねぇか」とか1か月分の手間賃を全部つぎ込んで高級なまんじゅうを買ってきちゃうやつとか。
動きが大きかったり反応が激しかったり…こんな聞き飽きた噺もこんなに楽しいのかー。
やっぱりさん助師匠の落語はピカーっと明るい時が最高だなぁ。

さん助「徳ちゃん」~「三題噺(パンダ、いちご大福、金魚)」
まくらなしでいきなり落語に入った。
お、おおお。これは徳ちゃん!
早口でどんどん進んでいくんだけど、これがとっても面白い。若い衆に声をかけられて「どうする徳ちゃん?」と振り向くだけでおかしいのはなんなんだ。
お店の女の子のお見立てをするのに、「真ん中の白いの」と言ったらそれは柱で「その両隣の黒くてうずくまってるのがうちの女の子たちです」。
なんだよ黒いのがうずくまってるって。ぶわはははは!
「離れ」に入った客がかっぽれを踊って下に落ちてうめき声が聞こえてきて「うめき声が聞こえてくるというのは生きてる証拠ですから」もおかしいけど、1時間かけて釣り上げたっていうのもばかばかしくて楽しい。
芋をかじりながら入って来た女の子もニコニコ笑顔でやる気満々なのがすごくおかしい。
「ちゅうするべ」「同衾するべ。ほら、同衾同衾!」って。わはははは。

で、サゲまでいったと思ったら「うるせーーーーー!!!」と大声。「うるせぇ!!益子!!(さん助師匠の本名)」にはひっくり返るほど笑った。
「あれよ、隣の売れない噺家。売れないもんだからずっと家で稽古してるの。昨日なんか文七元結をたっぷり聞かされちゃった」
「お前、詳しくなってるじゃないか」
「文七のあとは芝浜をたっぷり。お前は談春か!」に大爆笑。

そして、「ここは駒込ソープランド太閤」にびっくり&大笑い!
この会場に向かって歩いている時、線路の向こう側に確かにあった。ソープランド太閤。
なんだあれ?なんでこんなところに?と不思議に思いながら歩いてきたので、おかしくておかしくて。

ソープ嬢のひとみとマネージャーの哲(だったかな)。2人はこっそり付き合っているのだが隠しているのが辛くなったのでオーナーに話そうという哲。まだ心の準備ができてないと言うひとみ。
「あたしここをクビになったら…大宮のソープランドに行くしかなくなっちゃう。埼玉は嫌!」。
…ぶわはははは!!!
そんなひとみはパンダが大好き。一緒に見に行ってくれる?とひとみが言うと「いいよ」と哲。
日曜日、田町で待ち合わせた二人が上野で降りて鈴本の前を通り過ぎるとそこには「にゃんこ金魚」の名前が!「ここで金魚…」とつぶやくさん助師匠に笑う。
パンダを見るのには大行列に並ばなければいけない。2時間待ちと聞いてうんざりするひとみに哲が差し出すのがいちご大福。
それを食べながらひとみが語りだす。
「お客さんが指名するときに入る待合室に水槽があってそこに金魚が泳いでいるでしょ。なぜかああいう場所の待合室には水槽があって金魚が泳いでるのよね…。」
ひとみがそう言った後に、「なんでそんなことを知ってるんだ」。ぼそっというのがおかしい。
「あたしあれを見てるとなんか…元気が出るの」。そう言った後に「ここで使うならにゃん子金魚は余計だったな」。ぶわはははは。
そしてようやくパンダを見てひとみは二人のことをオーナーに言ってもいいと決心。
なんでパンダを見たら決心で来たの?と聞かれ「だってパンダは白黒はっきりしてるから」がサゲ。

おおおお。ちゃんと面白い!
前回と同じ流れだったのもなんかいい感じ。でもなんで三題噺に入る前に一席やるんだろう?やりながら整理してるのかな?おもしろーい。
「うるせー益子!」と叫んだ時はほんとに意表を突かれて笑ったー。
まさかソープランド太閤が出てくるとは思わなかったし、待合所の金魚っていうのがなんかこう…昭和っぽい裏寂しさが伝わってきてちょっと文学的(笑)なのもさん助師匠らしい。

仲入りの時、さん助師匠が楽屋で苦しんでいる姿がちらっと見えてドキドキしたけどすごく面白かった。
楽しいなぁ。さん助師匠は会ごとにカラーを出してくれるから、会が増えるのはファンとしては嬉しい。

 

国立演芸場6月上席夜の部

6/7(金)、国立演芸場6月上席夜の部に行ってきた。


・アサダ二世 マジック
・玉の輔「辰巳の辻占」
・小燕枝「ちりとてちん
~仲入り~
・ニックス 漫才
・菊志ん「粗忽の釘
翁家社中 太神楽
・今松「一文笛」


小燕枝師匠「ちりとてちん

淡々としているけどじんわりとずーっと楽しい。
ちりとてちん」を食べた金さんが、それまでとっても無愛想だったのに、口にしたとたん満面の笑みを浮かべてそれから「うえっぷ」とえづくのがおかしい。にっこり→こみあげてくる→えづく、の繰り返しに大笑いだった。
あーー、好きだー、小燕枝師匠の落語。楽しい。


今松師匠「一文笛」
空き巣に入られたことがあります、と今松師匠。
窓のガラスのところをきれいに切られて掛け金を外して家に入ったらしい。
落語の泥棒の噺でありますでしょ。新米泥棒が先輩に「いいか。泥棒に入ったときは逃げ道を用意しておくんだ。表から入ったら裏へ、裏から入ったら表へ」。まさにそれでした。表の窓から入って裏口から出て行った。ああ、落語も時々は本当のことを言ってるんだなぁ、って変なところで感心しました。

それからスリの話。
スリっていうのは技術職。仕事を見れば誰の仕業かわかるって言いますから、すごい。

そんなまくらから「一文笛」。
腕自慢のスリが元泥棒の兄貴分にあんなに腕があったのに辞めて堅気になるなんてもったいない、と話している。
そして自分は泥棒だけど貧乏人からは盗らない。金持ち、盗られても仕方ないような金の余ってるやつからしか盗らない、と言う。
兄貴分は「お前ずいぶん自信たっぷりに言うじゃねぇか。本当に困ってるかどうか、一目見ただけでわかるのか?金持ちそうに見えていくら財布が膨らんでいたとしても、今日この金を返さないと死なないといけなきゃいけないかもしれないなんてこと、わからねぇじゃねえか」と言う。

そして、昨日お前は俺の長屋で仕事をしただろう?と言う。
「いやそんなことはしない」と言うと、駄菓子屋で一文笛を盗んだだろう、と兄貴。
それから兄貴が話したのが、良かれと思ってスリがした盗みのせいで貧乏な子どもが不幸に見舞われてしまった、ということで、それを聞いたスリが…。

今松師匠らしく淡々とした語りなんだけど、まくらからサゲまで…過不足なく…でも十分すぎるほど伝わってくるものがあって、終わった後しばし茫然。ああ…いいなぁ…今松師匠の落語は。くさいところやいやらしいところが何一つない。笑わせてやろうとか意表をついてやろうとかそういう雑念がなくて、でも突き放すような冷たさはなくてじんわりと温かい。
よかったー。かっこよかったー。うまいこと言えないけど、ほんとに素晴らしかった。

小燕枝師匠と今松師匠の二席を聞けて、大満足。

赤坂 はん治の会

6/6(木)、赤坂会館で行われた「赤坂 はん治の会」に行ってきた。

・小はだ「まんじゅうこわい
・はん治「君よ、モーツァルトを聴け」
~仲入り~
・小はぜ「蔵前駕籠」
・はん治「ろくろ首」


小はださん「まんじゅうこわい
池袋のはん治師匠の会のチケットについての業務連絡。
これがなんかわかりづらくて、ああ、小はださんこういうこと苦手なんだなと思っていると「す、すみません。なんか。私の事務能力の低さが出てしまっていて。申し訳ないです」に笑う。
「だいたいこちらの会では私の後に小はぜ兄さんが上がって私のことをあれこれ話して、私がそれを聞いて傷つく…というのが多いんですが。この会にいらしている方の中には小はぜ兄さんのファンのかたも大勢いらっしゃってると思いますので…私も言われっぱなしじゃないぞというところで…兄さんはこういう人なんですよ、という情報を。きっとファンの人も喜んでいただけるんじゃないかと」。

兄さんは見ての通りまじめ一辺倒、真っすぐな人、というのは見ていてお分かりいただけると思うんですが。
でもあれでいて人と感覚が違うようなところもありまして。やっぱりあの…AB型ですから。ええ。
私がしょっちゅうしくじるもんですから、そこで兄さんが厳しく注意をしてくるんですね。そういう時、兄さんは説教が持続しないんです。
といって、小はぜさんの説教が猫をかわいがることでとっちらかってしまう、という話。

…ぶわははは。小はだの逆襲?!全然たいした逆襲になってないけど、まるで違うタイプの二人。面白いなぁ。
そんなまくらから「まんじゅうこわい」。
これを聞いていて思い出した。そうだ中野ゼロで小はぜさんがやったのも「まんじゅうこわい」だった。なんで「寄合酒」って書いちゃったんだろう。あわてて修正。
小はださんはなんか独特のすっとぼけたところがあって、それが落語でもちょうどいい間になっていてとても楽しい。
聞いていて何度か本気で「ぶわはっ」と吹き出した。

はん治師匠「君よ、モーツァルトを聴け」
小はだも来年にはニツ目になるかもしれません。そんな噂が耳に入ってきています、とはん治師匠。
小はだと小はぜ。正直言って私が若かった頃に比べると格段に落語が上手です。今の前座やニツ目の水準からしたらどうなのかはわかりませんけど、私に比べたらそうです。
2人の弟子は全くタイプが違うんですけど、まぁ…なんとかなってくれたらいいなぁ、なんて思います。
それにしても…弟子とは言いながら…「師匠の落語を継ぎたいです」というような言葉は一度だって聞いたことがないというのは…。いやまぁいいんです、いいんですけど、ちょっと情けないなぁなんて思ったり。
弟子が入る前の私は年に2,3回会をやる程度でしたので…噺を覚えるにしてもずいぶんのんびりやればよかったんですが。
こうして会が増えて…それもどちらの会でも…いらっしゃるお客様の顔ぶれがほとんど同じということを考えますと…違う噺をやらないといけない…のは大変で…。

…ぶわはははは!!はん治師匠、おかしい~。
でもほんとに会が増えて素晴らしいなぁと思う。お弟子さんも二人とも魅力があってほんとに素敵な一門。大好きだ。

そんなまくらから「君よ、モーツァルトを聴け」。
この噺、久しぶりに聞いたのと、こんな近くで聞いたのは初めてだったということもあるんだけど、最初から最後までめちゃくちゃおかしくて大爆笑だった。
もうね、おかしすぎるのよ。魚屋さんの反応が。
子どもの病気を治していただいてありがとうございます、とお医者様にお刺身を届けた魚屋さん。
先生が音楽を聴くのが趣味と聞いて「あたしは北島三郎が好きです。かかぁのやつは鼻の穴がでかいなんて言って嫌がりますけどね。鼻の穴で歌うわけじゃねぇんで」と言って「はーーるばるきたぜはこだてー」。
遠慮がちにいい喉を聞かせてくれる…この加減がたまらない。
モーツァルトの話を聞きながらあれこれ聞き間違うのも、変なツッコミをいれるのもいちいちおかしい。
独特の間と独特の口調。楽しかった~。


小はぜさん「蔵前駕籠」
今日はたくさんのお客様にお運びいただいてありがとうございます、と小はぜさん。
いつも前日に主催者の方に電話をして「明日はよろしくおねがいします」とご挨拶はするのですが、その時に予約がどれぐらい入っているのかというのは聞いたことはない。なんとなくそういうことを言うのは野暮な気がするんですね。
だから予約が入っているのかいないのかは開場するまでわからない。
今日も師匠の会や自分の会のチラシを持ってきたんですけど。私、このチラシを折る作業が好きなんです。朝起きてすぐにやったりすると気持ちが晴れ晴れとするというか心が落ち着いてくるというか。
で、どれぐらい持ってくるかと言ったら、これぐらいお客様が入るといいなぁという数を持ってくるんですけど。
今日はちらっと受付の所を見たらチラシが全部なくなっていて。
あーだったらもっとたくさん持って来ればよかったなぁ、なんて思ったりして。

そんなまくらから「蔵前駕籠」。
うーん。きれいだなぁ。小はぜさんの芸は。
テンポが速いけど言葉が明瞭でとてもきれい。もしかするときれいなところが弱点でもあるのかもしれないけど、小はぜさんがこの噺を好きだというのが伝わってきてとても微笑ましい。
追いはぎが出る、しかも侍だから質が悪いとどんなに言われても、吉原に俥で行くんだ!と言い張る江戸っ子。昨日もおとといも出たなら今日は出ないよとか大丈夫だよ俺が倒してやるからとかいろんなことを言うけど、なかなか「出す」と言ってもらえない。
最後は追いはぎが出たら俥を置いて逃げちゃって構わないから、とまで言って、ようやく出してもらえる。
「こちらにも支度があるから」と言って着物を全部脱いで紙入れや煙草も全部お尻の下へ敷いて、ふんどし一丁。
それを見た親方が「まるで寄席の決死隊だね」。
そこからの展開もテンポがよくて威勢がよくてとても楽しい。
よかったー。小はぜさん、どんどんネタを増やしてるなぁ。すばらしい。

はん治師匠「ろくろ首」
おなじみの「ろくろ首」。
この与太郎さんのたくまぬ可愛らしさは他の人には出せない味だよなぁ…。
お嫁さんが欲しいと言い出すまでのもじゃもじゃしたところ。
何か言われてまぜっかえすところ。
バカだけどまるでバカじゃない。ちょっと機転がきくところもあったり、一生懸命なところもあったり。
首が伸びるところは本当に与太郎さんと一緒に恐ろしいものを見た気分。

今日は珍しい噺を聞けなかったのは残念だったけど、テッパン二席ともほんとに面白かった。