りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

しのばず寄席(夜)

4/6(木)、しのばず寄席(夜)に行ってきた。
この日は半休をとって上野広小路亭に13時から入り、そのまま夜はしのばず寄席へと突入。あの狭い空間に6時間半ぐらい居続けたのは初めてで…天国のような地獄のような(笑)…でもトリで南なん師匠を見られたからやっぱり天国だったな。


・鳳月「つる」
・吉幸「ろくろ首」
・美代児 漫談
・里光「はてなの茶碗
・山緑「大岡政談 五貫裁き
・左利き 漫才
・南なん「夢の酒」
 
鳳月さん「つる」
堂々とした前座さんだなぁと思ったら、元お笑いの人なんだね。納得。
「つる」をこんなふうに面白くできるのはすごいかも。
 
里光師匠「はてなの茶碗
上方版の「はてなの茶碗」。
ちょっとあぶない?ところもあったけど、面白さでカバー。
油屋さんが「この値段は茶金さんの名前で付いた値」だから自分は受け取れない、と言ったのには納得。
パーパーしてるけど憎めないし一本筋の通った油屋さん。
それだけにサゲのばかばかしさが際立ってナイス。
 
左利き 漫才
面白い。
最初、左側のダッシュさんがちょっとアブナイ人なのでは…とドキドキしたけど、大丈夫だった(笑)。
全然そうは見えないのに運動神経抜群で体育大出身っていうのがすごい。
全部面白かったんだけど、特に昔話の歌の替え歌がツボだった。

南なん師匠「夢の酒」
仲入りなしで南なん師匠の出囃子が聞こえてきて胸がときめく。
まくらですぐに「夢の酒」とわかる。きっと今師匠の中でマイブーム。
にぎわい座の時よりぐっと近くで見られる幸せ。

若奥さんが大旦那に夢の話を聞かせながら、だんだん興奮してきてぱくぱくぱくぱくやるのがおかしくておかしくて。
夢の中に入ってご新造に意見してきてくださいと言われて「あーあたしには思いつかない。やっぱり女だねぇ」とにっこりするところが、この大旦那の優しさが出ていていいなぁ。

楽しかった~。
やっぱりトリの南なん師匠は格別だなぁ。トリの時はできるだけ全部行きたい!

上野広小路亭4月上席後半

 4/6(木)、上野広小路亭4月上席後半に行ってきた。
 
・小助六禁酒番屋
・遊馬「転失気」
・扇鶴 音曲
・蝠丸「井戸の茶碗
~仲入り~
・昇羊「二人だけの秘密」
チャーリーカンパニー コント
・柳好「長屋の花見
・遊之介「浮世床(戦争ごっこ、うどん、碁、将棋、本)」
ボンボンブラザーズ 曲芸
・小文治「田能久」
 
助六師匠「禁酒番屋
半休とって上野広小路へまっしぐら。お目当ての小助六師匠に間に合った!
酒飲みの小噺をいくつか。何度も聞いていて知っているのにゲラゲラ笑ってしまう。間がすごくいいのと、なんかこういい具合に力が抜けていて、それが聞いていて心地いいんだなぁ。若手真打でこの貫禄、しかも全然嫌味がない。好きだー。
禁酒番屋」、番をしている侍が本当においしそうに酒を飲むので、思わずごくり。
油屋の徳利のにおいをかいだ侍が「水カステラと同じにおいがする」と嬉しそうな顔をしたのがおかしい。
楽しかった~。
 
遊馬師匠「転失気」
前半がちょっとくどいくらいだったのは時間の関係?それともそういう戦略だったのかな。
その分、後半が爆発的に面白くて、近くに座っていた中学生(かな?)がゲラゲラ笑ってた。
 
蝠丸師匠「井戸の茶碗
ゆったり穏やかで、だけど無駄がなくとっても楽しい「井戸の茶碗」。
千代田氏が最初の五十両を断るときに「今はこんな暮らしをしているけれど、誇りを失わないことが武士としての自分の最後の砦」というようなことを言ったのには、はっとした。
やっぱりそこに納得できないと、ただのめんどくさいだけのおやじになっちゃうもんな。
蝠丸師匠ってわりと噺をすぱっと刈り込んだりするけど、「ここ」というところはそういうはっきりした色をつける。そのバランスが絶妙。
 
千代田氏が五十両のかたに汚い茶碗を預け「これで一件落着となれば…みなさんもお待ちかねの仲入りに入れて、私も下がれるんですけど…世の中そんなに甘くない」。
 
…ぶわははは。このゆるさがまた魅力だなぁ。
すごく楽しい「井戸の茶碗」だった。
夜の部(しのばず寄席)終わって帰るときに隣に座ったおじさまが話しかけてきて「蝠丸師匠の”井戸の茶碗”、20年ぶりだったらしいですよ」と教えていただいた。
おおお、なんか貴重なモノを見られたのかもしれない。ラッキー♪
 
遊之介師匠「浮世床(戦争ごっこ、うどん、碁、将棋、本)」
独特な語り口がなんか癖になる。
テンポとか詰めるところとかが独特。もっと見てみたい。トリのときとかどうなんだろう。
 
小文治師匠「田能久」
民話のようなお話なので、そういうお話を聞くような気持で聞いてくださいと言って「田能久」。
めったに聞かない噺なので「どうなるの?」とほんとに物語を聞く気持ちでわくわくと楽しんだ。(前に聞いたことあったっけとブログを検索してみたら、天どん師匠で二回聞いていて、それにも笑ってしまった)
あと田能久さんがおろちにいろんな芝居の役を演じて見せるところ、とても形がきれいで小文治師匠にぴったり合っててうっとり…。

ほんとに好きな人ばかりが次々出てくる幸せな番組だった~。
 
 
 

末廣亭4月上席夜の部 柳家小八・真打昇進襲名披露興行

4/4(火)、末廣亭4月上席夜の部 柳家小八・真打昇進襲名披露興行に行ってきた。
 
・カンジヤマ・マイム パントマイム
・東三楼「子ほめ」
・三三「道具屋」
・ペー 漫談
喬太郎「華やかな憂鬱」
・一朝「やかん泥」
・正楽 紙切り
・市馬「狸賽」
馬風 漫談
~仲入り~
・真打昇進襲名披露口上(馬風小三治・市馬・喬太郎・小八)
・にゃん子・金魚 漫才
小三治「小言念仏」
・さん喬「替わり目」
・翁家社中 太神楽
・小八「居残り佐平次
 
カンジヤマ・マイム パントマイム
初めて見たけど、楽しい~。
正直言って寄席の色物さんってちょっとビミョーなものもあるので、こういう方たちにはもっと出てもらいたいなあ…。
トークも客席を巻き込むのもとってもうまい!
 
一朝師匠「やかん泥」
泥棒の子分がたまらなくいいキャラクター。陽気でおしゃべりで声が大きくてパーパーしてて。
「仕事をしたのか」と聞かれて「それが大笑い。あまりにばかばかしくて」と言って、ぐふふっと笑いながら喋る、この「ぐふふ」がほんとにかわいくてもうそれだけでにこにこしてしまう。
ぽかっとやられて怒り出したのに、兄貴分が中からお釜を渡すと「うわ、これは大きなお釜だー」とにこにこして、兄貴分が「もう機嫌が直ってやがる」とあきれるのが楽しい。
 
市馬師匠「狸賽」
狸に恩返しされる男が人としてダメな感じがありつつも、狸にはとっても優しくて、そこがとっても好き。
 
真打昇進襲名披露口上(喬太郎師匠:司会、馬風師匠、・小八師匠、小三治師匠、市馬師匠)
馬風師匠が真打の口上じゃなくてプロ野球(巨人)の口上。その後またひじで両隣を吹っ飛ばすのをやって、両隣の喬太郎師匠と小八師匠と吹き飛ぶ。(お約束)
馬風師匠の不真面目な口上に小三治師匠が時折しかめっつらをしながらくいっと振り向くのが面白かった。
市馬師匠はいつものようにまじめに褒めて、喬太郎師匠に促されて相撲甚句。いい声。
 
小三治師匠。
小八の師匠の喜多八は私の弟子で、みなさんもご存知の通り昨年5月に身罷りました。それで私が引き取りましたが、ながいこと見ていてこいつ…大丈夫かなと思ってましたけど、このお披露目で見て、びっくりしました。
こんなになるかとおもってね。
スパッとしたところはスパッと。怪しいところは…怪しいまま(笑)。師匠と一緒でね。
あいつの師匠は変なやつで…でも師匠がしっかりしてないと弟子はちゃんとするんですかね。
まぁ…喜多八も私の7人いる弟子の中で一番心配してましたけど、自分の落語をどんどん良くしていってお客様もたくさん付いて、いい噺をするようになりました。
小八もそれを引き継いでこれからますますよくなるでしょう。
今日も最後に上がりますが、途中でお帰りになったりせず…どうぞみなさん最後まで見て行ってください。応援してやってください。
 
そういって頭を下げた小三治師匠。
なんとなく回を重ねるごとに師匠が優しく…饒舌になっているような印象で、じーん…。
 
小三治師匠「小言念仏」
「今楽屋で急に思い出したことがあって」と小三治師匠。
 
喜多八が亡くなる少し前でしたか、急になついてきましてね。師匠、師匠って言ってくるんですよ。
もともとなついていた奴じゃないんですから。
弟子の中で一番ひねくれててなつかないやつだったんです。
それがね。何回か顔を合わすたびに、「師匠、カラオケ行きましょう」って言うんですよ。
昔はよく一緒に行ってて最近行ってないとかじゃないんです。一度も行ったことないんです。
なのに急にそう言いだして…。なんでそんなこと言うんだろうと思ってたんですけど。
 
分かってたんですかね。
あるいは…あいつはずっとなついてこなかったけど、ほんとはなつきたかったのかもしれません。
今思えばカラオケ、行けばよかった。
あいつと行けなかったら、じゃ弟子の小八と行くかって言ってもね…あいつと行っても面白くもなんともないしね。行ったら私は何を歌うかな…。みだれ髪?(といって一フレーズいい声で)
 
…喜多八師匠が亡くなった時にあまりそのことについて触れなかった小三治師匠。
多分いろいろ思うところはあっても言葉にはしないんだな、と思っていたんだけど、ふいにそんなことを話し始めたから、もう泣けてきてしまった。
そして、ああ…この人が好きだなぁと思ったのだった。なんか表し方とかそういうの全て含めて。
 
そんなまくらから「小言念仏」。
いつも通りなんだけど、小言を探してきょろきょろするのがおかしくて、また小言を言った後にさもいやそう~に念仏を唱えるのが楽しくて。大笑いだった。
 
この日は明らかに師匠として出る小三治師匠目当てのお客さんが大勢集まっていて、すごい拍手。
でも小三治師匠が終わったら帰ってしまうお客さんもいて、小三治師匠が「最後まで」ってお願いしていたのになぁ…なんだかなぁっていう気持ちになった。
 
小八師匠「居残り佐平次
大きな拍手に迎えられた小八師匠。
「こんなにお客様が来てくださったのは、小三治と喜多八のおかげだと思ってます。ありがとうございます」と小八師匠。
最前列の右側の席を指して「でも…帰っちゃったんですね…。いや…しょうがないですけど…でもここがぽつんと空いてると気になりますね。立ってる方、もしよければこちらに…。勇気いるでしょうけど、どうぞ…。…だめですか。」
 
えーん、誰か座ったらいいのにー。
と思っていたら女性がさささっと後ろから走って来られて座られた。
ああ、よかったー。ありがとうありがとう。私は親類でも何でもないけど。
 
「実はこの手拭いはレアものなんです」と持っていた手拭いを広げた小八師匠。
喜多八師匠がニツ目時代に使っていた「小八」の手拭いで、もう年代物で色も褪せてきてしまっているけれど、お披露目の高座ではこの手拭いをずっと袂に入れているのだ、と。
そして、前から師匠にあごのところのほくろを取れと言われていたのでとりました。これをとったら師匠が来てくれる気がして。
今日も師匠は…来てますかね…、と言いながら変なポーズをとって「…わかりませんね。あ、すみません」。
小三治師匠があんな風に話してくれてきっと小八師匠も嬉しかったんだろうな。
もしかするというつもりじゃなかったことを言ってしまったのかもしれない。
 
そんなまくらから「居残り佐平次」。
私にとって喜多八師匠といえば「居残り佐平次」で、というのは喜多八師匠って結構一つの噺を続けてやることが多くて、たまたま私が見に行くと何回も続けて「居残り佐平次」だったのでその印象がとても強いのだ。
小八師匠の「居残り佐平次」は、やっぱり師匠のカラーがとても強く出ていて、正直ちょっと背伸びをしているような感じを受けるところもあったけれど、でも佐平次の弾けっぷりは小八師匠独自のもので、ああ、きっとこれから自分のカラーをどんどん出していくんだろうな、と感じさせた。
特に後半に入ってからは肩の力が抜けたように弾けてて、楽しかった。
 
小三治師匠の今日のまくらは、喜多八師匠ファンの人たちが聞いたらうれしかっただろうなぁと思って覚えてる限りを書いてみたけど。あんまり書きすぎるのは無粋だよなぁというのと、録音してるとか誤解されたらいやだなぁというのと、私のもやもや記憶で書いたのでちょっと違うところもあるかもと 、どきどき…(と言いながらアップしちゃうんだけど)。
 
 
 
 

開場15周年記念興行 横浜にぎわい座寄席③

4/3(月)、「開場15周年記念興行 横浜にぎわい座寄席③」に行ってきた。
 
・かん橋「初天神
・竹千代「豪華な粗品」
・ニックス 漫才
・馬の助「はてなの茶碗」&百面相
~仲入り~
・三語楼「七段目」
・初音 太神楽
・南なん「夢の酒」
 
竹千代さん「豪華な粗品」
やりづらい場所(ジェットコースターの下、お客が1名など)で落語をやった時の話などまくらをたっぷり。
おお、確かに間違いなく竹丸師匠のお弟子さんだ。ところどころ師匠を思い出させるところが…。話し方っていうか溜め方っていうか。
そんなまくらから「豪華な粗品」。初めて聞いた噺だったけど、面白い!
飲み会の席で課長から無礼講と言われて真に受けてしまう新入社員くん。課長が置いて行った「寸志」にも「寸志ありがとうございます!」とお礼を言ってしまう。
そんな後輩に社会人ルールを教える先輩社員。
その先輩社員の誕生日に新入社員くんが…。
どことなく昭和チックだったけどツボだったなぁ。笑った笑った。
 
馬の助師匠「はてなの茶碗」&百面相
馬の助師匠の噺をたっぷり聞いたことはなかったのでとても新鮮だった。
刈り込んでいてすっきりしていてダレない。この師匠の落語、明るくて軽くて好きだな~。
お約束の百面相も楽しかった。
 
三語楼師匠「七段目」
この日のお客さん、落語を楽しんでないってわけじゃないんだけど、演者が出てきた時に拍手をしなくて、座布団に座って頭を下げたら拍手をするんだよね。
でも三語楼師匠はめくりのあたりで立ち止まって頭を下げたのでお客さんもそこで気付いて拍手。その後の初音さん、南なん師匠の時は、出てきたときから拍手が起こった。
いつもそうされているのかもしれないけど、グッジョブだった。
 
お芝居好きなだけあって、芝居のところが様になっててかっこいい。メリハリのある高座で楽しかった~。
汗だくの熱演だった。
 
南なん師匠「夢の酒」
ああっ、トリの南なん師匠を見られてうれしい!有休とった甲斐があったよ!
 
私はおっちょこちょいなのでしょっちゅう師匠をしくじりました。
そのころはよく怒った師匠に追いかけられる夢を見ました。ホンモノの師匠はそんなに足速くないんですよ。運動は苦手でしたから。でも夢の中の師匠はすごく足が速くて…こわかったですねぇ。朝起きると寝汗でびっしょり。蒲団には私の人型ができてました。
師匠が亡くなってからも時々師匠に怒られる夢を見ます。でも今はうれしいですね。師匠が夢に出てくると。あーあたしがまだ未熟だからこうして夢に出て来てくれるんだなぁ、と思って。
続きを見たい夢の筆頭はやっぱりご婦人の夢ですね。
いいところで目が覚めてもう一度続きを!って思って寝なおしても、もう続きは見られないんですね。
 
そんなまくらから「夢の酒」。
いやもう最初から最後まで楽しい楽しい。
最初はうっとりと若旦那の寝顔を見ていたおかみさん。
夢にやきもちなんか焼きませんからと、聞いているうちにどんどん表情が険しくなってくる。
「まぁお家にあがったんですの?!」「お酒をいただいたって…あなた普段はお飲みにならないじゃありませんの!!」
それなのに、そこのご新造さんが色っぽくてきれいだったってことをうっとりと語る若旦那の能天気さ。
おかみさんの剣幕に「…やっぱりこの話はよそう」と言ってももう手遅れなのだ。
 
私が一番好きなのはおかみさんに言われて大旦那が夢に入るところ。
ご新造さんと大旦那のやりとりがとっても「夢」らしくて、ぐっと引き込まれる。
 
そしてサゲの実感のこもりかたがもう…絶妙にタイミングで絶妙のトーンで…ほんとに大笑いして幸せな気持ちになった。
ああ、よかった~。南なん師匠の「夢の酒」。
なんでだか南なん師匠の落語を聞くと、多幸感に包まれるのだよなぁ…。
 

鈴本余一会 さん喬一門 in 鈴本丸

 

3/31(金)、「鈴本余一会 さん喬一門 in 鈴本丸」に行ってきた。

・一門真打口上
・さん喬「時そば
・左龍「長短」
・喬志郎「家庭芸者」
喬太郎「任侠 おせつ徳三郎」
~仲入り~
・小傳次「唖の釣り」
・喬之助「猫と金魚」
・さん助「黄金餅


一門真打口上(さん喬師匠、喬太郎師匠、左龍師匠、喬之助師匠、喬志郎師匠、小傳次師匠、さん助師匠)
口上があるなんて当日プログラムを見るまで知らなかった!
開場17時半を開演時間と間違えて早退して来たんだけど、その甲斐があったなぁ。
こういうサービス精神が旺盛なところがさん喬一門の好きなところ。得した気分。


さん喬師匠「時そば
そして出てくる順番もいつも自由なのがさん喬一門会。それにしてもさん喬師匠が一番手っていうのはさすがにすごすぎませんかと思ったら、なんとこの後に独演会が控えているさん喬師匠。昼間同じ鈴本で独演会やってこれに出てその後また独演会って…気力と体力と精神力がすごすぎる。

さん喬師匠の「時そば」は何回も見たことがあるけれど、いつもとアレンジを変えてゆったり自由な「時そば」。さらくちという出番を楽しんでる感じ。


左龍師匠「長短」
前の日に見たさん喬師匠と同じ形の「長短」だった。得意の顔芸でなんともいえずおかしい。


喬志郎師匠「家庭芸者」
師匠、龍兄さんと続いて私って…私はいったい何をやればいいんでしょう?ちゃんとバトンを繋げるのか不安です。というかそもそもバトンを受け取れたのかっていう不安も。
なんて言いながら、ヘンテコな「味噌豆」のあとにヘンテコな新作。
うーん…。なんか噺の展開が意味不明だしいろんな箇所に必然性が感じられなくて、しかもシュールというんでもなく、なんか見ていていたたまれなくてつらたん…。


喬太郎師匠「任侠 おせつ徳三郎」
最初にあがった師匠が十八番の「時そば」で、その次に左龍兄さんの「長短」でたっぷり、その後の喬志郎でみなさんを一気に不安に陥れるという…この三席だけでもさん喬一門の多様性を楽しんでいただけたかと思います、と喬太郎師匠。
わはははは。何かこうちょっと異様な雰囲気になった客席をぐいっと戻したのはさすが。
噺が始まって、お、「花見小僧」かと思っていると、そこに前に出た「味噌豆」や「家庭芸者」のフレーズを取り入れたりと自由自在。そしてそのまま「おせつ徳三郎」に…と思いきや、途中から、え?なに?という驚きの展開で、「任侠 おせつ徳三郎」。
客席の反応を伺いながらこういう展開に持って行けてしまうのがすごいなぁと思いつつ…最近私はこういうグイグイ系がちょっと苦手。


小傳次師匠「唖の釣り」
面白かった。この噺、すごく面白いよね。放送禁止用語が出てくるからなかなかやりづらいんだろうけど、もっと寄席でかかってもいいのにな。
やたらと陽気で声の大きい与太郎がおかしかった。


喬之助師匠「猫と金魚」
この1カ月ぐらい師匠のお供でアメリカを横断してきました、という喬之助師匠。各地の大学で日本語を勉強している生徒さんに向けて落語やワークショップをやったり、合間には日本人学校や老人ホームの慰問で落語をやったり。
高校、それもビバリーヒルズ青春白書そのまんまみたいな生徒たちの前で落語をやった時、出て行く前に司会をした先生がさん喬師匠のことを「日本で5本の指に入る名人」と紹介。
落語の後に質問コーナーがあったんだけど、一人のハンサムな学生が「さん喬師匠は二本で5本の指に入る名人ということですけど、そんな名人がこんなアメリカの片田舎にいて大丈夫なんですか」と質問。
さん喬師匠はまじめなのでそう言われたら困ってしまってかわせなかった。すかさず喬之助師匠が「大丈夫です。まだ4人が日本に残ってますから!」。

…ぶわはははは。最高!

そんなまくらから「猫と金魚」。
ありえないぐらい粗忽な番頭が喬之助師匠にぴったり。楽しかった~。


さん助師匠「黄金餅
前にあがった喬之助師匠が「トリに上がるさん助はさん喬一門の秘密兵器ですから。できれば最後まで秘密にしておきたかったんですが」と言っていたんだけど、トリは待ってましたのさん助師匠。
だいたい一門会の時のさん助師匠はさらっと軽い噺で終わることが多いので、この順番はファンにしたらとっても嬉しい。

まくらなしで「黄金餅」に。
さん助師匠の「黄金餅」は前に池袋の燕弥師匠との二人会で見てすごく良くてまた見たい!と思っていたので嬉しい。そしてあの時よりたっぷりで、荒れはてた寺の酔っぱらい坊主の怪しげなお経もあって、すごくよかった。

言いたてのところも各地スィーツ巡りなのもとっても楽しくて、そのあとに「言いたてが終わってほっとしてるんじゃないよ」と自分で言ったのもおかしかった~。

金兵衛が西念の死体を樽に入れて運びながら「俺はもう貧乏暮しはいやなんだよ。あんな長屋にもういたくねぇんだ。この金を元手に何か商売をして…それでかかあを持って”あなたや”って言われてぇんだ」と言うのがすごくよくて、金兵衛のとった行動を許せる気持ちになる。
焼いた骨の中から金貨を探すしぐさにも、狂気と必死さの中にもちょっと笑える要素もあってすごくよかった。

明るくて暗くて気持ち悪くてでもなんか身につまされて。さん助師匠の落語の私の好きな要素が全部つまっているこの噺。一門会のトリで見られて満足だった。

仲入りの後「もうここで帰ってもいいぐらい」と言ってるお客さんもいたけど、私は後半の方が断然面白かった。

鈴本演芸場3月中席夜の部 柳家小八・真打昇進襲名披露興行

3/30(木)、鈴本演芸場3月中席夜の部 柳家小八・真打昇進襲名披露興行 に行ってきた。


・にゃん子・金魚 漫才
・さん喬「長短」
・一朝「蛙茶番」
仙三郎社中 太神楽
馬風 漫談
・市馬「長屋の花見
~仲入り~
・真打昇進襲名披露口上(喬太郎、木久扇、小八、小三治馬風、市馬)
・木久扇 漫談
小三治「小言念仏」
・正楽 紙切り
・小八「大工調べ」
 
さん喬師匠「長短」
苦手な方の「長短」だった。同じ噺でもやり方によって好きな時と嫌いな時があって、あと同じ噺家さんでも噺によって好きな時と嫌いな時があるの、面白い。
 
一朝師匠「蛙茶番」
刈り込んで短めなのにたっぷり面白い。一朝師匠の落語はほんとにスカっと楽しい。最近一朝師匠がより弾けている感じがして、楽しくてしょうがない。
 
市馬師匠「長屋の花見
こちらも刈り込んで短め。穏やかであたたかく楽しい。
 
真打昇進襲名披露口上(喬太郎師匠:司会、木久扇師匠、小八師匠、小三治師匠、馬風師匠、市馬師匠)
司会の喬太郎師匠のほどのよさったら。ふざけるのとまじめにやるのとのバランスの妙。
木久扇師匠には物まねを振って、市馬師匠には相撲甚句馬風師匠にはその合いの手。これがおめでたくてすごくよかった。
 
小三治師匠の口上。
こいつはほんとに気の毒なやつで。真打昇進が決まっていたのに、昨年の5月に師匠の喜多八が身罷って引き取り手がないと言うから私が引き取りました。
「小八」という名前は喜多八がニツ目に上がるときに私が考えた名前で、字数もいいし大きく書いても小さく書いても形がよくてすごく思い入れのあるいい名前。喜多八には真打になっても使ってもらいたかったけど、あいつときたら鈴本の先代の支配人に「喜多八」って名前がいいよと言われたらあっさり変えやがった。ほんとに嫌なやつでしょう?とにやり。
ろべえが真打に上がるにあたって名前をどうしたらいいでしょうかと来た時、自分でいくつか候補を挙げた中に「小八」があったので、私は迷うことなく「これがいい」と言った。
喜多八はへんてこな奴で落語もへんてこででもそれがとてもいい味になってお客様も大勢ついてくださって…その弟子でこいつもやっぱり師匠譲りでへんてこで…でもこれからますますよくなっていくでしょう。お客様にはこれからもどうか末長く見守っていただきたい。
 
そう言って深々と頭を下げる小三治師匠の姿にじーん…。
真打昇進を前に喜多八師匠が亡くなってしまってろべえさんがかわいそうでならなかった。
小三治師匠が師匠として口上に並ぶところを見たいという気持ちももちろんあったけれど、それ以上にろべえさんが小八師匠になる晴れの姿を見たい、応援したいという気持ちで今回のお披露目に行ったのだけれど、小三治師匠がろべえさんのことを見守ってくれているというのが伝わってきて、ああ…よかった…と思った。
素晴らしい真打披露口上だった。
 
小八師匠「大工調べ」
こんなに大勢のお客様が来てくださったのは、小三治師匠と喜多八師匠のおかげ。本当にありがとうございます、と頭を下げた小八師匠。
残念なことに喜多八にお披露目に出てもらうことは叶わなかったですけれど、でもきっと今日も来てくれていると思います。
そう言って斜め上の方を見る小八師匠。
今日はそんな師匠の力をお借りして噺をやりたいと思います。
 
そう言ったあとに、「あーなんで自分でハードル上げるようなこと言っちゃったんだろう…。やりづらくなっちゃった。あーやっぱり…自分で思うように…思い切りやります。」と言って、がははっと笑ったのが…ろべえさんらしくてすごくよかった。
そうだよー。おっちょこちょいで明るくて抜け作(失礼!)なのが、ろべえさんなんだから。みんな心配しながらも応援してるんだから。思い切りやったらいいんだよー。
 
そんなまくらから「大工調べ」。
小八師匠が「大工調べ」ってすごい意外。でもすごくいい。
啖呵もすごい早口で若々しくてよかったんだけど、なによりも与太郎さんがバカなだけじゃない、なんとも味があってとてもチャーミング。
一時期落語がとても陰気になって師匠の呪縛から離れられていないのではと心配になったりもしたのだけれど、口上の席で飛び交うブラックなやりとりに首をすくめてびびっていた小八師匠の内面が落語にもにじみ出ていて、無理に背伸びをしていない、なにかこう吹っ切れた感じがあって、とてもよかった。

これからどんな噺家さんになっていくのか、とても楽しみだ。
ってじじいみたいなこと言ってるな、あたし。
 
 

おばちゃんたちのいるところ

 

おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are

おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are

 

 ★★★★

わたしたち、もののけになりましょう!
あるときは訪問販売レディ、あるときはお寺の御朱印書きのアルバイト、そしてあるときは謎の線香工場で働く〝わたし〟たち。
さて、その正体は――?!
八百屋お七や座敷童子、播州皿屋敷お菊たちがパワフルに現代を謳歌する痛快連作短篇集。

嫉妬、憎しみ、孤独に苛まれ、お化けとなった女たちの並々ならぬパワーが昇華され、現代女性の生きにくさをも吹き飛ばす!
ここにしかない松田青子のユニークかつ爽快な17つの物語 

 読んでいて、あれ?牡丹灯籠?野ざらし?…松田さんってもしかして落語好きなの?と嬉しくなっていたら、後ろに各作品のモチーフ一覧が載っていて、これらは落語や歌舞伎をモチーフにした作品と気付いた。

当たり前の日常にひょいっと幽霊や異世界が混じりこんでくるところは確かにとても落語的で、こういう世界とっても好き。

私にとったらこれで3作目(エッセイを含めると4作目)の松田作品なんだけど、どれも同じじゃなくて、「こういう作風」というのを掴みきれなくて、そこに魅力を感じるなぁ。楽しかった。

七月に流れる花

 

七月に流れる花 (ミステリーランド)

七月に流れる花 (ミステリーランド)

 

 ★★★★

坂道と石段と石垣が多い町、夏流に転校してきたミチル。六月という半端な時期の転校生なので、友達もできないまま夏休みを過ごす羽目になりそうだ。終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見つける。思わず逃げ出したミチルだが、手元には、呼ばれた子どもは必ず行かなければならない、夏の城―夏流城での林間学校への招待状が残されていた。ミチルは五人の少女とともに、濃い緑色のツタで覆われた古城で共同生活を開始する。城には三つの不思議なルールがあった。鐘が一度鳴ったら、食堂に集合すること。三度鳴ったら、お地蔵様にお参りすること。水路に花が流れたら色と数を報告すること。少女はなぜ城に招かれたのか。長く奇妙な「夏」が始まる。  

 久し振りに読んだ恩田陸作品は実に恩田陸らしい作品で嬉しくなる。

酒井駒子のイラストも物語にぴったり合っていて、懐かしさとじわじわとした恐ろしさと少女らしさがにじみ出る。

みどりおとこの不気味さと林間学校の静けさが不思議と懐かしく、自分もその屋敷に行ったことがあるような錯覚に。

どういうシリーズなのか知らずに読んだけれど、面白かった。

あひる

 

あひる

あひる

 

 ★★★★

【新たな今村夏子ワールドへ】

読み始めると心がざわつく。
何気ない日常の、ふわりとした安堵感にふとさしこむ影。
淡々と描かれる暮らしのなか、綻びや継ぎ目が露わになる。

あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子供たち。一瞬幸せな日常の危うさが描かれた「あひる」。おばあちゃんと孫たち、近所の兄妹とのふれあいを通して、揺れ動く子供たちの心の在り様を、あたたかくそして鋭く描く「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の3編を収録。  

 あひるを飼うことになった家族。子どもの頃は家族の中で太陽のような存在だった弟が思春期には過程で暴力をふるうようになりしかしそれも落ち着いて巣立っていき、家には両親と自分だけ。なんとなくポカンと穴が開いたような日々を送っていた両親が、あひるを飼うようになって近所の子どもたちがあひる目当てに訪ねてくるようになり、にわかに活気づく。
子どもたちのためにおやつを用意するようになり、生きがいを見つけたかに見えたとき、あひるの元気がなくなってくる。父親があひるを病院に連れていき何日かして「病気が治った」とあひるが帰ってくるのだが…。

あひるを飼うことで近所の子どもが集まってくるようになったとか、おやつを用意し部屋を解放したら子どもがそこで宿題をやるようになったとか、心温まる出来事のはずなのに、なにかざわざわと怖い。
子どもから見た大人も大人から見た子どもも、どこか計り知れなくてぞわぞわと怖い。異質だから怖いのか、大人の寂しさやこころもとなさが怖さを誘うのか。

家族の中心だった弟が妻と生まれたばかりの赤ん坊を連れて家に戻ってくる、というのも、普通に考えたら明るい出来事なのに、この人の文章で読むと何かまた怖いのだ。

「おばあちゃんの家」も、両親とこのおばあちゃんとの関係、多くを語らないけれど何かを胸に秘めていそうなおばあちゃん、そして衰えていっているのにどんどん元気になっていくおばあちゃんがなにか怖い。
心が通じる心地よさと何かわけのわからない怖さ。それがやけにリアルでちょっとぞっとするのだ。

この人の描く物語は独自の世界観があって好き。でもデビュー作と比べるとちょっと小粒かなと感じた。

その姿の消し方

 

その姿の消し方

その姿の消し方

 

 ★★★★★

フランス留学時代、古物市で手に入れた、1938年の消印のある古い絵はがき。廃屋と朽ちた四輪馬車の写真の裏には、謎めいた十行の詩が書かれていた。やがて、この会計検査官にして「詩人」の絵はがきが、一枚、また一枚と、「私」の手元に舞い込んでくる…。戦乱の20世紀前半を生きた「詩人」と現在を生きる「私」。二人を結ぶ遠い町の人々。読むことの創造性を証す待望の長篇。

初めて読んだ堀江作品。
期せずしてtwitter文学賞の国内1位と2位を続けて読んだけど、これらが選ばれるって渋いなぁ。

こってりしたフィクションではなくてゆらゆらと思索を漂うような小説だった。

偶然見つけた絵はがきに書かれた詩の意味を長い年月をかけて読み解いていきながら、その家族や友人との交流を通して作者の内面に思いを馳せ、その時代の空気を感じる。

その詩は主人公の人生にいつも寄り添っていて、ふとしたときに「こういうことだったのかも」と理解できる。
文学ってこういう風にして人生を豊かにしてくれるんだとしみじみ思う。

とてもよかった。

第405回国立名人会

3/25(土)、国立演芸場で行われた「第405回国立名人会」に行ってきた。


・久蔵「壺算」
・南なん「お見立て」
・鯉昇「長屋の花見
~仲入り~
・菊丸「天狗裁き
・正楽 紙切り
・木久扇「鮑のし」

 

久蔵師匠「壺算」
この師匠もあんまりちゃんと落語をやるイメージがないんだけど(失礼!)、ネタ出ししている「名人」の会だからちゃんと落語を。
明るくてにぎやかでハイテンションな「壺算」だった。

 

南なん師匠「お見立て」
わーん、南なん師匠、会いたかったようー。
3月南なん師匠を全然見られなくてもう南なん師匠の落語が見たくて見たくてしょうがなかった。
「不動坊」が4回続いてしまっていじけて浅草に行かなかったことをどれだけ後悔したか。

今は遊びがたくさんあって。みなさんが持ってるスマートフォン、あれも遊びなんでしょう。スマートフォンで何をやってるんだろうとのぞいて見るとゲームをやってたりして。
あたしは「師匠はガラケーですか」って言われたりすることも多いですけど、携帯は持ってないんです。パソコンもないし、ファックスもない。ファックスは古いのがあるからあげるよと言われたり、買ってあげるとまで言われたりもするんですけど、あたしはいらないんです。そのせいで迷惑もかけてるんですけど、でもいらないんです。

…あー、南なん師匠って偏屈だなぁ。だって不便だもん。携帯がなかったら。絶対に。
そしてそんなことは百も承知だけど、でも頑として持たない。
会を主催する人とかからしたら困ることもあるんだろうな。
でもだからこそあの純粋さを保てるのかもしれないと思うし、南なん師匠には頑なさと同時にふわっとした柔らかさもあって、そこがなんともいえない味になってるんだよなぁ、と感じる。


そんなまくらから「お見立て」。
もくべえ大臣の「ほーほーほー」の声が控えめでそれがすごくおかしい。「あれ?鳩が鳴いてる?」「わしが泣いてるだよ」そう言われて笑いを必死にこらえる喜助がおかしい。
いいなぁ。南なん師匠の落語は。なんかほっとする。


鯉昇師匠「長屋の花見
お酒とお弁当の中身に鯉昇師匠のオリジナルの品が入っていて楽しい。
なによりも大家さんの酔狂に付き合わされる長屋の人たちがみなのんきにとほほで楽しい。

菊丸師匠「天狗裁き
テンポが良くて明るいから最初から最後までずっと楽しい。
好きだなぁこの師匠。体の引き方がとってもいいんだよなぁ。だから見ていると引き込まれて笑ってしまう。


木久扇師匠「鮑のし」
ある意味レア。最初にあがった久蔵師匠が「ほんとに久しぶりのはずです。多分すごい稽古してると思います。今」って言ってたけど、新鮮だったなぁ。まじめに落語をやる木久蔵師匠。

林家きく麿独演会第十七夜『花見だ!わっしょい』

3/24(金)、道楽亭で行われた「林家きく麿独演会第十七夜『花見だ!わっしょい』」に行ってきた。

・きく麿「お餅」
・きく麿「殴ったあと」
~仲入り~
・きく麿「幾代餅」

きく麿師匠「お餅」
地方でお店のマスターとかが会をしてくれることがある。ありがたいんだけど、最近自分の故郷でやってもらった会、回数を重ねるごとにマスターの対応が適当になってきてさすがに酷いんじゃないかなぁ、と感じている。
めんどくさいから勝手に人数を少なくしちゃうとか、落語やってる間にテレビで野球見てるとか、さすがに酷いと思って高座から「消してもらえますか」と言ったら「え?でも音消してるよ?」。

…ひぃーーー。あんまりすぎるー。
それもネタにするからいいや…といっても傷つくよなぁ、そういう態度は。っていうかありえないよー。えーん。

で、のんびりした噺も作ってみようと思って作りました、と「お餅」。
私はこれで3回目。「せめ達磨」でネタおろしも見ているんだな。(えへん!)
これねすごい新作だと思うんですよ。すごい間があって最初のうちよくわからないから、噺家さんの勇気が試されるっていうかな。この二人の老人の微妙な距離感がね、見ていてちょっとヒリヒリするんだけど、すごくのんきでばかばかしくもあって。たまらないんだよなぁ。

五郎さんがやってきて「なんか面白い話をしてくれ」と言われて「さっきまで何話してましたっけね」って思い出せなくて、ええとええと、ああ、そういえば「永遠のアイドルの話をしてたっけ」って思い出して話してみると「やめて」と言われてた餅の話だったってていうのも老人あるあるで、面白いなぁ。


きく麿師匠「殴ったあと」
初めて聴く噺。
上司と部下が商談がうまくいって気分よく旅館へ。
仲居さんが挨拶に来て、二人で「こういうところにいる仲居さんってなんかやっぱりわけありなんですかね」なんて話で盛り上がって、料理を運んできてくれた時に「ちょっと一杯つきあってよ」と仲居さんに酒を注ぐと、結構お酒好きらしくくいっと飲んだ仲居さん。自分のわけありな過去を語り始める…。

仲居さんが一声をあげたとき「そっちか!」と大爆笑。こういうのはもうきく麿師匠の得意技っていうかテッパンっていうか、面白いに決まってるワールド。
繰り返される「殴ったあとは…」のフレーズがもうおかしくておかしくて。最高。


きく麿師匠「幾代餅」
ちゃんとした「幾代餅」(笑)。せっかくだから少し改変してもいいのになぁ、なんてことも思ったり。
でも後から考えてみるとこの会、餅で始まって餅で終わっていたのだった。わははは。

忘却の河

 

忘却の河 (新潮文庫)

忘却の河 (新潮文庫)

 

 ★★★★★

「忘却」。それは「死」と「眠り」の姉妹。また、冥府の河の名前で、死者はこの水を飲んで現世の記憶を忘れるという―。過去の事件に深くとらわれる中年男、彼の長女、次女、病床にある妻、若い男、それぞれの独白。愛の挫折とその不在に悩み、孤独な魂を抱えて救いを希求する彼らの葛藤を描いて、『草の花』とともに読み継がれてきた傑作長編。池澤夏樹氏の解説エッセイを収録。  

 初めて読んだ福永作品。
父から始まって、二人の娘、母親、長女が淡い想いを寄せた男の独白が各章で語られる。

皆それぞれに愛されたい満たされたいと思いながらも、自分の胸のうちを明かすこともできず心を通わせることができず、孤独に生きている。

愛の欠損に苦しんだ妻が抱えていた秘密を知った夫が「自分が愛してあげられなかった妻が、誰かを愛し愛されたことがあって良かった」と慰めを感じるところに、読んでいる私も救いを感じた。

最終章が本当に素晴らしくて、宗教的なことは分からないけれど、大罪を犯したものもみな最後は救われるのだと思った。素晴らしかった。

鈴本演芸場3月中席夜の部 三遊亭ときん・真打昇進襲名披露興行

 3/23(木)鈴本演芸場3月中席夜の部「三遊亭ときん・真打昇進襲名披露興行」に行ってきた。
 
・にゃん子・金魚 漫才
・さん喬「替り目」
・一朝「宗論」
・仙三郎社中 太神楽
・金馬「長屋の花見
・市馬「時そば
~仲入り~
・真打昇進襲名披露口上(玉の輔、扇遊、ときん、金時、金馬、市馬)
・玉の輔「マキシムドのん兵衛」
・扇遊「手紙無筆」
・正楽 紙切り
・ときん「試し酒」
 
さん喬師匠「替り目」
酔っ払いがそんなにたちが悪くなくてわりと物静かで、他の噺家さんがやっている「替り目」と印象が違う。
こういうちょっと寒い夜にぴったり。よかった。

 一朝師匠「宗論」
落語のことですのでお怒りになりませぬようにと前置きをして「宗論」。えええー?一朝師匠が「宗論」?!しかも玉の輔師匠がよくやってるような「宗論」で、一朝師匠の口から「いまどき、白百合学園にも…」のクスグリが飛び出そうとは!
すごくばかばかしくて面白かった。


金馬師匠「長屋の花見
どこか他の人と違う長屋の花見
ちょっとでも景気のいいことを言うと喜ぶ大家さんがかわいらしい。

 

市馬師匠「時そば
最初のおそばが本当においしそう~。まだ寒さが残るこんな日に、花見と時そばが両方かかる楽しさ。


真打昇進襲名披露口上(玉の輔師匠:司会、扇遊師匠、ときん師匠、金時師匠、金馬師匠、市馬師匠)
自分の師匠と大師匠がお披露目の口上にあがってくれるってほんとにすごいことだよなぁ。
市馬師匠が「真打に上がる時にこんなにうれしいことはない。これもひとえに金馬師匠が丈夫で長持ちだから」とおっしゃっていたけど、ほんとにそうだよなぁ…。

久しぶりに鈴本のお披露目に来たけれど、緊張感があって温かい雰囲気でとてもよかった。感動。


ときん師匠「試し酒」
出てくる前に楽屋から大きな歓声と拍手。こんなふうに送り出してもらえるっていいなぁ。
登場すると今度は客席から大きな拍手と声援が。
最近恒例の撮影タイムには楽屋にいた人たちがぞろぞろと。こういうときにほんとに嬉しそうに出てくる噺家さんや色物さんっていいなぁと思う。

お酒のまくらから「試し酒」。初トリで「試し酒」ってしびれる~。
お酒が好きなときん師匠らしく、豪快な飲みっぷりが見ていて気持ちいい。
おそらく知り合いとかお友だちとか、普段落語を聞きなれてない方たちは固唾をのんで落語の中の勝敗を見守っていて、サゲには「うおお」と驚きの声があがったのが、とても新鮮でよかったなぁ。

楽しかった~。

さん助ドッポ

3/20(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。
 
・さん助「西海屋騒動」より第六回「義松の悪事」
~仲入り~
・さん助「花見酒」
・さん助「道灌(通し)」
 
さん助師匠「西海屋騒動」より第六回「義松の悪事」
いつものように立ち話から。
先週、仕事で仙台へ行って来たというさん助師匠。
震災で倒壊した酒屋さんを建て直して二階にコミュニティスペースを作り、そこで初めての落語会。
小さな会場だったんだけど高座はわりと高めに作ってあった。
30名ぐらいのお客様に最後「子別れ」をやったらすごくいい反応を見せてくれた。
高座をおりようとしたら、見事に段を踏み外し落下してしまったさん助師匠。
場内は騒然として、噺の余韻も何もあったものじゃない。
 
…ぶわははは。
高座から落下したさん助師匠を想像するとおかしくてしょうがない。
でもほんと怪我がなくてなにより。
私も人のこと言えないけど(しょっちゅう酔っぱらって転んでる)、気をつけてください…。
で、今日の西海屋騒動はほんとに陰惨です、と繰り返すさん助師匠。ほんとに陰惨でグロテスクなので聞いていてもう嫌だなーと思ったら席を外してくださって結構ですので、ってあなた…。
 
そんな立ち話から自ら幕を上げて「義松の悪事」。
お照をだまして惨殺した辰五郎とお山はお照から120両を奪う。
すぐに出立すると怪しまれると思い3年の間はその地にとどまったが、その間も殺しそびれたお照の残した子ども義松の行方が気にかかり調べ、森田屋才兵衛が引き取ったことを知る。
 
3年後に碓氷峠の方(?)まで移るのだが、もう山賊はやめて奪った120両を元手に商売を始めようというお山の言葉に同意した辰五郎。二人で居酒屋を始め、娘のお糸と3人で安定した暮らしができるようになる。
店が繁盛して忙しくなり、誰か小僧を雇いたいと言っていたお山のもとに、熊吉が「それなら小僧にするのにちょうどいい子供がいる」と声をかけてくる。
親が年を取っているのでこれ以上面倒が見られないと預かった子どもだが身体は丈夫だしこの通り器量もいい、と。
それが義松なのだが、お山はすぐに気に入り、小僧としておくことにする。
 
帰ってきた辰五郎が義松に気付くのだが、義松が賽子を振って遊んでいる姿を見て、「あれはほんとに賭場に行ってやったことがある、とんでもない子どもだ」と悪性を見抜く。
あんなやつを置いたら娘のお糸に何か悪さをしかねないという辰五郎に、実はあの子は義松なのだ、とお山が言う。
自分はお照を殺してから毎晩成仏してくれと祈っていたが安眠できた日はない。義松を引き取って自分たちの子として育てればきっとお照も成仏してくれるはず。そして時期を見てお糸と一緒にさせたい。
 最初は「そんな危ないことをしないほうがいい」と言っていた辰五郎だったが、お山がそこまで言うなら、と結局義松を引き取ることにする。
 
お山が猫かわいがりをするものだから増長した義松は早速賭場通いをするようになる。店の金を持ち出したりして店はどんどん荒れていく。
また義松が12歳の時にお糸と同衾するようになる。
とうとう居酒屋をたたむことになり、辰五郎も博打に行っては借金をふくらます日々。
 
ある日辰五郎がお山に「もうどうにも立ちいかないので、お糸を女郎に売ってきた」と言う。
60両で売れて今その半金の30両をもらってきた。
そう言う辰五郎に「そんなことはさせない」と怒るお山。
 
二人の争う声を聞いた義松はお糸に二人で逃げよう、と言う。
どうにかして30両をこっちのものにするから、先に出ていろとお糸に言った義松。
家にあった短刀で辰五郎とお山を殺し金を奪ってお糸とともに江戸へ向かう。
途中、江戸まで駕籠に乗って行かないかと声をかけられた二人。別々の駕籠に乗ったのだが、実はこれが山賊で、お糸はかどわかされ、義松は半殺しの目に合う。
死にかけているところに通りかかったのが、一人の和尚。これが花五郎で、義松を助け自分の寺へ連れていく。
手厚く看病をしてようやく元気を取り戻した義松が、かどわかされた妹を見つけたいというと、花五郎は昔なじみの〇〇(名前忘れた)に相談すると、そういうことであれば自分が昔江戸で奉公していた西海屋という海鮮問屋で若い衆をほしがっていたから口をきいてあげる、という。
 
それならよろしく頼むということで、義松を自分の家に連れて帰った〇〇。
義松が離れで一人寝ていると、夜も更けたころ、扉を叩くものがいる。
義松が何かと思って出てみるとこれが熊吉。
熊吉は義松が辰五郎とお山を殺したことを知っていて脅しに来たのである。
金がほしいのかと思ったらそうではなく、義松の色香にやられて、冥途の土産に一度…と言うのである。
それはいいがここではまずいからと二人で川の方へ向かい、そこでいたして(!)その後、熊吉を殺した義松。
何事もなかったように次の日、〇〇に連れられて江戸の西海屋へ向かうのであった。
 
というところで、「西海屋騒動」のながーーい発端がようやく終わり。
 
…って、おいっ!
もうつっこみどころ満載すぎるわ、この話。
半殺しにあった義松のところを通り過ぎる和尚。…「またお前かっ!」。どこにでも通りかかるな花五郎!イッツアスモールワールドすぎやろ!
そんでもって残虐にお照を殺しておきながら義松を引き取るお山って…。義松の悪性を見抜きながらも受け入れる辰五郎も辰五郎だよ。
そして義松…お前はいくつなんだ!まだ12歳で同衾って。しかも熊吉に誘われて平然といたしてしまうとか、どんだけの経験があるんだ!12歳って嘘やろ!おっさんやろ!
しかもそんなに悪のくせに、山賊の駕籠に乗っちゃうとか。なんやねん!おぼっちゃまか!
そしてあれだけのことをしておきながら(義松がこんなになっちゃったのも花五郎がその周辺の人たちを惨殺したのが原因)、すっかり好々爺になっちゃって、義松のことを見抜けずに江戸に送り込んじゃうって花五郎っていったい!
 
陰惨っていう面でいえば、さん助師匠が心配するほどにはヤラれなかったんだけど(龍玉師匠の殺人モノとかで慣れてるし)、それよりも濡れ場が3回もあったのにはびびったでー。
考えてみたら落語って人殺しの場面は結構芝居がかりでやったりするけど、いたすところに関しては案外ぼかしてあるのよね。
それがこの噺では3回も出てきて、しかもここには書かなかったけど、人を殺してきたあとの辰五郎がお山に「こっちに来いよ」と言うシーンが…な、なまなましい…。なんかやだ…。ばたり。
 
…まあ、いい。許そう。(←何様?!)
さん助師匠直筆の小学生の宿題のような前回のあらすじ、人物相関図といい、お手伝いされている unaさまによるきれいにまとめられた今までのあらすじといい、ものすごく心がこもっていて、他で聞くことのできない(そして今後も二度と聞くことがないかもしれない)噺を聞けるのはうれしい。
 
さん助師匠「花見酒」
前の日に池袋で見た時よりすっきりしていてわかりやすかった。
けど、お互いに釣銭で用意した25銭をあげたりもらったりするシーンが抜けてるところがあって、あれ?って。
きっと前半で燃え尽きたに違いない。ふふふ。
 
でもこういうおバカな小学生男子丸出しな噺、さん助師匠にとっても合ってる。
あんまりかからない噺だから、寄席でもどんどんやってほしいな。
 
さん助師匠「道灌(通し)」
とにかく前半が長かったので残り時間もわずか。「花見酒」で終わってもいいんですけど…悩んでたんですけど…やります!と、「道灌」の通し。
うわーー、うれしいーー。
 
そのかわり久しぶりにやったせいなのか?すでに燃え尽きてしまっていたのか、時々もやもやに(笑)。
くまさんがご隠居から渡された本(なんの本だ?)をぱらぱらめくりながら「この絵はどういう意味ですか」と聞くんだけど、明らかに聞かれたご隠居が「(ええと。次はなんだったっけ?)…」と困ってるようす。
くまさんの言い間違いに、「ここは本来〇〇と言うところだな。やっつけでやるからこういうことになる」とご隠居が言ったのには笑った。
 
あー楽しかった。
また来月が楽しみだ。

次回の「さん助ドッポ」 4/26(水) 両国亭 19時開演
初代談州楼燕枝の述「西海屋騒動」第七回「霊岸島船松町西海屋」、「花見の仇討 」ほか
その後は、5/29、6/28、7/31