りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家はん治独演会 ひとりはん治

2/15(水)、道楽亭で行われた「柳家はん治独演会 ひとりはん治」に行ってきた。

・小はだ「転失気」
・はん治「子ほめ」
・はん治「妻の旅行」
~仲入り~
・はん治「粗忽長屋

道楽亭で行われるはん治師匠の初めての会。大好きなはん治師匠を道楽亭で見られる幸せったら!
せっかくの小さい会だからいつもと違う噺を聞いてみたいと願っていたけれど、お客さんが大勢だったせいか、「子ほめ」以外は結局「いつもの」だった。
はん治師匠の「子ほめ」は小三治師匠の会で一回だけ聞いたことがあるんだけど、実はニツ目の頃はしょっちゅうやっていたらしく「子ほめの小はぜ」と呼ばれていたとご本人がまくらで。
「弟子の小はぜは私と違ってとても勉強熱心でいろんな噺を覚えているようです」とおっしゃっていたけど、ほんと小はぜさん頑張ってますよ~。

あと「妻の旅行」のまくらで話してらしたおかみさんとのエピソードが最高におかしかった。
昨年亡くなったおかみさんはほんとにいいおかみさんでした。すごく尽くしてくれた。でもすごく強かった。
妻はずっと働いていたんですが、ある時「あたしたち、妻と夫をやめて親分と子分にならない?」と言い出した。
何かと思ったらその月の収入が多かった方が「親分」で少ない方が「子分」。
そんな親分子分のエピソードがおかしくておかしくて。
もっとそういうまくらを普段の寄席でもやればいいのになぁー。

打ち上げも25名参加という大人数。
師匠とちょこっとだけど話せて幸せ。
でも寄席でいつもやっている噺を「聞いたことがないから聞きたいんですー」と師匠に向かって言ってる女子がいて思わず握りこぶし。
それはもう寄席でいやというほどやってるんじゃごらぁ。少なくとも寄席ではん治師匠の高座を10回以上見てからリクエストしろや、ごらぁ。(←何様)
悪いけど私は「妻の旅行」14回、「鯛」7回、「粗忽長屋」9回、「唐獅子牡丹」6回聞いてるんだよ!(←数えた)
せっかくの小さい会なんだからめったにやらない古典を聞きたいじゃないか。
そういう気持ちで来たファンがほとんどだったと思うんだけどな。

そういう意味で、池袋演芸場で吉窓師匠、菊丸師匠とやってた三人会は毎回ネタ卸しで貴重だった。
師匠に「もうやらないんですか」と聞いたけど、やらないみたいだった…しくしく。

とぶうぶう言いつつも、帰りに酔っぱらって師匠と写真まで撮ってもらって楽しかった。
きっと次回も行く。
…と思う。
 

赤坂倶楽部 小はぜの一本釣り

2/14(火)、赤坂会館で行われた「赤坂倶楽部 小はぜの一本釣り」に行ってきた。

市若「道灌」
小はぜ「日和違い」
小はぜ「真田小僧
~仲入り~
小はぜ「たらちね」


市若さん「道灌」
ちょっと不思議な「道灌」。
隠居もはっつぁんもにこにこしていてお互いにすごく優しい。
そして時々半テンポぐらい遅れて返事をする。それが妙におかしい。
なんか自分なりの色を出してきたのかな。
それはそれで面白いけど、自分でもその半テンポ遅れて返事をすると明らかにリズムを崩していて、大丈夫か?とちょっと心配に。


小はぜさん「日和違い」
こんなお寒い中わざわざお運びいただいてありがとうございます、と小はぜさん。
今日はバレンタインですけど、みなさんバレンタインはお済でしょうか、僕はまだ終わってません、に大笑い。

昔、楽屋入りするとき、師匠のおかみさんから「お前なんか入ったら大変だよ、バレンタインは。チョコの山で」と言われて、自分でも「そうなのかなー。もらえるのかなー」なんて思っていたけど、前座時代もらったことなんかないです。

…わははは。
確かに楽屋にわざわざチョコを持っていく人というのはそんなにはいないのかも?ましてや前座さんには渡しづらいよなー。
バレンタインの日にあった落語会が小さな会でお見送りしてもらったり打ち上げがあったりしたら用意して行って渡したりすることもあると思うんだけど、寄席や大きなホールの会だと難しいよなぁ。
私も前座時代から小はぜさんのことは大好きだったけど、チョコを渡そうと考えたことはなかったもんな。なんかむしろ迷惑になりそうで。
でもなんかそんなことを言う小はぜさんがかわいい。

今日は雨は降ってないですけど、私は自分でもわかってるんですけどすごい雨男です。
人生の節目とか何か大切な出来事があるときは決まって雨です。小さい頃からそうなんです。
師匠のお宅に親と伺った時も、小三治師匠のところに師匠と一緒に入門をお願いしに行った時も、ニツ目の披露目の初日は全部の寄席で雨でした。
初日は着物やお席亭やスタッフの方に配る菓子折りなど大荷物でそれに傘をさして持っていくのはすごく大変でした。

…ネガティヴなことを言っているのになんか全然嫌な感じがなくて思わず吹き出してしまう。
そう言いながらもなんかふわっと肩の力が抜けてるっていうか恨みがましい感じが一切ないからかな。

それから今度は易者の小噺。聞いたことがない小噺で思わず「なになに?」と引き込まれる。そしてこの小噺からどんな噺にいくのかまるで分らなくてわくわく!
難易度の高い小噺をしたあとに「これは…やらないほうがよかったですね」にも笑った。

そんなまくらからお天気を気にする男が友だちの家に「今日はこれから雨が降るかな」と聞きに行くところから。
あーこれなんだっけ。なんか夢丸師匠で聴いたことがあったような…。おお「日和違い」。小はぜさんたらまた渋い!そして最初の雨男の話も「日和違い」につながっていたんだ!

荷物を持って行かないといけないんだけど怪しい空模様。折り畳み傘を持ってないから降らないなら持っていきたくないけど、どう思う?
聞かれた男がわからないと答えると、だったらどういう人がわかるかな。
漁師なら天気次第で海に出たり出なかったりするから詳しいんじゃないかとか、いろいろ出るんだけど、だったら町内の易者のところで聞いてみれば、と。

易者のところに聞きに行くと「雨は降らない。天気じゃない。」という見立て。
それを信用して傘を持たずに出かけていくと大雨に降られて、米屋の前で雨宿りをしていると米屋の主が出てきて…。

後で小はぜさんが、今ではこれは寄席ではめったにかからない噺で、なんでかっていうと面白くないからだ、と。
でも二ツ目のお披露目の時からやっていて、そうすると師匠方がネタ帳を見て「お!珍しいのやってるね、あんちゃん。」と話しかけてくる。
「昔は寄席でもよくかかってたんだけどね。」とか「俺もニツ目の頃はやってたけどいつの間にかやらなくなっちゃった」とか「なんでこんなつまらない噺やるの?」とか話しかけてもらえて、こういうちょっと変わった噺をやって「ゲテモノ小はぜ」なんて言われるようになったらいいなと思って、と。

…すてき!
小満ん師匠とか蝠丸師匠とか小助六師匠とかさん助師匠とか夢丸師匠とか、人がやらない珍しい噺を持ってる噺家さんが大好き。
やられなくなったのにはやられなくなった理由があるんですって珍品の会の時に蝠丸師匠がおっしゃってたけど、でも楽しいよねぇ。寄席に行ってそういう噺に当たると「今日は来てよかった」って思えるし、しかもそれが珍しいだけじゃなく独自の味わいが出てきたらそれこそほんとに宝物。
ああ、やっぱり小はぜさんってそういう志があるんだなぁ。
前座時代はそんなことはまったく見ていてわからないので、こうして二ツ目になってそういうことが分かってすごく嬉しくなったのだった。


小はぜさん「真田小僧
小児は白き糸のごとしのまくらで始まった「真田小僧」。
おおお、小はぜさんが「真田小僧」ってちょっと意外。
でも一席目とがらりと雰囲気が変わるし、みんなが知ってる噺というのもナイスチョイス。

小はぜさんの金坊は憎らしいことを言うけどなんかけろっとしていてかわいい。いやらしさがなくて、頭がくるくる回転してるって感じ。
うまいこと話をつないでお金をもって逃げちゃっても、憎々しさがない。
「あいつは悪知恵が働くから末はろくなもんにならねぇ」っていう父親と「あの子は頭がいいから将来が楽しみだよ」っていう母親。

きっと小はぜさんは通しでやるんじゃないかなと思っていたらやっぱりそうだった。
もうーそういうところがたまらなくいいわー。やっぱり通しでやるよね「真田小僧」!
と勝手に喜ぶ私であった。


小はぜさん「たらちね」
着物を着換えて登場の小はぜさん。「持ってるぞというところをみていただこうと思って」というのに笑う。
黒門付きなどは仕立てたのだけれど、今着ている着物は古着を買いました。
近所に古道具屋があることがわかって行ってみたんだけど、女性物は需要があるけど男性物は需要がないということで数が少ない。
でもその店には男物が置いてあって着てみるとこれが自分の体型にぴったり。
小はぜさん、細身だけど腕が長くて普段は合う着物がなかなかない。仕立てるときも「こういう体型だと難しい」と言われたほど。
それがぴったりだったので気に入って購入。

その次に行ってみるとまた自分の体型にあった着物が。
そのうち「いいのが入ってますよ」と電話が来るように。
こうなるとどういう人が売ってるんだろう時になって聞いてみるとどうやら着物会社?の人が売ってるらしい。

それを聞いてちょっと黒い考えがむくむくと。
この道具屋を介さずに直接その売ってる人のところに行けばもっと安く手に入ったり?
いやもしかするとただでくれるかも?
あるいはそこに娘がいて縁談になったり?

いろんな妄想を語る小はぜさんがおかしい。
そしてそんなまくらから「たらちね」。

おお、前座時代からやっていた「たらちね」だね!
前半がたっぷりだったから多分時間が厳しくなったね。
なんて思いながら聞いていたんだけど、前座時代の「たらちね」とは違うんだな。前座の時はあえて色はつけずにやっていた感があったけど、なんか色があるっていうかおかしさがじわじわとあって。
そして最近は次の朝おつけの実にネギを買うところまでやる人が多くなってきてるけど、小はぜさんはさらにそのおつけを夫婦で食べるところまで。
「たらちね」の通しだ!

3席たっぷりでまくらも新鮮で楽しかったー。
次回は4/11(火)とのこと。また絶対行こう。

ちとしゃん亭 柳家甚語楼独演会

2/13(月)、高円寺ちんとんしゃんで行われた「ちとしゃん亭 柳家甚語楼独演会」に行ってきた。
寄席で見て、もっと見てみたいなぁと思っていた甚語楼師匠の会にようやく来られた!


・ほたる「鈴が森」
・甚語楼「うどん屋」
~仲入り~
・甚語楼「幾代餅」


甚語楼師匠「うどん屋」
屋形船で落語をやった時の話。
「屋形船でもんじゃを食べながら落語を聞く」という趣向だったんだけど、狭い船内にテーブルと鉄板焼きが並びお客さんも60名ほど入ってぎゅうぎゅう。
どう見ても高座なんか作れそうにない。
どうするのかと思ったらクーラーボックスを高座にするからそこでやれと。
クーラーボックス、幅はまあ足りてるんだけど、奥行きがない。座布団置いたら手をつく場所さえないんだけどそれはそれ。柳家にはそういう場合のやり方というのがある。
でも、マイクを置く場所がない。普段なら60名ぐらいの箱であればマイクなしでいけちゃうんだけど、なにせ鉄板でもんじゃを焼いててうるさいので、マイクなしでは厳しい。
結局世話人の人がマイクを持って差し出す、という形で落語をやった。
あれはほんとに窮屈でしたが、今日も…どっこいどっこいですね。

そんなまくらから「うどん屋」。
酔っ払いがほんとに酔っ払いらしくて笑ってしまう。
なんだかんだと突っかかるくせに、謝られると困惑したり、「謝られると俺が酔って絡んでるみたいじゃない」というのがおかしい。そうだよなぁ、酔っぱらいってそうなんだよなぁ。
またこの酔っ払いが何か言われて「…えっ?!」って驚く間が絶妙ですごく面白い。

寒い中一生懸命商売をしているうどん屋との対比がいいなぁ。
そして風邪をひいてるひとが食べるうどんのおいしそうなこと。
お腹もすいていたので、何度かごくんと唾を飲みこんだ。


甚語楼師匠「幾代餅」
甚語楼師匠の「幾代餅」は鈴本でトリをとられたときに一度見たことがある。
この噺、そんなに好きじゃないんだけど、これを現代っぽくやられるともう鳥肌ぞわぞわ~なんだけど、甚語楼師匠のはどこまでも「落語」なので全然そんなことない。
あの〇〇師匠の「すいません!!嘘つきました!!でも…でも…好きだから…どうしても会いたくて…」とかいうやつはもうほんとに「ぎゃーーーー」と叫んで出ていきたいくらい無理。落語は芝居じゃないんだから、って思う。

この「落語」と「落語じゃない」の違いってどこなんだろうと時々考えていて私はずぶの素人だから全然わからないんだけど、一つはリズムかなと思っている。リズムを無視して「でも…でも…どうしても会いたくて…」とかやられると、なんかもうすごく恥ずかしいものを見ている感じになってしまう。あくまでも私の場合は、なんだけど。
甚語楼師匠の落語ってこのリズムが抜群によくて、それが私にはすごくかっこよく感じられるのかもしれない。

絶対笑わないでと言われてげらげら笑ったおかみさんが、絶対言わないでくださいよと言われたのになんのためらいもなく親方に話して、それを聞いて親方が笑いながら入ってくるところ、好きだなー。

小さい店で憧れの師匠の落語を間近で見られる幸せを堪能。楽しかった!

末廣亭2月中席昼の部~夜の部

2/11(土)、末廣亭2月中席昼の部~夜の部(途中まで)に行ってきた。


昼の部
・桜子「秋色桜」
・鯉八「ぼくの兄さん」
・八重子プラスワン マジック
・小夢「看板の一」
・可龍「桃太郎」
D51 コント
・遊之介「粗忽の釘
・陽子「椿姫」
・章司 江戸売り声
・右左喜「猫と金魚」
・圓丸「悋気の独楽
チャーリーカンパニー コント
・蝠丸「町内の若い衆」
~仲入り~
・小助六「八問答」
・扇鶴 粋曲
・歌春 漫談
助六「相撲場風景」
・今丸 紙切り
・可楽「景清」

夜の部
・こう若「子ほめ」
・伸三「寿限無
・真理 いつもの
・世楽「尿瓶」
・柳太郎 「?」(息子が万引きで捕まる噺)
・京丸・京太 漫才
・夢花「そば清」
・歌助「替り目」
・うめ吉 俗曲
・談幸「茶の湯


鯉八さん「ぼくの兄さん」
わーい、鯉八さん。
「ぼくの兄さん」って古典の「浮世根」みたいな噺で、お客さんに合せていかようにでも変えられるっていうか、新作でこういう世界を繰り広げられる鯉八さんってすごいと思う。
この日のお客さんは初めて寄席に来たという感じの人が多かったんだけど、まくらでざわざわしていた客席がぐっとひきつけられていったのがわかってぞくぞく。
さらに前の方にいた、口を出さずにいられないおじいさんを面白くいじったのにもびっくり。寄席に出てるからこういう力も身に付くんだなぁ。すごい。

可龍師匠「桃太郎」
ちょっと微妙な雰囲気になった客席をぐっと引き寄せてほっとさせたのはさすが。
「桃太郎」がこんなに面白いってすごい。
金坊が「ありえなくねぇ?」とか言うのもこの日の客席にはぴったりはまって、面白かった。


陽子先生「椿姫」
陽子先生は初めてだったんだけど面白かった~。
すごく表情が豊かで生き生きしていて素敵。「椿姫」も講談になるなんてという驚き。楽しかった!

右左喜師匠「猫と金魚」
小噺がくどい。そしてなんでそういう人にかぎって「おわかりでないお客さんがいらっしゃる」を連発するんだろう。

 

蝠丸師匠「町内の若い衆」
この日南なん師匠が出ている池袋ではなく末廣亭に来たのは今年になってまだ見られてない蝠丸師匠がどうしても見たかったから。
ゆったりしたまくらにあざとさがまったくないのにめちゃくちゃ面白い「町内の若い衆」。好きだー。


助六師匠「八問答」
楽しい!寄席で見る小助六師匠ってほんとに余裕で楽しそうでたまらない。
珍しい噺をしてくれるのも素敵。


可楽師匠「景清」
本当に目が見えなくなってしまった可楽師匠が「景清」をやるという凄さ…。可楽師匠の「景清」は何回か見ているけど軽くやっても鬼気迫るものがある。ひねくれ者で口の悪い定次郎と可楽師匠が重なって見えた。

伸三さん「寿限無
わーい、伸三さん。
言い立てだけでほんとに面白い「寿限無」だったんだけど、時間が短いのでは?と思っていたらなんと「寿限無」の続編入り。
寿限無が結婚した相手が外人なんだけどまたすごく名前が複雑で、さらに二人の間に子どもが生まれてお互いに思い入れのある長い名前をつけようとするという…。
見たいと思いながらなかなか見られてない伸三さんを見られて満足。


世楽師匠「尿瓶」
とても面白かった。侍が威厳があって、それだけにだまされて尿瓶を買って帰って悦に入るところのおかしさ。
尿瓶と聞いてわからなくて「尿瓶と申す者の作品か」と言う侍に、道具屋の主人が「あっ」と思って悪だくみをする瞬間の表情が絶妙だった。

柳太郎師匠「?」(息子が万引きで捕まる噺)
面白かった!
息子が万引きしたと聞いて呼び出された母親。
警察だけは呼ばないでくれと頼むのだがすでに呼んでいると店長に言われる。
ところがやってきた警察官が息子の父親
ばかばかしくて楽しい新作だった。


夢花師匠「そば清」
楽しい。最初の仕込みが丁寧だったので、最後のシーンの説得力があってそれもよかったなぁ。


談幸師匠「茶の湯
ご隠居が実に楽しそうにふざけていて見ている方も笑いが止まらない。
ご隠居と定吉が口々に「風流だなぁ」というのがかわいい。
ところで「茶の湯」って私は好きな噺でわかりやすいと思うんだけど、初めて聴く人にはちょっとわかりづらいのかな。

連雀亭 日替わり夜席

2/10(金)、連雀亭 日替わり夜席に行ってきた。
この日行ったのは、twitterで代演に小はぜさんの名前があったから。毎日演者をtweetしてくださってる「たまごの会」こーほー支援ついったーさんには感謝しかないなぁ。


・けい木「天狗裁き
・貞寿「出世の春駒」
・小はぜ「牛ほめ」
・鯉丸「長屋の花見


けい木さん「天狗裁き
おお、けい木さん初めて見たかも。まだ見たことがない噺家さんがいるんだわー。
師匠宅で師匠のVHSの整理をしているというけい木さん。
できるだけ捨てさせたいおかみさんとできるだけ捨てずにとっておきたい師匠の間に入って大変そうだけど、面白いなー。
最近師匠の仕事のおともで地方の会に出ることが多くて、地方の時はテッパンのまくらとテッパンの噺をやるので、こういう会は久しぶりで調子がつかめない、などと言いながら「天狗裁き」。

勢いがあって面白い。「天狗裁き」といえばさん喬師匠のイメージが強いんだけど、けい木さん独自のカラーが出ていてよかった。
途中、お奉行様とかに物まねが入ってたけど誰の真似をしてるのかよくわからなかった(笑)。

貞寿さん「出世の春駒」
前から見てみたいと思っていた貞寿さんを見られてうれしい。
ああやっぱり思っていた通りさばさばっとしたチャーミングな女性。
真打披露目の準備中ということで師匠とあいさつ回りに行ったりチラシを作ったりいろいろ準備が大変そう。
そのお披露目用のチラシが「盛りすぎ」と仲間からは言われてるらしく、そのいきさつなど。
いやでも全然詐欺じゃないよ。変わらないよ実物と全然。

まくらが長くなりすぎて時間がほとんど残ってないと言いながら「出世の春駒」。
普段はかわいらしい声だけど講談に入るとしっかりするんだ。お披露目も行ってみたくなったぞ。


小はぜさん「牛ほめ」
前座時代は毎日寄席に入っていたし、終わりの方はたて前座になって自分である程度は采配もできたからやりたい噺をやったりもできていたけれど、二ツ目になったらそういう場がなくなってしまった。
自分で会をやったりしないといけないけどそうなると日にちを決めないといけなくてそれも結構大変。
そういう点でもこの連雀亭というのはほんとにありがたい。
自分で会をやろうとなると前座さんを頼まなきゃいけないわけでそうなると仲良くしてる人とか頼みやすい人とか自分よりは落語が下手な人とか(笑)そういう人に頼むことが多くなる。
今月連雀亭の代演に何回か入っているんだけど、そんな風に先輩から頼まれると、自分も先輩にそう思われているのかなと思ってうれしい。

そんなまくらから「牛ほめ」。
おお、小はぜさんの「牛ほめ」は初めてだ。「子ほめ」は何回か聴いてるんだな。
よたろうがワンテンポ遅れててそこがなんか独自で面白い。
家に行って「わーー立派な家だなぁ。こんな家に住みてぇなぁ」ってつぶやくのも、よたろうの善意が感じられていいなぁ。

明らかに節穴を探しているんだけど、そらぞらしく「あれ?この節穴はなんだ?」と言うと「おめぇこれを探してただろ」というおじさん。
おねえちゃんと会えると聞いて牛の褒め言葉を言うの、誰のかたちなんだろう。あんまり聞かない形だけど、面白い。

二人のウィリング

 

二人のウィリング (ちくま文庫)

二人のウィリング (ちくま文庫)

 

 ★★★★

ある夜、自宅近くのたばこ屋でウィリングが見かけた男は、「私はベイジル・ウィリング博士だ」と名乗ると、タクシーで走り去った。驚いたウィリングは男の後を追ってパーティー開催中の家に乗り込むが、その目の前で殺人事件が…。被害者は死に際に「鳴く鳥がいなかった」という謎の言葉を残していた。発端の意外性と謎解きの興味、サスペンス横溢の本格ミステリ。  

 古典ミステリー独特のシンプルで静かな雰囲気を堪能。

自分の名前を名乗る男を見かけて気になって追跡したところから事件に巻き込まれるウィリング博士。潜入したパーティーで知人の女性とばったり会ったり、その男に事情を聞こうとしたところで…という導入部分でなんだなんだ?と物語に引き込まれる。

犯人はなんとなく予想がついたが真相には驚いた。1951年に書かれたというのにまったく古びてないというのはすごい。そして陰惨なのにどこか牧歌的なのも魅力。

立川左談次のひとりでやる会vol.12

2/9(木)、日暮里サニーホールで行われた「立川左談次のひとりでやる会vol.12」に行ってきた。
行きたい行きたいと思いながら他の会と重なったりでなかなか行けなかったこの会。
この間浅草演芸ホールの帰りに友だちの行きつけのお店に行った時意気投合した女性がいて、酔った勢いもあって左談次師匠の素敵さを二人で熱く語り「じゃ私も行こうかな」ということになり会場で再会。わーいわーい。
そのせいなのか(んなわけない)、この日は何日か前に売り切れになっていた。


・左談次 御挨拶
・志ら門「子ほめ」
・談吉「天災」
・左談次「ガン病棟の人々」
~仲入り~
・左談次「厩火事

 

左談次師匠 御挨拶普段着姿の左談次師匠が出てきて御挨拶。普段はこういうことはあまりしないんですがと言いながら、弟子の左平次師匠が欠席されることと、今日の会の構成など。

ありのままでかっこつけなくてももう何から何まで素敵なんだ。


志ら門さん「子ほめ」
あらハンサム。
時々落語の中のくまさんの反応がおもしろい。


談吉さん「天災」
この日、兄弟子の左平次師匠が風邪で欠席。「まさかと思いました。だって…師匠は癌で出てるんですよ」には大笑い。

ザ・クロマニヨンズが大好きなんだけど、それは自分の中ではメインサイドではなくダークサイド。
普段の自分からするとライブで前の方に行くっていうのはないんだけど、せっかく好きなんだしまだ若いんだしと思い、この間のライブでは前方へ行ってみた。
そうしたら…みなさんの前ですけどあれですね…。前の方っていうのは違うんですね。もう純粋に音楽を楽しむというんじゃなくて…祭りですかね、祭り。もうぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう押し合って、こう…始まる前にすでにこれはだめだと思いまして後ろへ下がりだしたんですけど下がりきれず…音楽を楽しみたくても腕も挙げられないから胸の前でこう…自分を守るようにして…。
ああ、自分の大好きな人たちがこんなに近くにいるのに、絶対友だちになれない人たちにこんな風に囲まれてって思いまして。
これからはもう後ろの方で見ることにしようと思いました。
そんなまくらから「天災」。

いやもうこれがすごい破壊力。すっごく面白い。
表情も強烈だけど、なんだろろ、時々独自な崩し方をするんだけどそれが結構冷静で、そこが左談次師匠っぽくもあって、とってもチャーミング。
私、この噺大好きなんだけど、若い人でこれをこんな風に面白くできるってすごいんじゃないだろうか。
ああ、今年はもっと談吉さんにも行きたい。

左談次師匠「癌病棟のひとたち」
これで入退院も4回目で、自分でもだいたい予測がつくようになってきた。
抗がん剤治療っていうのは副作用が酷いんだけど、それもだいたいペースがつかめるようになってきたので、退院して何日ぐらいたてばまあまあ元気になってるなっていうのがわかる。それでそのタイミングでこうやって会をしたりしている。

入院していると面白いことがたくさんあって。
噺家が結構お見舞に来てくれるんだけど、やっぱりおかしいね噺家っていうのは。普通じゃないんだよ。どう見ても。別に着物着てくるわけじゃなくて、普通の格好してるんだよ。ずぼんはいて上着着て。なのに普通じゃない。
まず笑いながら入ってくる。こんなふうに。と言って腰を屈めてひょいっとにこにこ顔をのぞかせるのがたまらない。
志の輔が来てくれたんだけどね。やっぱり売れてるやつは違うね。足音をさせずに来るんだよね。気配を消して。
それからキウィが来てくれたけど。俺は食道癌なんだよ。わかりそうなもんじゃない。食べ物はだめなんだな、って。それがよりにもよって固い食べ物を見舞いに持ってきた。
あと談吉ね。弟子だから俺のことわかってくれてるよね。「師匠、なんか本を持って行きましょうか」ときた。わかってるね。「外国のミステリーとかどうですか」って言うから、軽く読めてそれはいいな、と思ってたらね。
ジェフリーアーチャー持ってきた。ジェフリーアーチャーかよ。微妙だなぁ。失敗作もないけどものすごく面白くもないっていう…打率で言ったら2割ちょいのバッター。
しかも持ってきた本が下巻!なんで下巻からなんだよ。俺は上巻から読みたいよ!

それから同室の人たちのことやなんかをつらつらと。
あとこれからみなさんが癌になったひとを見舞いに行くことがあるかもしれないけど、参考になれば…。見舞いに来て言っちゃいけない台詞。「思ったより元気そうじゃない」。これはだめ。元気じゃないから入院してんだよ!

すべてを笑いにしてしまう強さとしなやかさ。なんて言ったら師匠におえーーってかゆいかゆいポーズをされそうだけど、ほんとに面白くってかっこよかった。

左談次師匠「厩火事
40年前に一度やったっきりでその時まったくうけなかったことの傷が癒えなくてやってなかったという左談次師匠。
ほぼネタおろしに近くて体力的にもちょっときつそうで「いい客だったら、もう無理しなくてもいいよと言ってくれる」と愚痴りながら…。

大家さんが「あたしはあいつが嫌いだ」とはっきり言うのも、おさきさんが微妙な女心をのぞかせるのも、そして亭主が遊び人ぽくもあり優しさもありそうなのも、左談次師匠にぴったりでとっても素敵。
「もう一生やらない」とおっしゃってたけど、すごく合ってると思うなぁ。
終わってから「あぶないところが二か所あった」とおっしゃってたけど、そんなこと全然問題にならない、とってもチャーミングな「厩火事」だった。

堆塵館 (アイアマンガー三部作1)

 

堆塵館 (アイアマンガー三部作1) (アイアマンガー三部作 1)

堆塵館 (アイアマンガー三部作1) (アイアマンガー三部作 1)

 

 ★★★★★

19世紀後半、ロンドンの外れの巨大なごみ捨て場。幾重にも重なる屑山の中心に「堆塵館」という巨大な屋敷があり、ごみから財を築いたアイアマンガー一族が住んでいた。一族の者は、生まれると必ず「誕生の品」を与えられ、一生涯肌身離さず持っていなければならない。15歳のクロッドは、聞こえるはずのない物の声を聞くことができる変わった少年だった。ある夜彼は屋敷の外から来た召使いの少女と出会う。それが一族の運命を大きく変えることに…。『望楼館追想』から13年、作者が満を持して贈る超大作。 

ロンドンの外れの巨大なゴミ捨て場の中心にある「堆塵館」という巨大な屋敷。
そこにはアイアマンガー一族が住んでいて巨大な富を築いていた。
アイアマンガー一族は生まれた時に必ず「誕生の品」を与えられ、それを肌身離さず身に着けなければならない。
15歳の少年クロッドは「物」の声が聞こえてしまうという特別な才能があった。そのため叔父が失くした誕生の品を見つけてあげたこともあるのだが、その才能を疑われて一族の者から疎まれ、彼自身もタミスという従弟以外には友だちもなく、いじめっこのモーアカスにひどい目に遭わされることを逃れるだけの日々を送っている。

一方街に暮らす貧しい人々の中で、突然「物」に変わってしまうという病気が流行り、ホテルで働く両親とともに幸せに暮らしていたルーシーも、ある日両親がこの奇病にかかり孤児になってしまう。
孤児たちは一生ゴミの山で暮らさなければならずそこから逃げる術はない。途方に暮れているとある日堆塵館から使いの者がやってきて、ルーシーはアイアマンガーの血が入っているため、召使として堆塵館で働くことができるという。
憧れの堆塵館に入ることができると聞いて喜ぶルーシーだったのだが、足を踏み入れたその屋敷はとても強烈な場所だった。
名前を奪われヘンテコな食べ物で無力化されそうになりながらも、持ち前の好奇心で屋敷をうろうろしていて、彼女が出会ったのがクロッド。
アイアマンガー一族と召使が接触することは許されないのだが二人は仲良くなり、それがこの一族の運命を変えることになる…。


読む前からきっと面白いに違いないと思っていたけれど、読んでみると想像を超える面白さ!
「誕生の品」がないと生命の危機を迎えてしまうアイアマンガー一族と、結集することで彼らに対抗しようとする元人間という図式は、「物」にこだわるケアリーの真骨頂ともいえる。
それよりもなによりも一族の中で特別な才能を持ちながらもとても「人間的」なクロッドと、反骨心に富んだルーシーの魅力的なこと。
読んでいて、このわくわくはなんだろう、何かと雰囲気がにている…と思っていたんだけど、解説を読んで「そうだ!」と思った。ディケンズの物語みたいなんだ!「オリバーツイスト」を初めて読んだ時のわくわく感。

ケアリーの作り出した奇妙な世界に入り込み、そのヘンテコなルールに飲み込まれる幸せ。
あーだから私はフィクションが好きなんだ!だってここには冒険が、ワクワクが、めくるめく世界があるんだもの。

「望楼館追想」も「アルヴァとイルヴァ」も大好きだったけど、この作品は少年少女に向けて書かれていることもあって、内省的ではなくて外に向かって開いている印象。

三部作ってことはまだここが1/3地点!二作目の出版が待ち遠しい。

第428回若手研精会

2/6(月)、第428回若手研精会に行ってきた。
夢吉さんが真打になってからすっかりご無沙汰だった若手研精会。この日は小はぜさんがトリをとるというので張りきって私にしたら早めに行ったのだが、会場はすでにかなり大勢の人が詰めかけていてびっくり。若手研精会ってすごく人気があるんだな。
 
・小多け「たらちね」
・正太郎「雛鍔
・志ん吉「 幇間腹
・わん丈「妾馬」
~仲入り~
・昇々「浮世床(夢)」
・小はぜ「提灯屋」
 
小多けさん「たらちね」
ちょっと陰気だけど素直な落語。すごく大きくていい声なので大きな会場に映える。
よく笑うお客さんでどんどんリズムが良くなっていく感じ。
 
志ん吉さん「幇間腹
一八がなよっとしているのが魅力的なんだけど、若旦那もなよっとしていて一八もなよっとしているから若干単調な感じかなぁ。
でも志ん吉さんの落語、好き。ぱきぱきしてて楽しい。
 
わん丈さん「妾馬」
お殿様は駕籠の中から「予はあの娘を好むぞ」と言っただけであとは家来がどうにかしてくれた。
噺家っていうのも殿さまと似たようなところがありますから。もし私が円丈と車に乗っていて円丈が「予はあの娘を好むぞ」と私に言って来たら弟子としたらあれですね…逆らえませんからね…”何言ってるんっすか、師匠!”って言って終わりですね」には笑った。
 
わん丈さんの「妾馬」は現代版「妾馬」っていう感じで、軽いところはいいんだけど、ちょっと泣かせるところになるとなんか芝居っぽくなっちゃうっていうか…花緑師匠っぽくなっちゃうんだな…。ちょっと私には無理だった。
 
昇々さん「浮世床(夢)」
新作の時は気にならないんだけど、古典だとあのサイボーグっぽい動きとヘンテコな口調が気になってしまう。
結構崩してたけど、むしろ思い切り崩した方がいいような気がする
 
小はぜさん「提灯屋」
初めてのトリをつとめる小はぜさん。見るからに緊張していてドキドキする~。
ニツ目になってこうして羽織を着られるようになりました、と小はぜさん。
何が嬉しいってお正月に紋付羽織を着て師匠のお宅に伺うことができたこと。
この紋というのも…私は小三治の紋を付けているんですが。これは師匠に相談して、師匠の紋になるのかなと思っていたら、小三治門だから小三治のつけてる紋にしなさい、と師匠から言われまして
自分で鏡を見た時にはっとするんですね。小三治と同じ紋だ!って
嬉しいようなプレッシャーなような重い十字架を背負ったような。
 
この紋というのも結構いろいろでして。
先代の小さんのお弟子さんたちはみな小さんの紋じゃなくて自分で変えてます。
師匠に聞いたら二ツ目の時は一門の紋にしたほうがいいけど真打になったら好きな紋にしていいよ、と。
だから紋辞典のようなものを買って「これがいいかな」「こっちもいいな」なんて…まだ付けるわけでもないのに見てるとうきうきします。
 
そんなまくらから「提灯屋」。
おおお、紋のまくらはこの「提灯屋」のためのものだったのか!
寄席でもめったにかからないし、私ももしかすると小三治師匠のCDでしか聴いたことがないかも。
トリで「提灯屋」って…小はぜさん渋いっ!
 
若い衆が集まってちんどん屋からもらったチラシを回し見。
字が読めるものが一人もいないので、これはどういう店ができたのか、うなぎ屋じゃないか蕎麦屋じゃないか洋食屋か。みんな好き勝手言っている。
いかにも読めそうなそぶりを見せながらも読めなかったり、聞かれもしないのに印刷についての蘊蓄を語ったり。
通りがかったご隠居にチラシを見せると、ご隠居も印刷についての蘊蓄を語りだすので「もしや隠居も字が読めないのでは」とざわつく若い衆がかわいい。
 
提灯屋に行って謎かけみたいな紋の説明をしては次々提灯をただでもらってきてしまう若い衆。
すっかり参ってしまった提灯屋が、儲けさせてやろうと行ったご隠居を「元締め」と決めてかかり、普通に注文した紋に悩みまくる様子がおかしい。
 
弾むようなリズムで聞いていて楽しい。あーやっぱり私は小はぜさんの素直な落語が好きだなぁ。
前座時代、一切まくらをふらなかった小はぜさん。落語も基本に忠実な、くすぐりなんかも入れない落語で、だけど全然「足りない」感じがなくて、噺だけで笑えてそこが好きだった。
そして小はぜさんってすごく端正できれいなんだけど素朴なあたたかみがあって、そこがじんわり落語ににじみ出ていて魅力になってる。
 二ツ目になってこれからきっとどんどん噺を増やしていって、また自分のカラーも徐々に出していくんだろうなぁ。
ほんとにこれから先が楽しみだ~。
 
 
 
 
 

第2回桂夏丸独演会「夏丸谷中慕情」

2/4(土)、カフェChi_zu2号店で行われた第2回桂夏丸独演会「夏丸谷中慕情」に行ってきた。

夏丸「質屋庫」
~仲入り~
夏丸「増位山物語」


夏丸さん「質屋庫」
淡々とした語りなのに飛び道具的にぱっと表情が変わったり変なポーズをとるのがもうおかしくておかしくて。
質屋の主人に「お前が蔵に入れ」と言われた番頭が、びっくりしてあらよっというようなポーズを取ったところでもう会場は大爆笑。
くまさんがお店からいろんなものをくすねていることを次々告白してしまったり、彫り物を江戸っ子口調で自慢したり、蔵に入れと言われてとたんにがたがた震えだしたり、ころころ変わる表情がとてもチャーミング。

後半とかちょっと展開が強引だったりして難しい噺だと思うんだけど、それがまったく不自然と感じさせない。
楽しかった。

 

夏丸さん「増位山物語」
真打が射程距離に入ってきた夏丸さん。
真打披露目には何回も行っているけど、パーティとか後ろ幕のプレゼントとかしたことのない私にはなかなか新鮮な話でしたわ…。
私もお金貯めますけどみなさんもこれから1年間こつこつお金貯めておいてね、はリアルな言葉…。

そんなまくらから「増位山物語」。
お相撲のあれやこれやや、途中で歌も入って、夏丸さんの十八番なのかな。
夏丸さんのコアなファンの方は歌のところでうちわ&ペンライトを振っていた(笑)。

落語の後は尻っぱしょりをして四股を踏んで見せるというサービスぶり。すばらしい!

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池袋演芸場2月上席昼の部

2/4(土)、池袋演芸場2月上席昼の部に行ってきた。


・たま平「牛ほめ」
・ひろ木「読書の時間」
・金朝「狸の鯉」
ロケット団 漫才
・小せん「野ざらし」
・百栄 漫談
・ぺー 漫談
・菊春「親子酒」
・金時「宮戸川(上)」
・正楽 紙切り
・志ん輔「紙入れ」
~仲入り~
・金也「普段の袴」
・歌司「長短」
・小円歌 三味線漫談
・金馬「藪入り」 

たま平さん「牛ほめ」
うまいんだけどちょっといろいろやろうとしすぎな気がする。せっかくの噺の面白さが薄れちゃうし、今は前座なんだから素直に落語をやったほうがいいのでは。
ってあたしもうるさいじじいみたいになってきた。

小せん師匠「野ざらし」
小三治師匠の「野ざらし」が好きすぎて、誰のを見ても満足できないんだけど、小せん師匠の「野ざらし」よかった。すごく伸びやかで楽しい。
糸を伸ばしたり竿を放つしぐさがとてもきれいで見てきて気持ちよかった。


百栄師匠 漫談
何度か聞いたことがある「いつもの」漫談なんだけど、楽しいなぁ。
最後におしゃべりな奥さんと寡黙な旦那さんがスピード違反で捕まる小噺をやったんだけど、これも何回か見ているけど、最高に面白い。
漫談家」を名乗る人の漫談は面白かったためしがないのに…。


歌司師匠「長短」
おお、脚が治ったんだ。よかった。
すごく楽しかった!長さんも短さんも全然無理がなくて歌司師匠そのもの、みたいな感じでとっても自然。
長さんがにや~っと笑うのがとてもかわいかった。


小円歌先生 三味線漫談
もうほんとにぱきっときれいで明るくて楽しい。ぱーっと舞台が華やかになって会場全体もあたたまる。最高の膝代わりだよなぁ…。


金馬師匠「藪入り」
私が小さいときは大学に行く人などいなかった。町内で何名か高校まで行く人はいたけれど、大学に行ってる人は一人も知らない。
学校に行かないでどうしたかといったら奉公に行った。
自分も小学校を卒業してすぐ先代のところへ弟子入りした。本当は中学に行きたかったけど中学の方で私をいらないというものだから仕方なかった。
よく、そんなに小さいうちから奉公してかわいそうと言う人がいるけどそんなことはない。
ご飯を食べて「まずい」と言うのは、「うまい」を知っている人。「うまい」を知らなければ「まずい」ということ自体がわからない。
それと同じで、修業がつらかったとしても、子どものうちはそれ以外を知らないから「こういうものだ」と思って受け入れることができる。
だから小さいうちに奉公に行くのがかわいそうということはない。

とはいうものの、やはりまだ子供だから両親と離れなければならないのはつらい。
昔はまったくお休みがもらえなかった。
それも3年ぐらいは「里心がつくから」と言って家に帰らせてもらえなかった。
だから初めての藪入りは親も子もそれはもう楽しみにしていたもので。

そんなまくらからの「藪入り」。
亀が帰ってきたらあれを食わせてやろう、これを食わせてやろう、あそこに連れて行こう、ここに連れて行こう…妄想が止まらないくまさん。何度もおかみさんに「今何時だ?」と聞く。
5時になったと聞いて表に駆け出して行って掃除をしていて近所の人に声をかけられると、喧嘩を売ってるような受け答え。亀ちゃんが帰ってくるのが楽しみすぎてそんなふうになってしまっているのが自然に伝わってくる。

ようやく帰ってきた亀ちゃんが大人びた挨拶をすると顔をあげることもできず顔を見ることもできないくまさん。
具合が悪くなった時に亀ちゃんからの手紙をもらってすっかり具合がよくなったこと。それ以来風邪を引くと薬代わりに手紙を取り出していること。
子どものようなくまさんの親心にじーんときて泣いてしまった。

財布に入っていたお金のことで誤解をして短気を起こして亀ちゃんが泣きながら訴えるところも、すごくさっぱりしていて子どもらしくて…それを聞いてけろっと気持ちがかわるくまさんがまたよくて…。

すごく自然でぽかぽかあたたかい「藪入り」だった。金馬師匠、ほんとに素敵。

末廣亭2月上席夜の部

2/3(金)、末廣亭2月上席夜の部に行ってきた。

この日は節分だったのでお客さんが大勢。特に前方は手拭いを取ってやるぜ!と気合の入った人たちでいっぱいだった。


・一九「厄払い」
・小菊 粋曲
・半蔵「代書屋」
・小里ん「粗忽長屋
・豆まきタイム(手拭いなげ)
~仲入り~
・きく麿「おもち」
・ニックス 漫才
・扇好「真田小僧
・ひな太郎「幇間腹
・ペペ桜井 ギター漫談
・小袁治「笠碁」


一九師匠「厄払い」
おお。節分の噺!うれしい!
通う身からすると、こういう季節の噺を聴けるのってすごい幸せ。


小里ん師匠「粗忽長屋
よどみなく粗忽なのがおかしい。自信満々なんだよな。気の短い方が。


豆まきタイム(手拭いなげ)
仲入り前に手拭い投げがあって場内騒然。
やはり前の方に座っている人たちはそれ目当てだったらしくぐわっと立ち上がり腕を伸ばして取る取る。
すっかり引いてしまい、ひゅるるるる…となってしまったのだが、近くにした女性の方が自分は二本取ったからと一本譲って下さった。しくしく…ありがとうございます…。


きく麿師匠「おもち」
間が命のような噺だから、こういう独特な雰囲気(目当ての豆まきタイムが終わって興奮さめやらないような気が抜けたような…)だとやりづらそう。
こういう噺ってやるのに勇気がいる噺だよね。一瞬しーんとなるから。でも私はこういうじわっとくる笑い、大好き。

この間せめ達磨で聞いた時と違っているところも多々あって、これからきっとまだまだ育っていく噺なんだろうな、と感じる。

小袁治師匠「笠碁」
おじいさん同士の意地の張り合いがかわいらしい。
笠をかぶってちらっちらっと見る練習をするところがとてもチャーミング。
実際に通る時にはそれを中から見ている方の視線で表現していて、そんなところも落語ならではで、好きだ。

末廣亭2月上席夜の部

2/2(木)末廣亭2月上席夜の部に行って来た。
ちょうど入った時、小菊さんがあがっていたんだけど、お客さんが少数精鋭(!)の時は普段やらない曲をどんどんやってくれる小菊さん。丸の内線で一目ぼれする曲とかもう素敵!
後ろに控えていた末廣亭のおねえさんが身を乗り出して聞いているのが印象的だった。
 
・菊丸「ふぐ鍋」
・小里ん「碁泥」
~仲入り~
・きく麿「首領が行く!」
・二楽 紙切り
・扇好「寄合酒」
・ひな太郎「紙入れ」
・翁家社中 太神楽
・小袁治「三年目」
 
菊丸師匠「ふぐ鍋」
楽しい!菊丸師匠の「ふぐ鍋」大好き。
猫にまでお世辞を言っちゃう一八がたまらない。
そして旦那と一八でふぐを嫌がっていたのに一口食べてぱららら~んとなるところ、何回見てもごっくん!ってなる。
途中で「お客さんが静かだからって何もそんなにやけくそになってやるこたぁない」と言ったのがおかしかった~。
 
小里ん師匠「碁泥」
碁将棋に凝ると親の死に目に会えない…と始まったので、「笠碁」かと思ったら違う展開。
うわーー。知らない噺だ。うれしいー。
いつものように旦那同士で碁を始めようとすると「奥さんから碁を禁止されちゃった」。
なんで?おかしいじゃないかともう一人が詰め寄ると、なんでも二人で碁に夢中になるあまり、煙草を畳に落としてしまっているらしく、畳が焼け焦げだらけ。このままじゃ火事になっちゃう、と言われたらしい。
だったら碁を打つ間は煙草はやらず、一番終わったら煙草、としましょう、とお客。
それはいい考えだということで始めるのだけれど、夢中になって打っていると煙草がすいたくなって…。
 
もうこの碁を打つ二人が夢中になっていくさまがおかしくて、すごく楽しい。
泥棒が入って来ても気付かないし、泥棒も荷物を背負っているのに碁をやっているのを見ると口を出さずにいられなくて、「あれ知らない人だ」と気づいても碁をやめられない二人がまたおかしくて。
楽しかったー。
小里ん師匠には謝楽祭の時に冷たくされて(笑)ちょっと嫌いになったけど落語が素晴らしいからやっぱり好き。
 
きく麿師匠「首領が行く!」
わーい、きく麿師匠!
きく麿師匠の出身地北九州ではやくざを多く産出しているというまくらから「首領が行く!」。
先生が生徒たちに映画を見てきましたかーと聞いて、最初の生徒が答える「愛と青春の旅立ち」と「カリブ海のシンフォニー」の感想が大好き。
ぶちゅーとキスするところだけが面白かったって…。神田正輝がって…。ぶわははは!
 
そして激しく任侠化された吉田くんと武井くん。
ものすごくなりきっているのにちょいちょい小学生らしいところがおかしい。
なんか久しぶりに聞いたから思わぬところでぐわはっと笑ってむせてしまった。
おとなしめのお客さんたちからも笑い声が聞こえてきて、なぜか私が「えへん!」と鼻の穴をふくらませちゃった。
 
小袁治師匠「三年目」
昔は頼まれて結婚式の司会をやった、と小袁治師匠。
身内の立場でやるから結構評判がよかった。気に入ってくれて2回目もお願いされたことがある。
その人は外人の奥さんをもらうのが夢で一回目は金髪の女性と結婚したのだが3か月で破局。なんでかと聞いたら、外人は結婚してからも「愛してるか」「私がきれいだと思うか」と聞いてくる。これが一生続くのかと思ったら無理だと思った、と。
 
自分をひいきにしてくれてる旦那がいて、その人はゴルフに誘ってくれたりおいしいものをごちそうしてくれたり。
家に遊びに行くとおかみさんが元気印のかたまりみたいな人。
そのおかみさんが言っていたんだけど、普段は何もしないその旦那が、彼女が風邪で寝込んだ時、峠の釜めしの釜でおいしいおかゆを作ってくれた。
優しい言葉一つかけてくれるわけじゃないけれど、自分が苦しい時にそういうことをしてくれたのは本当にありがたかった、と。
 
そんなまくらから「三年目」。

この噺、そんなによく聞く噺じゃないけど、結構好き。なんかとっても落語的だから。

小袁治師匠の「三年目」は怪談っぽい雰囲気はあまりなくて軽くて楽しい。
まくらもきいていて良かった。

 

 

 

浅草演芸ホール2月上席夜の部

2/1(水)浅草演芸ホール2月上席夜の部に行って来た。
が、この日はぼーっとしていて電車を乗り間違え、南なん師匠にはどうにか間に合ったんだけど4連続「不動坊」でへこみ、その後も出てくるのが苦手な人ばかりだったので、仲入りで出てしまった。なにしに行ったんだー。とほほのほ。
 
・南なん「不動坊」
・うめ吉 粋曲
・桃太郎「春雨宿」

狂気の巡礼

 

狂気の巡礼

狂気の巡礼

 

 ★★★★

日常に侵された脳髄を搔きくすぐる、名状しがたい幻視と惑乱。冥境から降り来たる歪形の奇想。ありふれた想像を凌駕する超越的感覚と神経症的筆致で描く14の短篇。〈ポーランドラヴクラフト〉による類なき怪奇幻想小説、待望の邦訳。

壁が包囲する入口のない庭園。漂う薔薇の芳香には、ある特別な《におい》が混じっていた。「薔薇の丘にて」
神経科医のもとへ診察を受けに訪れた精神病理学者の妻。彼女が打ち明けた夫の驚くべき秘密とは?「チェラヴァの問題」
筆を折り蟄居する作家を見つめる無人の向かい家からの不穏な視線。著者の自画像ともいうべき怪作。「領域」 

読みかけていた「ウインドアイ」が陰惨だったので、ちょっと気分転換にと読み始めたら、こっちがさらに陰惨で「うわーーー」っとなった。

残虐な事件があった場所に人間の残酷さや情念が残り、そこに居合わせたひとを巻き込んでいく。繰り返される絶望のイメージに、もうやめてー!と叫びたくなるほど。

何度となくもう読むのやめようかなと思いながらも、読むことをやめられない。なにか恐ろしいものが潜んでいるかもしれないと怯えながらも立ち止まらずにはいられないように、のぞきこまずにはいられないように、最後まで読んでしまった。

正気と狂気の境目はほんとに薄くて、自分もいつそちら側に引っ張られるか分からない。そんな読後感。